#19 二度とダンジョンから出ていけ
#19 二度とダンジョンから出ていけ
怪しいフードを纏った怪人。
見るに、コイツが外来種を放ち環境を狂わせた野郎のようだ。
「邪神徒か、はたまた狂言者か?」
「……」
仲間も視聴者も緊張を纏っている。
一触即発、その空気を破ったのは不審者だった。
「二度とダンジョンから出ていけ。そう
「お、おう……?」
まあ言わんとすることはわかるが、ネットスラングも混ぜると本格的に何を言っているのかわからなくなってくる。
けど何とか理解できたため、臨戦態勢に入ろうとしている奴に待ったをかけた。
「やり合う気はない、対話しようじゃねえか」
「
「多分お前じゃオレに勝てねえよ。フード越しでもわかる、筋肉量が少ない。それに1メートル763ミリの身長を支える脚も、立ち方や向きが運動に乏しいと見える」
「ッ!」
遠目でも分かるんだよ。
ガキの頃から相手を注視する癖がついているもんでな。
「恐らくタレントスキルに頼ったり、使い魔に任せた戦いをするんだろう?」
「っ、
「声がブレブレだぜ。図星だ」
奴の身体がビクっと跳ねた。
ここまで優位性を示してやれば、流石に戦闘態勢を解いてくれる。
強者が対話で済まそうと譲歩しているのだから、従わざるを得ないというわけだ。
「お前は何者だ。隠しエリアで何をしている」
「……
癪だが従うしかない。ヘソを曲げられても困る。
「
「っ!?」
“黒幕!?”
“いや団体ってことでしょ!”
“拡散して!”
文字通り受け取るなら、コイツがカウサー田園郷を魔改造したってことになる。
しかも、他のダンジョンも作っているってことか?
問いただしたいが、次の質問に答えてもらうまで何も言えない。機嫌を損ねないようにして
「ここを魔改造したのも、他のダンジョンを作ったのも貴様か?」
「おいちょっと待てコラ」
ネフェたんの女郎、本当にオレの考えを読んでんのか?
「アイツ言ってたよな!? 質問は1つずつ、連続してやるなって!」
「しかし貴様も気になっておろう!? ダンジョン製作者とやらは何なのか!」
「だとしても順序があるだろ、オレらは聞く側の立場なんだぞ!?」
「……
「ほれ見ろもぉおお! ヘソ曲げちまったよもう、情報聞き出せなくなったよもう!!」
「モーモー五月蝿いぞ、貴様は牛か!」
「冥府にクーリングオフするぞこのポンコツ独裁者!?」
「何でもいいけどさ。来るよ!」
ミティの叱咤で我に帰り、すぐさまジェイの方へと向き直る。
野郎の周囲には、黒い異空間が。
そしてそこから、次々と海竜種が飛来してきやがった!
「
「こりゃまた、えげつい量だな」
「何でもよいが、蹴散らしてやろうぞ!!」
「当然」
既に想定内だ。1匹偵察に出したのが仇となったな。
「もう、だいたい終わってる」
『ガォ!?』
『グゥ!?』
『ボェ!?』
「なっ、竜共の鱗が剥がれてく!?」
対話中に仕込んでおいた海竜対策が功を奏し、次々と
“ガラス片!?”
“なんか反射してる”
「カメラ越しでは分かるようだな。こんなこともあろうかと、海竜避けで有名な
雪雲石は北方で採れる鉱石で、粉状にしてばら撒くと暫く大気中に留まる性質を持つ。
それが海竜種の多層になっている鱗にくっつき、空気抵抗と合わせてベリベリと剥がしてゆくのだ。
他にも、警察が暴走車両の逃走を防ぐために採用しているのだそうな。
「ミティ。頼んだ」
「〈セット:ロックオンシステム〉。一掃する」
ということで、弱点が丸見えとなった海竜どもは、追尾弾を叩き込まれて次々と墜落していった。
「おぉ、妾の出番がない!」
「……A級やS級の
「北国出身の配信者さんに感謝だな。オレも凄えと思うよ」
「いや貴様が考えた策では無いのか!?」
“マジレスになるけど誰のこと”
“たしかナマコスキーって奴だったかと。5年前に引退してるけど”
“SS級ダンジョンでやられて、犬みたいになったってさ”
“不謹慎だけど草”
奴の手駒は全て下した。
数秒で全滅させられ、狼狽えるかと思ったが。
「その
「勝手にフレンド認定すんな! もう枠いっぱいなんだよ!!」
「ならば
「やめろ! 観光地が壊れたらヒンデガルトも壊れる!!」
しかし狂研究者は聞く耳を持たず、海竜たちの遺体を1つに圧縮し始めた。
中には、生命の灯火が消えていなかった竜も居ただろう。
故に混ぜられ燃料を焚べられたことで、それは業火へと変わってしまった。
「転臨せよ。
異空間のスキルを行使し、狂喜する奴の背後に。
『グァオオオオオオオオンンッッ!!』
最難関レベルのダンジョンを統べる程の悪意が降臨してしまった。
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