#14 はじめてのどくさい ネフェタルさんXXXさい

「アァ……」


「はぁ……」


 初っ端からやりやがったよこのポンコツ独裁者。

 オレは田園の晴れやかな天を仰ぎ、そしてカメラマンのミティは聞こえないようため息をついていた。


“平伏す!”

“下民参上!”

“ネフェたん女王陛下万歳!!”


 そして視聴者リスナーの反応はというと、意外にも好評のようだ。

 いや嘘だろ、だって……下民だぞ?


「妾こそ偉大なるメフィスト王国が女王、ネフェタル・メフィ・アスラー・エヌ・オである! また会ったなアッサラーム、下民ども!」


「しれっとオレの挨拶パクってんじゃないよ」


 というか視聴者リスナーの呼び方は下民で統一する気なの?


“あ、こんちは最強さん”

“保護者枠かな?”

“なんでD級にいるの”

“未登録ダンジョン配信して!”


 そして扱いが酷いなぁ。配信枠はネフェたんのものだから仕方ないけどさ。


「オレはサポート役だから引っ込むけどさ。ちゃんと穏便にやってくれよ?」


「ふっ、任せよ」


 初っ端かました奴が何を言うか。

 そう口を突っ込むのも野暮なため、裏へ引っ込んでみたところ。


「今日は宣言通り、カウサー田園郷へ遠征に参った。初配信はイレギュラーだったが故、今回が正式に初めての遠征と言えるだろうな」


(……あれ?)


「下民ども、しかと妾の武勇を目に焼き付けよ。して、その暁にはチャンネル登録と高評価を押してゆくがよい!!」


“うおおおおお!!”

“ネフェたん女王陛下万歳!!”

“メフィスト王国(ヒンデガルト国ガンガ町)”

“キャラ付けうっま”


 かなりサマになっていた。

 というかガチ王族とはいえ、女王様キャラのロールとしては完璧じゃないか!?


「まあ、ここまでは良いとして。問題は」


 極めて厄介なコメントをしてくる奴を、どう対処するか、だ。


“@カムナ $100.0 アリヴァ様を映せ、メスギツネ”


 例えば、赤スパで常に痕跡を残してくるこの子とか。


「何じゃコイツ!?」


「アリヴァの太客だね。ほら、貴方のリスナーでしょ何とかしなさい」


「カムナちゃん、ここネフェたんの配信だからね。ほかのファンの方に迷惑なるかもだから、今度またオレの配信で会おうね」


“@カムナ $100.0 なら今すぐにでも会いに行きますから”


 ダメだこりゃ……。


“うわでた”

“こいつヤバ、NG入れとけ”

“守銭奴のマネージャーがそこまでやるかなぁ”


「え、私のことも言われてる?」


「有名なオレに加えて、ネフェたんのマネージャーにもなったからなぁ。そりゃ敏腕って名も知れるって」


「何でも良いが、妾の配信であるぞ。奴隷どもは黙って妾の後に着いてくるがよい!」


「へいへい」


「私は奴隷になった覚えないんだけどなぁ」


 正直、ダンジョン攻略のサポート以外でもう口出しすることは無いんじゃないだろうか。

 ほかの客たちで溢れる一本道を往きながら、一歩引いて女王の様子を見守ることにした。


「へぇい、カムナちゃんはこっちね」


“えまってアリヴァさま直接まじで”


 もちろん、厄介な太客をDMダイレクトメッセージで宥めながら。


“このダンジョンのことわかってんのかよ情弱”


「舐めるな。基本は田んぼ道を一直線、ときおり魔物モンスタートラップが出るからそれに注意をすればよいのじゃろう?」


“さすがに分かってたw”

“ぜったいアリヴァの入れ知恵だろ”


「そして宝箱は、魔物モンスターからのドロップか道端のものを拾う。ただ今は他の探索者や観光客がゾロゾロおる故、前者も後者も期待できんな」


「ネフェたんの奴、ちゃんとわかってるしできてんじゃん」


「散々言い聞かせたからね。体験チケットの範囲内は安全第一だし、なにより魔物モンスターも宝箱も取り合いになるから」


「ここだと秘宝出ても持って帰れないのに、トラブルが絶えないからなぁ……」


 道行く観光客を横目に、オレたちは先へ先へと進む。

 時刻は18時を回っているが、天上から太陽が田園を照らしつけていた。


「しっかし、ダンジョンとは不思議なものじゃな。先ほどまで夕日が沈みかけておったのに、いざ入ってみたら真っ昼間ときた」


“こっちは夜だよー”

“たしか距離や場所によって変わるんだっけ?”


「アリヴァ曰く、探索チケットのほうに入ると夕暮となるらしいな。今回の目的は、そこでの秘宝収集。無論、戦利品の開封も配信するが故楽しみにしておくがよい!!」


“はーい!”

“テンション高いね”


 普段が高飛車でポンコツだから心配だったが、トークもしっかりこなせているようで安心だ。


「しっかしこうなると暇だな。探索チケットエリアまで、あと20分はあるぞ」


「それまで罠らしい罠も無いしね。こうも絵面が地味だと……ん?」


 と、ミティがカメラを少し右に逸らす。

 何かと思い左のほうに目をやると。


「おい兄ちゃん、こりゃあワシの宝箱やろが」


「うるせぇ! お前の物は俺の物、俺の物は俺の物だぁ!」


 どうやら宝箱を巡って、ガラの悪そうなグループが小競り合いを起こしているようだった。

 しかも厄介なことに、互いのカメラマンが悪人を晒すようにして顔を映しあっている。


「うわぁ……こんなとこでやるなよなぁ」


「ここでイチャモン付けるってことは、見所欲しさか、それとも迷惑系か……じゃないかな」


 野次馬は多少集まっているものの、ネフェたんはトークに必死なのか気付いていないようだ。


「先行っててくれ、ちょっと収めてくる」


 仕方ない、先輩配信者としてここは穏便に済ませてやるとするか。


〜〜〜〜〜〜


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