#13 Now Loading……

 ここは、カウサー田園郷。

 無限に広がる田畑と虫やカエルの声がが特徴的な集落型ダンジョンだ。


「何故、羽根の靴を使って空を飛ばぬ!」


「法律で決まってんだよ。移動は認可を得た車か公共機関を使わなきゃダメって」


「せっかくファーストクラスで乗れるんだからいいでしょ。アリヴァに感謝しなよ」


「王族が最上のもてなしを受けるのは当然である!」


「コイツ空から放り出していい?」


「やめとけ、それで法に問われるのはオレたちだろ」


 そんなわけで、カウサー空港まで5時間ほど空の旅を楽しんでいた。

 いや、楽しめていたでいいのか?


「ようやく到着じゃな! さぁて、さっそくメフィスト王国の痕跡を探そうでは」


「待て」


「むぎゅう!?」


 すかさずジャージの襟を掴み、指をさす。


「まずは受付からだな」


「アブドゥールのときは無かったじゃろうがそんなの!!」


 しつこいかもしれないが、カウサー田園郷は観光地である。

 世界ダンジョン機構WHOとヒンデガルト政府が安全第一で管理しており、そのぶんのコストを賄うためにも入園料を徴収しているというわけだ。


「ってことで並ぶぞー。着替えや準備は、中入ったあとに更衣室があるからそこでだな」


「むぅ、しまらぬな……ところで」


 ネフェたんが苦虫を噛んだような顔で長蛇の列を指さしている。

 現時刻、16時。入場待ちは30分、これでも当日ネット予約で短縮しているほうだ。


「もうじき夜だというのに何じゃこれは」


「飛行機でも言ったでしょ、いまのうち寝といたほうがいいって。夜配信したほうが同接数伸びるし、ダンジョンは昼夜関係なく明るかったり暗かったりするから」


「よくわからぬ……」


「実際、目にしないとわからない部分あるからな」


 ということで待ち時間は撮影についての最終確認を行なっていた。


「いいか、今日はネフェたんの記念すべき2回目の配信なんだ。しかも今回はちゃんとしたダンジョン攻略、オレ達はあくまでもサポートだからな」


「わかっておる」


「貴女には、抜きん出たパッシブスキルの才能がある。基礎ステータスも高いから、これを活かして進めばいい」


「それと視聴者リスナーとの会話もじゃろう。妾を誰と心得るか」


「元・王様。なら大丈夫だな、あとトラップにも気をつけろよ」


「当然。ディムルのようにはなりとうないからのう」


 あと、入園チケットの買い方についても念押ししとかなきゃな。


「受付では体験エクスペリエンシブチケットじゃなくて、探索アドベンチャーチケットを買うこと」


「む、何故じゃ」


「チケット料は高額になるけど、入れる範囲が広がるし、手に入れた秘宝を持って帰れるから」


「体験チケットは武器や防具を貸してくれるけど、行ける範囲は狭いし儲からない。せいぜい腕に自信のない観光客や、風景や風情を配信する幻想配信者Vtuberくらいだな」


「まあこっちのが断然人気だけどね。1日遊べて50ドルだし」


「間違ってもシニア割とか言うんじゃねえぞ?」


「やかましいわ!」


 ということで、あとは配信の段取りを確認して待ち時間を過ごし。


「1人200ドルになります」


「ツケにせよ」


「クレカで!!」


「あっ、はい」


 見事に受付の方に迷惑をかけてしまいながらも、無事オレたちはダンジョンへと入場することができた。


「むぅ〜」


 のだが、ワガママを言いまくっていた女王様は、探索チケット用のリストバンドと共に装飾ギラギラのコスチュームに着替えた後も不貞腐れている。


「何故妾だけ金をせしめられた。貴様ら入園料はどうした」


「あー、それだけどな?」


「私たちは無料でも良いんだよね」


巫山戯ふざけるな、奴隷のくせに!」


「ふふーん。言ったろ、この施設はWHOと政府が運営してるって」


 そう少し自慢げに、オレはミティと共にWHO発行の探索者ライセンスパスを見せつけてやる。

 ミティはA級ダンジョンまで、そしてオレは世界でも有数の無制限パスってわけだ。


「これ持ってるヒンデガルト国籍の人は、カウサー田園郷に無料で入れるんだよね。しかも探索チケット扱いで」


「んなぁっ……特権階級でもないのにズルいぞ!?」


「へへっ、ズルいだろー」


 まあ調査や環境保全目的ってのが大きいけどな。

 これ持ってる人は、そもそもD級ボーダーフリーダンジョンになんて殆ど行かないし。


「じゃれてないで、はやく配信はじめるよ」


「っと、そうじゃな。妾のスマートフォンを撮影用カメラとやらに連携して、と」


「オレのサブ端末なんだけどね。しかも配信用のカメラフォンじゃなくて色々日常でも使えるやつ」


「細かいことを吐かす男は嫌われるぞ?」


「やかましいわ」


 そんなことよりも、配信の挨拶は大丈夫だろうな。

 入園前にも、なんなら飛行機の中でも確認したが、どうもネフェたんは他人を見下す傾向が強い。

 最初は良いかもしれないが、そのうちマンネリ化するとトラブルの原因にもなってくるだろう。


「女王陛下ー、気さくな挨拶ですよー」


「スマイル、スマイルくださいねー」


 マネージャーと共に小声で念を押し込む。


「なに、問題ないわ。妾を誰と心得る」


 そのドヤ顔が不安なんだけどなぁ。


“1コメ”

“今日も顔がいいね!”

また会ったなアッサラーム!”

“↑それ脇にいる奴の挨拶な”


 そして配信が始まり、コメントが流れてくる。

 17時半ピッタリ。事前に告知してあったからか、同接も1000単位で伸びている。


(やっぱし、すげえな女王サマは)


 超新星の如く現れ、その美貌で前代未聞の大バズりを見せた女王系ダンジョン配信者Dtuber、ネフェタル。

 そんな彼女が太陽のような笑みで発した第一声は。


「――平伏せ、下民ども!」


 予想を裏切らない、もう最悪もいいとこな暴言だった。


〜〜〜〜〜〜


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