第36話 本当の気持ち

 あれから一週間。

 私はあいからず、神山くんから逃げるようにバスに乗る時間を早めたまま。

 凛ちゃんも、あれからずっと学校に来ていない。

 二人に会わないだけで、私の日常はまるで色をなくしたよう。


 バスのなかも、休み時間も、放課後もずっとひとりぼっち。

 どうして、こうなっちゃったんだろう。


 こんなことなら、最初からなにもしないほうがよかった。


 記憶のなかの、神山くんの絵が目に浮かぶ。

 せめて、完成させたかったな。


 × × ×


 また一番乗りだ。

 バスに乗車する時間を早めているせいで、教室に来るのはいつも私が最初。

 誰もいない教室はガランとしていて、さみしげだ。

 自分の席に座って、頬杖をしながら凛ちゃんの机を見つめる。


 凛ちゃん、今日もお休みなのかな?

 いつまで学校に来ないつもりなんだろう?

 このままずっと来ないなんてことは……。

 心配だけど、私は凛ちゃんにすっかりきらわれちゃったし、家に行くのも迷惑だよね。


 何もできない自分がもどかしい。


 そっと机の引き出しに手を入れると、コツッとかたいものにぶつかった。

 引き出してみると、それは神山くんから買ってもらったスケッチブック。

 また絵を描かなくなってから、ずっと教室においてきぼりにしちゃってた。

 ページをめくると、神山くんの絵が飛び込んでくる。

 たった一ヶ月っていう時間がうそみたい。


 神山くんも元気かな。


 いまさら、どんな顔をして会えばいいのか、わからないけど。

 ……オーディション、大丈夫かな?

 会いたいな。


 そのときだった。


 とつぜん、教室の戸がガラッと開いた。

 びっくりして顔をあげると、そこにいたのは……制服を着た、神山くんだった。


「やっぱ、バスに乗る時間を早めてたんだな」


 えっ? どういうこと? これは、夢?

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