第15話 大事なもの
そうだよね、やっぱり絵を描く人にとって、作品っていうのは一番大切なものだもん。
うつむいていると、凛ちゃんが私の肩をそっと叩いてくれた。
「菜月さん、いきなり大きな声出してごめんなさい」
「あっ、ううん!」
って、もう! 凛ちゃんにまで気を使わせちゃうなんてダメじゃん!
せいいっぱいの作り笑いをする。
「そういえば、神山くんには訊けた? 毎朝どこに行ってるのかって」
はっ! そうだった。
「ごめん。詮索するなって怒られちゃった」
「あら、やっぱり。昔から自分のことを話したがらないのよ。そういうところは変わってないのね」
「……凛ちゃんは神山くんのことをよく知ってるんだね」
「まあ、ね」
ふふっと、凛ちゃんがほほえむ。
あ、そうだ!
「ねえ、凛ちゃん。このドラマ見たことある?」
私は神山くんが手のひらに書いてくれたドラマのタイトルを見せた。
すると、凛ちゃんはびっくりしたような顔をする。
「もちろん。DVDだって持ってるわ」
「ええっ!? 今はプレミアがついてるって、神山くんが言ってたよ」
「幼なじみが出演しているドラマなんだから当然よ。でも、神山くんがそのドラマを人に教えるなんて意外だったわ。あんまり、いい思い出がないドラマだと思っていたから」
「そ、そうなの?」
「芸能界を休止する原因になったものだしね」
「ああ……」
やっぱり、そうなんだ。
でも、神山くんは毎朝イヤフォンで主題歌を聴いているぐらい、気に入ってたみたいだよ、と喉まで言葉が出かかった。
「もし気になるなら、あたしが貸してあげましょうか?」
「いいの!?」
「もちろん。明日、学校に持ってくるわ」
「わあっ! ありがとう、凛ちゃん」
まさかこんなに早くDVDが手に入るなんて!
二年前の神山くんは、いったいどんな感じなんだろう。
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