08.n回目のあけましておめでとう

「明けましておめでとう!」


 直樹はコーラが入ったグラスを高々と掲げた。

 だが彼の両親と飼い犬を抱えた妹は我先にとリビングをいや、家を飛び出した。


「何してんだ! 直樹! お前も早く来い!」


 開けっ放しの玄関の向こうで父が叫ぶ。


「なんで? というかみんな飛び出してどうしたのさ」

「地震が来て家が崩れるんだよ!」

「はははっ、そんなわけないだろ。あっ、分かったぞ。みんなして僕をからかってるんだろ? まったく……正月から慌ただしいね、ゆっくりしようよ」

「もういい!」


 両親たちはさらに家から離れた。


「何がしたいんだか」


 肩をすくめ、グラスを傾けたとき地面が激しく揺れ、天井は崩れて直樹は下敷きに――。


× × ×


「明けましておめでとう!」


 直樹はコーラが入ったグラスを高々と掲げた。

 だが彼の両親と飼い犬を抱えた妹は我先にとリビングをいや、家を飛び出した。


「何しているの! 直樹! 早く来なさい!」


 開けっ放しの玄関の向こうで母が叫ぶ。


「なんで? というかみんな飛び出してどうしたのさ」

「地震が来て家が崩れるのよ!」

「はははっ、そんなわけないだろ。あっ、分かったぞ。みんなして僕をからかってるんだろ? まったく……正月から慌ただしいね、ゆっくりしようよ」

「もういい!」


 両親たちはさらに家から離れた。


「何がしたいんだか」


 肩をすくめ、グラスを傾けたとき地面が激しく揺れ、天井は崩れて直樹は下敷きに――。


× × ×


「明けましておめでとう!」


 直樹はコーラが入ったグラスを高々と掲げた。

 だが彼の両親と飼い犬を抱えた妹は我先にとリビングをいや、家を飛び出した。


「何してるの! お兄ちゃん! 早く来て!」


 開けっ放しの玄関の向こうで妹が叫ぶ。


「なんで? というかみんな飛び出してどうしたのさ」

「地震が来て家が崩れるよ!」

「はははっ、そんなわけないだろ。あっ、分かったぞ。みんなして僕をからかってるんだろ? まったく……正月から慌ただしいね、ゆっくりしようよ」

「もういい!」


 両親たちはさらに家から離れた。


「何がしたいんだか」


 肩をすくめ、グラスを傾けたとき地面が激しく揺れ、天井は崩れて直樹は下敷きに――。


 × × ×


「明けましておめでとう!」


 直樹はコーラが入ったグラスを高々と掲げた。

 だが彼の両親と飼い犬を抱えた妹は我先にとリビングをいや、家を飛び出した。


「ワンワンワン! ワン! ワンワン!」


 開けっ放しの玄関の向こうでポチ太郎が叫ぶ。


「ポチ太郎どうしたの? というかみんなも飛び出してどうしたのさ」

「ワンワン!」

「はははっ、何をそんなに吠えているんだか。あっ、分かったぞ。みんなして僕をからかってるんだろ? まったく……正月から慌ただしいね、ゆっくりしようよ」

「ワン!」


 両親たちはさらに家から離れた。


「何がしたいんだか」


 肩をすくめ、グラスを傾けたとき地面が激しく揺れ、天井は崩れ直樹は下敷きに――。


× × ×


「明けましておめでとう!」


 直樹はコーラが入ったグラスを高々と掲げた。

 だが彼の両親と飼い犬を抱えた妹は我先にとリビングをいや、家を飛び出した。


「何してんだ! 直樹! お前も早く来い!」


 開けっ放しの玄関の向こうで父が叫ぶ。


「なんで? というかみんな飛び出してどうしたのさ」

「地震が来て家が崩れるんだよ!」

「はははっ、そんなわけないだろ。あっ、分かったぞ。みんなして僕をからかってるんだろ? まったく……正月から慌ただしいね、ゆっくりしようよ」

「いいから来い! お前が死ぬと何度も何度も今日を繰り返してしまうんだ! 信じられないと思うが今は俺を信じて――」


「知ってるよ」


「……え?」

「知ってるよ。僕の死がループに関係しているって。でも僕は死なせてもらうよ。死ぬ瞬間の快感が忘れられないからね! 感じない!? 死ぬ瞬間に自分が生きているって! それで実際に次の今日では生きているんだよ!? もう、最高じゃない!?」

「お前、知ってて……」

「うん、そうなんだ。だから飽きるまで僕は死に続けるよ」


 そのとき地面が激しく揺れ、崩れた家が直樹に降り注ぐ――。


 × × ×


「明けましておめでとう!」

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