78『鉞担いでないキンタロー』

「お客様、何かお探しでございますか」


 秋水にそう話しかけてきたのは、言い方は悪いが、ひょろりとした男性であった。

 刃物をメインに取り扱っている店だから 『刃物屋』 なんて安直な名前を付けられている店に入り、置かれていた斧やら鉈やらをチェックしていた秋水は、手にしていた斧、らしきソレをそっと下ろし、思わずその男をまじまじと見てしまう。

 見た目があまり世間受けしない、と言うか社会受けしない秋水は、店員自らが声を掛けてくると言うものにあまり慣れていなかった。


「えっと……」


 迷った。

 ウサギを掻っ捌く良い感じの凶器ありませんかね? なんて聞いてみろ。次にこの男性店員が発する台詞は、もしもしポリスメン? になってしまう。

 しまったな、何も言い訳みたいなものを考えてなかった。

 バールは工具だから、DIYで使うんですよ、という理由をでっち上げられるのだが、流石に斧とか鉈となると、それ相応の理由が必要になるのかもしれない。


「ああ、いえ、探していると言う程ではないのですが」


「そうですか。何かお困りのご様子でしたので」


 中途半端に言葉を濁す秋水に、男性店員はにこりと笑って続けてくれた。

 おお、見事な営業スマイルだ。

 若干だが緊張しているのが見て取れるものの、やはり他者から笑顔を向けられるというのは何処か嬉しいものである。そんな場面とは真逆の経験が多い秋水からすれば特に、だ。

 困っている秋水を見て声を掛けてくれたのか、それとも要注意の客としてマークしに来たのかは分からないが、確かに困っていたと言えば困っていたので、ここはストレートに質問してみるか。

 そう思って秋水は下ろしていた斧、らしき商品をすっと持ち上げる。

 ぴくり、と男性店員の左手が跳ねた。


「困ると言いますか、これはなんて読むのだろうなと考えてまして。こちらは斧、ではないのですか?」


「ああ、なるほど」


 やはり警戒されてはいるな、と認識しつつ、秋水は純粋に困っていた内容を口にする。

 単純に、漢字の読み方が分からねぇ、である。

 斧、鉈、と見て、続いてまた斧を手に取ったと思ったのだが、その商品にははっきりと 『鉞』 と書かれていたのだ。

 なんだコレ。見たことない漢字だ。

 外国人観光客向けに書かれている英文をちらりと見たが、Hatchet、となっている。日本語訳すれば片手斧だ。

 Axe、ではないが、要するに斧、で良いんだよな。

 しかし商品は 『鉞』 だ。

 商品名としてそんな名前が付けられているだけの斧なのか、と思って隣を見れば、違う斧が同じく 『鉞』 と書かれて置かれている。

 いや斧だよな。

 どう見ても斧だよな。

 この手の道具に詳しくない秋水からすれば、ぶっちゃけ見分けが全く付かない。

 だって、どう見たって斧である。

 それで困っていただけなのだ。

 そんな無知を曝け出すようなアホみたいな質問に、男性店員は笑うことなく納得したように大きく頷いた。


「そちらは 『まさかり』 という種類の斧でございます」


「まさかり……えっと、斧、なんですね?」


「はい、斧です」


 つまり斧。

 なるほど、良く分からないが、まさかり、と言う名前の斧らしい


「お客様は包丁の中にも種類が色々とあるのをご存じですか?」


「え、ああ、三徳包丁とか中華包丁とか、ですか?」


「はい。包丁と一口に言いましても、三徳、菜切、出刃、柳刃、それにペティナイフなど、色々と種類がございます。それと同じように斧にも幾つか種類がありまして、『鉞』 はその中の1種類となるのです」


「おお、なるほど」


 微妙に理解していなかった秋水を素早く察したのか、男性店員はすぐに説明を続けてくれた。

 なるほど、分かり易い。

 確かに斧と一口で言っても、片手斧の他にも両手で持つ斧や、映画で見るような柄の長いバトルアックスや両方に刃が付けられた物騒なやつも、広い意味では斧である。

 なるほどなるほど、まさかり、は斧というジャンルの中にある1種類と。

 違いが分からんが。


「鉞は刃幅が広い斧を指すと思って頂ければ宜しいかと」


「ああ、そうなのですね。確かに先程の斧より刃渡りが長いですし……ちょっと薄めの作りですね」


「その通りでございます。皆様が斧に対して持つイメージでは薪割りが多いのですが、鉞は細い木の枝を落とす枝打ちをしたり、丸太の表面を削るときに使用されます」


「なるほど。ではこの、まさかり、は薪割り用ではないという感じですか?」


「仰る通りです。薪割りを出来なくはないのですが、刃幅が固定部分の長さよりずっと長いので、下手に薪割りで使用されますとテコの原理で鉞のヘッド部分が抜けて大怪我をしてしまわれる可能性があるので、おすすめはとても出来ません」


 へぇ、である。

 斧なら全部薪が割れると思っていたのは、素人の考え方だったのか。

 しかしこれは興味深い。


 つまり、ダンジョンアタック用の斧だと、まさかり、という種類の斧は不適切ということである。


 テコの原理で何処がどうすっぽ抜けるのかは分からないが、薪割りすら危なっかしいと言われる種類の斧で、角ウサギを叩き切るのはもっと危ないだろう。

 これは良いことを聞けた。

 なんてナイスな店員さんなんだ。

 秋水の中でひょろりとした中年男性への好感度が一気に上昇した。


「なるほど、ありがとうございます。刃渡りだけ見て危うくこちらの斧を買ってしまうところでした」


「それはよろしゅうございました。刃幅が広いので便利そうと、キャンプ用に買われてしまうお客様が意外と多いのです」


「私もその1人になるところでした。それでは、薪を割るとするなら、こちらのまさ、まさか、り……は買わない方が良いですね」


 まさかり。

 なんか微妙に言い辛い。

 そして、鉞、という漢字と微妙に結びつかない。

 明日になったら読み方忘れている自信があるな、と思わず秋水は苦笑してしまう。


「……お客様は金太郎をご存じでいらっしゃいますか?」


「金太郎ですか? あの童話の金太郎、でしたら」


「はい。まさかり担いで金太郎、の、鉞でございます」


 微妙に覚えきれていない秋水をフォローするように、男性店員がそっと豆知識を教えてくれた。

 なんだこの人、わずか1分程で秋水からの好感度が更に上がってしまった。

 ああ、そうか、金太郎の歌で出てくるじゃないか、鉞。

 よくよく考えてみたら、鉞って何だよ、という感じであるが、なるほど、金太郎の担いでいた斧がイコールで鉞、と。

 分かり易い。

 思わず感心してしまった秋水は大きく頷く。


「もっとも、絵本で書かれる金太郎は、何故か鉞ではないタイプの斧を担いでいるのが一般的でございますね」


 ……うん、確かに。

 続けて男性店員から披露された豆知識に、うすらぼんやりとしたイメージの金太郎を思い出し、秋水は再び納得してしまう。

 確かに、絵本で見る金太郎は、全体的には大きいが、もっと刃渡りは短いタイプの斧を担いでいるイメージがある。

 そう言われてみればそうだ。

 金太郎、お前、鉞担いでないじゃないか。


「鉞はどちらかと言いますと、ザ○が持っているヒートホー○の形状でございます。金太郎が鉞を持たず、戦争で戦うためのロボットが持っている斧の方が、硬いものを叩き切るには不適切な鉞に近い斧を持っている、とは皮肉なものでございます」


「○クのヒート○ーク……」


 いや、ロボットアニメのそれは知らないが。

 しかし、今この男性店員、硬いものを叩き切るには不適切な鉞、とはっきり言った。

 やはり鉞は不適切。

 あぶない、本当に刃渡りだけ見て、攻撃範囲が広い方が良いだろう、とか思って買ってしまうところであった。

 重ね重ねナイス店員である。


「ああ、重ね重ねで申し訳ありません、もう一つ質問をよろしいですか?」


「はい、承ります」


「あちらに斧が3種類あるのですが、一番頑丈な斧はどちらでしょうか」


「こちらでございます。素材や厚さもさることながら、ヘッドとシャフトががっちりと一体化されております。代わりにヘッドの交換が出来ないという欠点がございます」


「なるほど。あと、斧と鉈なら、どちらが薪割りに適していますか」


「薪割りだけでしたら斧の方が適しております。鉈では割れない太い広葉樹も、斧でしたら割ることが可能でございます。それに鉈よりも刃が太いので、刃が欠けにくいというメリットもございます」


「でしたら、斧を選ぶことによるデメリットはありますか?」


「そうでございますね。斧は重くパワーがある反面、細やかな作業には向いておりません。キャンプで言えば焚き付けを削ることもそうでございますし、それこそ鉞が細かな枝を払う枝打ちに適しているとは申し上げましたが、そもそも枝打ちをするのであれば鉈を使った方が適切にございます」


「では、鉈を選ぶメリットはありますか?」


「薪割りに使用するのでしたらパワーでは確かに斧に一歩劣りますが、それ以外の汎用性という点では鉈を選ぶメリットは大きいかと。先程の枝打ちや削り作業もそうでございますが、魚や肉を捌く包丁代わりにもなりますれば、ナイフや彫刻刀の代わりとして使うことも可能でございます」


 すらすらと説明が出てくる出てくる。この店員さん、プロだ。

 そうなのかー、と秋水は何度か頷いてから、店員が最初に勧めた斧を手に取ってみる。

 ヘッドとシャフトが一体化している、だったか。

 確かに、他2種類が刃のある金属のヘッドに木の棒を差し込んだ形だが、こちらは持ち手であるシャフトの部分も金属製だ。ふぁいばーぐらす、とか言うものらしい。良く分からないが頑丈そうだ。

 とりあえずは、斧はこれをチョイスしよう。

 そして鉈であるが、どうしようか迷う感じだ。

 斧より細かな作業に向いているのが鉈、という説明だが、ダンジョンアタックではあまり必要のなさそうな部分である。


「ちなみにですが、鉈でしたらどれが一番頑丈でしょうか」


「この中ではこちらでございます」


 一応ということで聞いてみれば、店員は迷うこよなく鉈もチョイスしてくれた。

 刃渡りは15㎝。

 3種類ある鉈の中では最も小ぶりな一振りだ。

 まあ、それもそうか。長ければ長いだけ折れやすくなるのは当然だ。頑丈であると言う注文ならば、分厚くて短い方が壊れにくいのだから、それを選ぶのは自然なことである。

 そう考えれば、この男性店員のチョイスは正解だ。信用出来る。


「なるほど。でしたらこちらも頂きましょう」


「おや?」


 鉈もこの際だから買ってしまおうと、男性店員からその鉈を受け取ろうとしたら、何故か男性店員は小首を傾げてしまった。

 どうした。


「……いえ、申し訳ございません。斧と鉈を1点ずつでございますね。他に何かご入り用はございますか?」


 しかし男性店員はすぐに営業スマイルを浮かべて話を戻す。

 まあ、いいか。

 少しだけ気になったものの、秋水は鉈を受け取り、すぐに違う品のことを考える。


「そうですね、それでしたらナイフも見たいのですが、猟などで使えるナイフでおすすめはありますか?」












「お買い上げ、ありがとうございました。またのご来店を」


 店から出て行くヤクザをお辞儀で見送り、1秒、2秒、自動ドアが閉まったのを確認してから、1秒、2秒。

 もう良いかな、と刃物屋のベテラン店員、奈加護 目貫(なかご めぬき)はそろりと下げていた頭を上げてみる。

 ガラス張りの向こうでは、今し方見送ったばかりのヤクザがお買い上げの商品をリュックサックへ詰め直し、自転車置き場へと向かうところであった。

 自転車。

 自転車かよ。

 車じゃないんだ。

 バイクは置いてないし、やっぱり自転車だ。

 へへ、と目貫は力なく笑いを零し、気が抜けたとばかりにどかりとレジカウンターの椅子に座り込んだ。


「な、なな、奈加護さーん……?」


「はいゴメンなさいミサちゃん! おじさん働くよー!」


 即座に目貫は立ち上がる。

 アルバイトの女子大生、ミサから仕事でケツを叩かれているのがすっかり身に染みているので、つい反射的な反応である。


「そ、そうじゃなくて、今のお客、帰った……?」


 振り返ってみれば、まだ顔を蒼くしていたミサが、工房の方から顔を覗かせていた。その後ろには同じく、工房の方で研ぎ作業をしていた子達も心配そうに店を覗いている。

 すわヤクザの殴り込みが来た、と工房へと避難したので、状況が分からず心配だったのだろう。

 でも、とりあえずマグロ包丁を構えるのは止めなさい。物騒だから。洒落にならないから。そしてそれ、研ぎの依頼で受け取った預かり物だから。

 そして後ろの子達も各々に包丁構えるの止めなさい。店の商品の関係上仕方が無いかもしれないが、傍から見たら殺意高過ぎの光景で笑えない。


「意外と普通のお客さんだったよ-。ま、おじさんの貴重な寿命が縮んじゃいそうだったけどね」


 自転車に乗って颯爽とこぎ始めたヤクザをガラス越しに見送りながら、目貫はみんなを安心させるように気の抜けた表情でへらへら笑って答えておいた。

 いや久々に緊張した。

 本当に寿命が縮んだような気がする。

 出来るなら盛大な溜息とともに座り込んでしまいたいところではあるが、男かつ年上である自分がそんな姿を見せては若い子に心配させてしまう。おじさんは辛い。


「うおー、でも迫力あったっすね今の客」


「あの身体見たかい西野くん、おじさんにもあの筋肉分けて欲しいくらいだわ、いや切実に」


 工房から出てきたのは若い子の1人。

 手にはすらりとした柳刃包丁。怖い怖い。誰を刺身にする気だ。おじさんちびっちゃう。


「あ、ありがとうございました奈加護さん……」


「いいってことよミサちゃん。でもとりあえずキミら、その長物しまってくんない?」


 お礼を言いながら工房から出てくるのは、マグロ包丁を握ったままのミサ。

 その刃が自分に向かっているんじゃないかと目貫の背中に冷や汗が滲んでしまう。身に覚えはないんだけどなぁ。

 目貫の指摘に、そうだった、と気がついた面々が慌てて工房の中に戻っていく。前門からはヤクザで後門からは刃物。今日一日で自分の寿命はどれくらい縮んでしまったのだろうか。

 やっと落ち着けるとばかりに、目貫は再びレジカウンターの椅子へと座り込み、細く長い溜息をゆっくりと吐き出した。

 気分はタバコの煙で曇らせる感じだ。生まれてこの方タバコなど吸ったことはないのだが、渋い映画の印象で憧れだけはあるのだ。悲しいことに渋さも威厳もないおじさんなので、絶望的に似合わないから格好つけでも吸う気が起きない

 やれやれと目貫は頭をバリバリと掻き毟り、ヤベぇ、親父禿げてる、と思い出して再び溜息を漏らしながらカウンターへと肘を突く。




「あのお客さん、祭りのときに来てたなぁ、確か」




 苦笑と共に目貫がぽつりと独り言ちる。

 あのヤクザ、一見さんじゃないことは分かっていたものの、いつの客だったか微妙に思い当たらずにいた。あれだけインパクトのある見た目をしているのだから、一度見たら早々忘れなさそうであったのにだ。

 しかし喋ってみて、唐突に思い出してしまった。

 年に1回、2日間かけて行われる、この街のお祭り。

 あのヤクザ、そのときにこの刃物屋に来店していた。

 盛大な祭りなので、祭り期間中はとにかく観光客が多く、刃物屋も有名な店であるために来店客が大量に押し寄せてくるのだ。刃物屋からしたら年に2日の書き入れ時である。

 そんなクソ忙しい中で、あのヤクザを見た。

 なるほど。確かにあれだけのインパクトのある見た目をしていただけあって、あんな大量の客に紛れていたにも関わらず、記憶にしっかり焼き付いていたわけだ。


 しかし何だろう、違和感はまだ目貫の中に残っていた。


 あのヤクザの見た目は、相当にヤバい。

 明らかに人殺してそうな人相だ。

 それにあの体格、重量級の格闘家みたいである。

 そんな奴、普通なら祭りの人混みの中にいたって、相当に目立つはずだ。


 しかし、3ヶ月程前の祭りの日、入店してきたあのヤクザには、誰も怯えたり悲鳴をあげる様子は特になかったはずだ。


 そりゃ、内心では近くに居た誰かが、怖ぇ、とか思っていたかもしれないし、そもそも目当てとしている包丁やらハサミやらの特売品に夢中で周りの人間を誰も気にしていなかった可能性もある。

 あるのだが、それは遠目にちら見してあのヤクザを確認していた目貫自身だってそうである。

 あのときは、今日みたいに、ヤベぇのが来ちゃった、とは強く思わなかった。むしろ、すげぇガタイの良い人いるなぁ、程度の印象だ。

 だからこそ最初に思い出せなかったのだ。

 なんと言うか、雰囲気が全然違った。




 祭りのときは、とてもとても、穏やかな表情をしていたのだ。




 一緒に誰か来ていたのだろう。

 それが恋人なのか、友達なのか、家族なのか、それは目貫には分からない。

 しかし、祭りのときのヤクザは、その誰かと一緒に居て、とても優しそうな雰囲気であったのは、記憶の片隅に残っている。

 それが今日は雰囲気がモロヤバ案件でびっくりした。

 喋ってみれば確かに、口調は丁寧で物腰は柔らかく、見た目を盛大に裏切っているものの、雰囲気は祭りのときのそれに近いと感じたものの、喋る前などマジもののヤクザにしか見えなかった。


「独りのときはピリついちゃう感じの人なんかなぁ……もったいね」


「奈加護さん」


「おっとミサちゃん、おかえりおかえり。今日のは良い経験になったねぇ」


 ついぞ3ヶ月程前と印象がガラリと変わってしまったヤクザのことをぼんやり思い出していると、工房の方からミサが戻ってきた。

 数分前とは打って変わってけろりとした表情だ。女の子は図太いな、なんて口にした日には袋叩きに遭った挙げ句にセクハラで訴えられるのは目に見えているので口が裂けても言えやしない。

 まあ、見たところ業務に支障はなさそうである。

 またあんなのが来たら怖い、なんてトラウマになってしまうよりは、神経図太くタフな感受性の方が接客業として100倍マシである。

 そんなことを頭の片隅で考えながら、目貫はいつも通りにへらへら笑う。


「はい」


 と、そんな目貫の目の前に、ミサがなにかを差し出してきた。

 おっと、なんだろう。

 差し出されてきた右手に、殴られる、と反射的に身構えてしまった自分を若干悲しく思いつつ、目貫は差し出されたそれを確認することなく受け取った。

 感謝の品かな。おじさん照れるなぁ。

 なんて受け取った物を見てみれば。


「ショーケース拭くの、途中でしたよね?」


 ガラス拭きのクロスだ。

 なるほど。

 掃除の途中だったね。そうだったね。

 目貫はふっと笑う。


「今日はおじさん、1日分の仕事したと思うなぁっ!」


「定時までが仕事です」


「ミサちゃんもう大学辞めて社員になろうよっ! 絶対向いてるって働くのっ!」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 他のヒロイン候補を押し退けて、ぽっと出のおじさんが秋水くんの中で一番好感度を荒稼ぎしている。


 秋水くんは基本的に、家族と接しているときは年相応に少年らしい表情をしている子でした。

 まあ、この作中、二度とそんな雰囲気にはならないと思いますが。

 もう相手がいないので。

 (´Д⊂

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