最終話 風の強い、ある春の日

 フェルミは闇の中にいた。

 体は動かず、目は開かず、叫び声を上げることすら叶わなかった。

 その闇の中で、上下も関係なしに体が回っているように感じたが、どこかに寝かされているようでもあった。


 肉が焼けたような鉄の臭いがして、それなのに、お日様の優しい匂いがする。もしかしたら、フェルミは既に死んでいて、町の外に捨てられたか、それとも既に天国とやらにいるのだろうか。さもなくば、フェルミの魂は地獄へ落ちたのだろうか。


 聖職者たちはルティネスをフェルミたちの工房に送り付け、一緒に過ごさせることで、異端と見なそうとしていた。白い獣の耳が付いている娘を誑かし、その忌み嫌われた血筋の者と供にいたフェルミも異端としようとしたのだ。そして、あわよくば、フェルミと供にルティネスさえ闇に葬るつもりだったか。


 これは、まるで異端審問官の手口だった。

 他の者を異端として検挙する異端審問官に最も向いているのは、元異端者。それはなぜか。

 元異端者は、異端者の手口を知っているということもある。だが、その最大の利点は、元異端者は自分がもう異端ではないことを示すために、誰よりもがむしゃらに働く点にある。


 相手に情けを見せれば仲間ではないかと疑われるから苛烈になる。相手を取り逃がせばわざと逃がしたのではないかと思われるから地の果てまでも追いかける。命令を拒めば裏切っていると思われるから、異端のふりをして異端の組織に潜り込むことだって厭わない。

 そして、ついに異端の巣に猟犬を誘い込み、一網打尽の先陣を切る。これでやっと元異端者は仲間と認められる。

 だが、この世界はそんなに生温くない。

 元異端者の背中に襲い掛かるのは仲間だと思っていた猟犬の牙。


「なぜ? どうして?」


 そう元異端者が問いかける。その死にゆく元異端者に、猟犬の一人が言う。


「さあ、これで全ての異端が片付いた」


 全ての異端が。

 一度でも黒く染められた布は、どれだけ洗っても純白には戻らない。

 本当によくある話だった。

 ルティネスを例に挙げてもそうだ。教会の連中と仲間になりたいがために、ルティネスは狂ってる薬種商二人の工房に突撃し、寝泊まりするような狂気の行動に買って出た。


 だが、それもこれも、錬金術師で言う所の、マグダラの地へ向かうためのものだった。だからルティネスがフェルミに毒を盛ろうが、不思議と腹は立たなかった。

 ルティネスは、遠い遠い場所に行こうとしていた。ただ単にフェルミの目の届かない場所なのか、それともフェルミもろとも串刺しにされ天国に行ってしまうのか。


 しかし、幸運なのは、フェルミが伸ばした手がルティネスの袖に届いたことだった。幸運の女神は後ろ髪を持たない。だから、気付いた時には遅かったなんて話は、ざらにある。

 だけれど、フェルミの手は届いたのだ。引き留める事ができた。最後にその肩を抱き締める事ができた。熊の毒で皮膚が焼け、内臓が瞑れようとも、フェルミはルティネスに追いついたのだ。


 だから、その光の前から崩れ落ち、闇の中で微睡んでいるフェルミはもう、駄目だった。

 ひたすらに寂しく、寒かった。

 あの柔らかくて甘い匂いがする、よく日向でうとうとしだす白い小娘は、永遠に手の届かない所に行ってしまった。ルティネスが離れたのではない、フェルミが地獄に落ちている最中なのだ。


 死なない薬種商『判決フェルミ』は、あと一歩の所で死んでしまった。他人の命を勝手に判決し、天国へも地獄へもいざなった『フェルミ判決』は、ついに地獄へ落ちたのだった。こうなるなら、最後にフェルミも白き小娘に、礼の一つぐらいは言うべきだったと思う。

 ルティネス。

 フェルミが、闇の中で呟いた時だった。


「本当にいいのかい?」


 酷くくぐもり、聞き取りにくかったが、聞き覚えのある声がした。

 記憶の中で光が明滅し、こちらに向けられる、にまにまとした笑みが浮かび上がった。

 ハルエッドだ。


「はい、感謝はたくさんしました。感動もたくさんしました。私はこの工房が大好きです。だから」

「だから、フェルミの前から消えるのかい」


 これが自分の見ている夢か、現実のことなのかわからなかった。

 なんにせよ、最後にルティネスの声を聴かせてくれるなんて、神様も意外に粋な計らいをするではないかと思った。


「でも、世界を知らない姫君が城壁の外で、生きられるとでも思っているのかい?」


 扉を開ける音がする。風が吹き抜け、多くの薬品の匂いがした。ここは工房なんだろうか。


「いえ、私はきっと、誰かに拾われて奴隷とでも弄ばれる運命でしょう」

「それでも、フェルミを助けたいと」


 そして、扉の閉められる音がする。あの甘い匂いはもうしなかった。


「さあ、フェルミ。お昼寝の時間は終わりですよ~」


 次の瞬間、フェルミは沈んでいた水の底から浮き上がるような感覚と共に、意識を取り戻していた。

 二人の会話は夢だったのか? ここはどこだ? まさか、まだ生きているのか? それとも、地獄に落とされたのか?


 そんな疑問の数々は、ぼやけていた視界の焦点が定まるとともに、少しずつ輪郭を伴ってきた。目の前には、見慣れた寝室の天井がある。

 驚き、自分の状況を捉えるために起き上がろうとした瞬間だ。


「……う……ぐっ……⁉」


 フェルミは猛烈な頭痛と、激しい吐き気を催した。

 なんとか、頭だけをベッドから出す。直後、フェルミはなにも考えず、胃の中身をすべて吐き出した。あるいはすでに何度か吐いていたのか、胃液とわずかな水分しか出てこなかった。それでも、体はわずかでも毒物を吐き出せたことに満足したのか、吐き気は急速に引いていく。そのすべてが、生を実感させた。


 フェルミは力なくも、自分が確実に息をしていることに、戸惑いを隠せない。

 未だにぐらぐらと揺れる視界の手綱をなんとか握ろうとしていると、地べたで薬を練り合わせているハルエッドの姿が見えた。

 ここがどこであれ、ほっとした、なんて言おうものなら、悪魔でさえ笑うだろう。

 だが、たとえここが地獄でも、ハルエッドがいれば退屈はしないと思えたのだ。


「ようやくお目覚めかな」


 フェルミはベッドの傍に備え置かれていた水差しに直接口を付けて、中身を無理やり喉に通していく。まさしくそれは聖水のように、たったそれだけで文字通り生き返った。


「どれ……くらい、寝ていた?」

「フェルミが聖職者を追い払ってから、三日だよお」


 三日。

 それは日々知識の世界が書き換わっていく薬種商の世界では、千秋に値する時間だった。

 しかし、三日間も寝れる余裕があったということは、計画通りに物事が進んだということだった。

 つまり、フェルミの手は本当にルティネスへ届いていたのだ。それならば、ルティネスはこれまでのように、フェルミたちと同じ工房で過ごせる。


 しかし、直後、フェルミは心が引き裂かれるような感覚に陥った。

 なぜなら、大切なものがこの工房に欠けていたから。絶対にいなくてはならない人物がひとり、この工房にいない。ルティネスだけが工房の中にいない。

 堪えるように、フェルミはハルエッドに尋ねていた。


「……どうなった」

「ん? ああ、ほとんどフェルミの予想通りだよ。カザンの改宗を受けて、騎士団は教会の庇護下にある町を占領する反逆者になった。つまり、騎士団は全世界の敵になったわけだね」

「……違う、そうじゃない」

「違うって、何が?」

「……ルティネスだよ、ルティネス」

「ん?」

「わかってんだろ! ルティネスはどこだって聞いてんだよ!」


 衝動を抑えきれずに、ハルエッドの胸倉を掴みに行っていた。どこかで理性が落ち着けと言ってくるが、それ以上に感情が荒れ狂っている。


「ルティネスはどこだ。どこにいる」

「あと少し早く起きれば、見送りぐらいはできたのにね」

「ふざけんなよ! 答えろよ!」


 そうフェルミが声を荒げた直後、ハルエッドの手が動いたように見えた。

 そして一瞬の間、なにが起こったかわからず、自分が殴られたのだと気が付いた時には形勢が一気に逆転していた。


「ふざけてるのは、フェルミの方だよ」


 フェルミの首に突きつけられているのは、ただのナイフではない。

 ルティネスが見よう見まねで覚えた鍛錬を、フェルミが見よう見まねで鍛錬したナイフ。形は不格好だが、フェルミの命に彩を与えてくれた一振りのナイフ。


「わかっていないのは、フェルミの方だよ」


 ハルエッドが言った直後、再度左拳で顔を思い切り殴られ、視界一杯の赤い光と、顔半分を覆う灼熱の衝撃が爆発した。

 体が軽くなったことには気がついたが、とても体を起こすことなどできない。

 だが、その痛みが、フェルミに理性を取り戻させた。フェルミは四つん這いの態勢で、自分の鼻からぼたぼたと落ちる赤い血を眺めていた。


「フェルミだけが、ルティネスちゃんの気持ちをわかっていない」


ハルエッドは咳き込み、深呼吸してから、続けた。


「こんな状況になって、まだフェルミはわからないのかい? ルティネスちゃんがどんな気持ちで、この工房から出て行くことを選んだのかも」

「なに…………を……」

「なにを、なにをと?」


 ハルエッドは床に這いつくばるフェルミの顔を覗き込んだ。向けられたのは、いつものニヤニヤとした笑みじゃない、哀れんだ顔。


「フェルミのおかげで聖職者の連中はヤーゾンから出て行って、ルティネスちゃんは自由を手に入れた。じゃあ、その次は何が待ってるのかな?」


 自由を手に入れた。次は自由に生きるのが当たり前じゃないか。なぜこの工房から出て行く。なぜフェルミの前から居なくなろうとする。やっと教会の呪縛から解き放たれたというのに。


「違うよ。呪縛から解き放たれてなんかないよ。呪縛を掛けられたんだよ」

「…………」

「それまでは道具のように扱われつつも、ルティネスちゃんは教会に保護されていた。けれど、教会の保護が急になくなったんだよ」

「……自由になるじゃないか」

「普通の小娘ならね。でも、ルティネスちゃんは、何もしなくても忌み嫌われた血族だと言われてるんだよ。そんな小娘がこの工房にいると民衆に気が付かれたら、どうなると思う?」

「っ⁉」

「間違いなく俺たちは処刑されるね。しかも、俺たちには騎士団の後ろ盾がない。つまり、ルティネスちゃんは自分が工房から出て行くことで、俺たち二人を守るつもりなんだね」


 その意味がわかる、とでも聞きそうな顔をしていた。


「…………」


 嫌ほどにわかる。わかってしまった。大切な場所だから。大切な人がいる場所だから。だからこそ、出て行くことを決めた。自分がいると、フェルミとハルエッドを危険に晒してしまうから。

 どれだけの覚悟と決意を持っていたのか、想像もできない。逆に、もしもルティネスが城壁を超えてしまえば、どうなるか想像に難くない。売り飛ばされるか、奴隷になるか。

 でも、最後は、そうまでして守りたかったのだ。


「その意味がわかってまで、まだルティネスちゃんを追いかけるなら、俺は止めないよ」

「俺は、……俺は」


 体は毒にやられて、ぼろぼろになっている。まだ完全に熊の毒が抜けていないらしく、頭は痛むし、意識を保つだけでも覚束ない。


「……それでも、俺は」


 それでも、フェルミは立ち上がる。まだルティネスに伝えていないことが、たくさんある。まだ話したいことがある。もう一度でも、その姿を見たい。

 だから、立ち上がる。


「わかったよ、俺の負けだよ。ルティネスちゃんは西門に向かったよ。運が良ければ、間に合うかもね」


 ハルエッドが言い終わる前に、フェルミは鉛のように重い体を引き摺って工房から飛び出していた。

 小川にそって、坂を駆け下りる。心臓も肺も痛み、足ですら絡まりそうになる。日は昇りあがる前だが、簡単に体を巡る血は沸騰した。

 目の前を横切っていた犬を蹴り飛ばす。ぎょっとして飛びのいた道行く人たちの間を、縫うように走る。


 黒い風のように、呼吸すら忘れて、前へ前へと進んだ。

 町はまだ日中なので、ごった返している。そんな中を、町の治安維持を担う市兵が槍を持って練り回っているせいで、押し合いへし合いの状態だ。なのに人々は互いにうまく間を縫って、なにか粘性の高い液体のように人の流れができていた。

 そんな中に飛び込んで、弾き飛ばすが如く駆け抜ける。


 そして、工房から走り続けて一回鐘が鳴る頃。

 フェルミは西門に到着した。

 だが、門の前には、城門を超えようとする人々の長蛇の列ができていた。カザンの改宗により、騎士団は教会の敵となった。それで、騎士団に関りのある人々は、教会の権力から逃げなければならなくなったのだ。

 それを教会が止めようとしないのは、もし騎士団が力を取り戻した時、自分の町が最初の標的になるのを恐れているため。しかし、それが騎士団が力を取り戻すのに助力しているなど、露ほども思っていないだろう。


 その長蛇の列には、ルティネスは見つからなかった。

 西門にいるかはわからない。ハルエッドが嘘を付いた可能性もあるが、そんなことは考えなかった。ただ単に、もうルティネスが城壁を越えた後かもしれないからだ。

 いや、今は考えても仕方がない。

 遠くから民衆の列を眺める。ルティネスの姿はない。職人らしき連中と、商人の姿しかなかった。それでも、真っ白な髪を持つルティネスがいれば、きっとすぐにわかる。


 逸る気持ちを抑えて、長蛇の列を掻き分けながら進む。順番を抜かしたフェルミを叱責しようとした民衆は、フェルミが騎士団に所属する薬種商だとわかると、面白いぐらいに関わらないようにしていた。

 そんな中、ずんずんと進む。そして、見つけた。列の先頭付近に真っ白な肌と髪を持つ少女が、背中に革の袋を下げていた。

 もしもルティネスが城壁を越えてしまうと、城壁を越える権限がないフェルミはたどり着けなくなる。その理由は簡単だ。薬種商や錬金術師などの連中は新技術を開発することで、その頭の中はさながら小宇宙のようになっている。だから、城壁を越えて敵国に捕まったりして、その情報を使われると厄介だと考えられているからだ。


 逸る気持ちに足をもつれさせながら、フェルミはルティネスの元へ急ぐ。息はすでに上がっている。だが、弱音を吐いている暇はない。城壁を越える前に、ルティネスを止めなければならない。今を逃せば、一生の別れになるかもしれない。いつだって、幸運の女神は後ろ髪を持たないのだ。

 人混みの中をぶつかるように走り抜ける。間に合え、間に合えと祈りながら。神を信じないフェルミでさえ、そう祈りながら。


 そして、間に合った。

 絵本の中から出てきたような、妖精みたいに美しい少女。彼女との距離は五メルもない。

 ルティネスは城門の通行を許可する衛兵と話していた。後少しで、城壁を越える所だった。

 フェルミは駆け寄る前に、一度立ち止まって、息を整える。ずっと呼吸をしていなかったようで、心臓の鼓動は不規則に荒ぶったままだ。頭がはち切れそうなほど、体が引き裂かれそうなほど疲れている。それでも、フェルミは無理やり押さえ付けて、ルティネスの後ろへ立った。


「嬢ちゃんはどこへ行くのかい?」


 衛兵がルティネスへ問うた。どうやら、白き妖精は乱入者の存在に気付いていなかった。

 だから、フェルミは何も答えようとしないルティネスの代わりに答えた。


「俺たちの、工房だろ」

「っ⁉」


 ルティネスの息を飲む音が聞こえた。


「お前の居場所は、俺たちの工房だろ?」


 恐る恐る、ルティネスが振り向く。その宝石のような瞳からは、ぼろぼろと大粒の涙が落ちていた。ありえないものを見ているような表情だった。まるで、鉛が金に生まれ変わったのを見たような。


「行くなよ」


 自分でも吐き気がするほど、殊更優しい甘い声で言う。しかし、ルティネスは首を縦に振ろうとしなかった。


「……私は、役目を果たさなければなりません」


 悲しそうな目。保護欲を掻き立てるような声。


「私は恩を徒で返したくありません」

「だから、工房から出て行くってか?」

「……ええ、そうです。私がいれば、優しくしてくれた貴方たちに烈火が襲うことになります。貴方たちの工房には、私が存在してはいけないのです」

「いいんだよ、お前は」

「私のせいなんです。私のせいで……二人は危険な目に遭って。……この罪を償わなければなりません」

「行かなくていい、お前は工房にいていいんだ」

「……私は非力です。多くの仲間を失い、仲間にしてくれた教会にも邪険に扱われ、幸せな空間で過ごすことも叶わない」


 涙を流しながら、割れて掠れて痛々しい声で続ける。


「でも、私にもできることはあります。……私が出て行けば、二人は助かります。最後にそれぐらいは、誰かの役に立ちたいのです」

「行かなくてもいいんだ」

「私の責任なのに?」


 涙で濡れた瞳でフェルミを見上げてくる。すぐにでも抱き締めて、安心させてあげたかった。しかし、それはできない。感情で訴えかけても、折れそうにない強固な決意をその濡れた瞳に宿していた。


「……聖書にはこう書かれています。神は私たちに自由をお与えになった。我々は少しの幸せを得る為に、日々精進する自由を得た。しかし、同時に犯した罪を償う義務も得た、と」

「……お前に罪なんてない」


 もっと別の言葉を掛けれたらいいと思う。死者を復活させるのが薬種商なのに、涙を流す少女一人ですら、元気にできない。しかし、その言葉が届くと信じて。


「私のせいで工房が危険に晒されました」

「ああ、そうだな」

「っ‼」


 はっきりとフェルミに言われたルティネスは、息を飲んだ。


「お前のせいで俺の体はぼろぼろになったし、お前のせいで教会と敵対する羽目になった。そして、お前のせいで、工房を失うかもしれなくなった」

「それなら‼」

「だがな、俺の言う工房ってのは、あのごちゃごちゃした場所のことじゃねえよ」

「……」

「そこに、俺やあのにやにや笑みの腹立つ野郎、そしてお前、ルティネスがいるからこそ、俺たちの工房なんだ」

「っ⁉ 貴方はまたそうやって、煙に巻こうと」

「いや、本当だ。お前がいたからこそ、今の工房がある」


 一度黒く染められた布は、どれだけ洗っても純白には戻らない。それと同じく、一度ルティネスと関わったフェルミは、もう以前のフェルミではないのだ。

 フェルミは、手を指し伸ばして、言った。


「だから戻ろう、俺たちの工房へ」


 陽光のなかですら真っ白なルティネスは、涙を袖で拭うと、その手を取った。

 自分の居場所はそこだと言わんばかりに。

 呪われた娘と、忌み嫌われた薬種商。

 よく晴れた、しかし少しだけ風の強い、春のある日のことだった。

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