5-3 デート

 ゲートに連なる長い行列は、そのほとんどが若いカップルで構成されている。知らず、陽輝の方へ体を寄せた。手のひらをぎゅっと握りしめられる。遅れて、わたしも広がる光景の一部になったのだという実感が訪れた。


 園内が見えてくると、どこからともなく感嘆の声が上がる。広大な庭園は見渡す限り無数の電球に彩られている。スマホを構える人々の隙間をすり抜けて、わたしたちも園内へと進んだ。


「きれい」


 枯れ枝に電飾を絡ませた植木は、その色のせいか季節外れの桜が咲いたようにも見えて、神々しくすらある。無数の青白い光が空へ向かってまっすぐに伸びているディスプレイは、星が降ってきているようだ。


「わたし、初めて来た」

「地元なのに?」

「一緒に来るような相手もいなかったし。陽輝は」

「俺は中学のときに、男だけでふざけて来たよ。次来るときは絶対それぞれ彼女連れて来ようなとか言って。でも結局、彼女とは来なかったな」


 陽輝の口から出た、彼女、という言葉に反応して顔を上げる。


「地元すぎて、わざわざ来ようと思わないんだよな。あのときはよみうりランドに行ったんだよ」


 遠くを眺めたまま、あそこも綺麗だった、と陽輝が言う。


「……なら、どうして今日は」


 うん? と陽輝が首を傾げる。


「そうだなー……今のうちに来ておこうと思って」


 わたしは瞬時に、わたしが見ていない間の彼の恋愛模様へ思いを巡らせた。


 きっと陽輝はこれまでにも、もっとたくさんの美しいものや楽しいことを、わたしの知らないひとと分け合ってきた。


 わたしがようやく掬い上げたひと匙の輝きも、陽輝にとってはカップに沈んだ中のひとかけらでしかない。当たり前のことに、今更傷ついている。





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