第6話 3エリアを1日で

広島での滞在が、期待していた以上に楽しかった私は、もう少しだけ広島の名所を見てみたいと思った。

そう考えた時に、平和記念公園は外しちゃいけないな、って強く感じた。

楽しいばかりじゃない、この場所で起きた悲しい現実を知るべきだ、と。



午前9時に宿を出発。

路面電車に揺られ、広島の町並みを見る事十数分、原爆ドーム前駅に到着した。


噂には聞いていた...現実にそれを目の前にした私は...



「戦争って恐ろしいな」



と思った。


...小学生並みの感想で申し訳ない...。


でもさあ、それ以上に的確な言葉が浮かばないんだよ。



そこから平和記念公園を通り、資料館に向かう。

この平和記念公園は、TVとかで何度か見た事があった。

そのイメージとほぼ同じだな、と思いながら、かつて悲劇があったとされる場所を歩いた。


入館料無料。


まずは常設展示を見る。



「戦争は無い方が絶対いい」



そういう思いが込み上がって来た。


と、同時に、「戦争が起きたら、一般人が被害者になる。」という点を強く認識した。

この原爆の被害に遭ったのは、「日本人」だけでなく、「在日韓国人(朝鮮人)」も居た。

「日本人」「韓国人」と、国籍で色分けされる事は多いけれども、この原爆は、そういったものに関係無く、「人の命」を奪った。



しんみりした気持ちで路面電車に乗る。

今日はこの後、JRで岡山市に移動する予定だ。

ここまで移動に関しては全て思い通りで、順調だった。


ところが。


広島駅で、岡山方面に向かう列車に乗ろうとした際、目の前で発車されてしまった。



ムキーーーー!!



仕方ない...なんか食べよう。

1回駅の中に入ってしまったから、改札を出るの面倒。

あ、でも、青春18きっぷだし、まあ、うん。


などなど考えた結果、立ち食い蕎麦を食べ、時間を潰した。



岡山駅に到着したのが、午後4時51分。

真っ直ぐ、後楽園に向かう。

岡山にも路面電車はあって、意外と快適だった。


午後6時の閉門に間に合い、中に入る事ができた。

親切なおっちゃんが、綺麗に写真が撮れる場所を教えてくれた。

さらに、その景色と一緒に、私の写真も撮ってくれた。


この旅、親切な人との出会いが多い。

人の心の温かさを感じる。



後楽園を出て岡山駅に戻り、マリンライナーに乗って香川に向かう。

今日は高松市で、ビジネスホテルに泊まる。


チェックイン後、荷物を預けて外に出る。

午後8時を過ぎていて、観光するには遅い時間だった。

食事をしに出かける。


目的はもちろん、うどん。


この時に入った店で、何を選ぶべきか迷ったので、お店の人に...



「どれがおすすめですか?」



と思い切って質問した。

人見知りの私にしては珍しい、勇気を振り絞った行動だ。

すると...



「全部おすすめ。好きなもん喰えばいい。」



と、目も合わせず、下を向きながら、ボソボソと吐き捨てるように答えられてしまった。

相手も人見知りなんだろうか...それにしても...。


なんかしょんぼりして、メニューを見た時に目に入った「おろしぶっかけ」を注文した。

おろしとすだちを乗せた小皿と、うどん麺と、つゆが別の容器に入って出て来た。

私はおろしとすだちを麺に乗せ、つゆを空いた小皿にちょっと入れ、それに麺をちびちび浸して食べていた。

すると、後ろから...



「つゆは麺にかけて食べるんよ」



と、誰かに声を掛けられた。


その人は、それだけ言って去って行ったけれど、なんだか恥ずかしく感じて、またしょんぼりした。

そういう食べ方をしてはいけないという、ルールがこの地域にはあるんだろう。

よそ者の私にはわからなかった。


なんだか、申し訳ない気持ちになった。









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