104 刀と帰省

待ちかねたようにジャオカは言った。


「だいぶ忙しかったようじゃのう」


俺、  「すみません、ダンジョンに潜っていたもので。」


ジャオカ: 「良い良い、冒険者はダンジョンに潜るものじゃ。


     また来てくれて何よりじゃ!」


俺: 「今日は何を教えてもらえますか?」


ジャオカ: 「今日は、刀という物を作って見せてやるわい。


      刀という奴は片刃の剣でな、


      反りがあることによって切れ味を高めたものなんじゃ。


      では作ってみせるぞい。」


ジャオカは鉄剣を作る要領で刀を鍛え出した。


初めは同じ。形を作るときに片刃の形に成形する。


この時点では反りはない真っ直ぐな片刃の剣でしかない。


反りはいつつけるのか?と思っていると、


ジャオカ: 「ここまでは同じじゃが、ここで反りをつけるからよく見てるんじゃぞ」


ジャオカは刀にドロドロの粘土を塗り出す。


何やら模様のように厚く粘土を塗るところと


薄く粘土を塗るところとに分けて塗っている。


そしてそれを火の中に入れ、真っ赤になるまで加熱した。


全体が赤く色づいたところでいっきに水の中に刀身を漬ける。


水蒸気が全体を覆う。


水から取り出した刀には見事な反りができていた。


ジャオカ: 「粘土の厚みの差がこの反りを生み出すのよ。


      反りがあることにより剣の抜けが良くなり切れ味が増す。


      わかったか。」


刀には反りと共に刃紋が刻まれていた。


俺: 「美しい、、、、」


その剣の、刃紋の美しさに見惚れている自分がそこに居た。


日本刀、、、と同じようなものかな?と思った。


ジャオカ: 「後はたくさん作って体で、感覚で覚えることじゃな。」


その後から俺は何本もの剣を作って経験を積んでいった。


3日の間に鉄の刀、ミスリルの刀を3本ずつ仕上げた。


それら全てに超振動のエンチャントを施した。


3日後影武者君が迎えに来たのを見たジャオカが腰を抜かしておどろいた。


ジャオカ: 「アグルが2人おる!」


俺: 「驚かしてすみません。これは影武者君と言って古代のアーキテクチャです。


   遺跡で発掘して使ってるんですよ。


   俺に代わって仕事をしてくれるんです。」


ジャオカ: 「どうなってるかわ知らんが、お前の代わって仕事をするのか?


      では、こいつがここに残って刀を作ったらどうだ。」


俺: 「作ることはできるでしょうね。


   俺とシンクロしてますし。魔力量とか使える魔術とかに違いはありますが。


   でもそれでは俺の練習にはならないでしょう」


ジャオカ: 「そうなのか」


影武者君: 「いいえ、私の経験をシンクロにより引き継ぐことができますので、


      練習になります。」


俺: 「そうなのか?知らなかったよ。」


影武者君には、まだまだ別の使い道が隠れていそうだ。


俺は影武者君にはここで剣作りの修行を積むように命じた。




翌日俺たちは工房を後にする。


アラストル、ソルトビルを経由してソブアラトト村に移動した。


アラストルでは美味しい食べ物や、香辛料などをお土産に買っておく。


懐かしい村に戻り、村のはずれの俺たちの家まで歩き始める。


エンビー: 「此処がアグル達の生まれた村なのね。」


こんな小さな村を見てガッカリするかと思ったが、


エンビーは、嬉しそうに村を眺め回している。


歩き始めた俺に小走りで近づくと手を握って横を歩き出した。


恋人握りという奴だ。


エンビー: 「あれがアグルの家?」


遠くに見えてきた家を指差してエンビーが聞く。


俺: 「違うよ、もう少し先なんだ」


その家を超えてもっと先に歩いていくと


10軒ほどの家が近すぎない間隔で立ち並ぶ小集落が見えてきた。


俺: 「あの向こうに俺たちの家があるんだ。


   田舎すぎて驚いたでしょ。」


エンビー: 「こういう所でアグルは育ったのね。素敵な所じゃない。」


俺: 「何も無い所だけどな。」


アゴン: 「親父達 今頃は狩りに行ってるかな?それともボウズが3人揃う頃か?」


アポン: 「懐かしいね!そういうの」


俺たちの家が見えてきた。


アゴン: 「おや〜〜  ボウズが揃ってるんじゃねーかあ〜?」


アポン: 「ハハハハハ、いるいる  3人居るよ。」


アポンの家の前に3人が顔を突き合わせて、、、


弓を取りに行ったぞ、、、、


アポン: 「あれ、鳥を狩りにいっちゃうよ、、、急いで止めなきゃ、」


アポンはそういうと、走り出した。


俺: 「頼むよアポン」


アポン: 「任せとけ〜」


アポンと接触した3人は俺たとを迎えにやってきた。


アゴン:「ただいまーーーー」 大きな声。


「おーーーーい」手を振りながら親父達が寄ってきた。


抱きつく親父たち。


「元気だったか?」 「大きくなったなあ!」


親父達の目に涙が光っている。


オイオイ、まだ2年くらいしか経って無いのに。


俺たちの目にもつられて涙が、、。


ひと段落したところで俺はエンビーを紹介する。


俺: 「俺の彼女のエンビーです。


   エンビー、僕の親父のアググ、


   アゴンの父親のアギン伯父さん、アポンの父親のアペン叔父さん。」


アギン: 「アグルが彼女を連れてくるなんて、隅に置けないな!」


アググ: 「父ちゃん、ビックリだよ。


     エンビーさん、アグルがお世話になってます。


     ボケーとした奴ですが、これからも宜しくおねがいします。」


エンビー: 「いえ、頼りになるんですよアグル君は」


アゴン: 「早く家に行こうぜ、かーちゃんとばーちゃんにも早く会いてーし。」


みんなは家の方に歩き出した。

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