74 魔物の森の魔物
狩り2日目、俺達は奥に奥にと進んで行く。
この辺りは 10m位ある魔獣がほとんどだ。
サクサク進むために全員で戦う。アゴン、アポンが前衛、俺とエンビーが後衛だ。
アゴンもアポンも魔剣による遠距離攻撃ができるようになっている。
大技の類と言ってよいだろう。
それなりに魔力の消費量が多いため、乱用するわけにはいかないらしい。
今日一日サクサク進めば、この前リザードマンに出会った辺りまで行けそうだ。
そうすれば、また闘ったことの無い魔物に会えるかもしれない。
俺もどんどん魔力を消費したいので、バンバン魔法攻撃を連射する。
とっとと魔物を倒してとっと先に進むためだ。
夕方、今日も奥に奥に進むことができたので魔法で小屋を設置した。
このパターンが定版になりそうだ。
何せ、体の休養がよく取れるためメンバーが楽だと言うからだ。
明日は初見の魔物の狩りが出来そうな予感がしている。
この小屋をベースとして少しの間利用しようと思う。
「エンビー、小屋の中にドア設置してくれないか?
避難したり、帰ったりできるように」と俺。
「いいわよ、建物の中が良いの?」エンビーがきいた。
「うーーーん、中がいいと思うよ」俺は答えた。
「どうして?」とエンビー。
「いきなり、ドアを超えたら魔獣がいたなんてことは、嫌じゃないか」
「そうね!よく気がついたわね。」
「その魔法、俺も練習していいかな。」俺はエンビーに聞いた。
「勿論良いわよ」一つドア設置して、もう一つ別のとこ設置して、2つがつながれば出入りできるわ。最初は近くから始めたら良いわよ」とエンビー。
俺はエンビーのやってた様にやってみる。
(お!ドアを作れた。)
隣にもう一つドアを作ってみる。
ドアを開けて顔を出すともう一つのドアから顔が出る。出た顔が残った体を見ていた。(変な感じだが、出来てるじゃないか。)
「あら、もう出来たの!驚いたわ」エンビーが目を見張る。
「これでよかったのかなあ?」と俺。
「良いのよ…………あなた天才ね!」とエンビー。
「たまたまだよ。あとは、別の所にドアを設置すれば良いんだね」
「遠くまでつなげられるかは、魔力次第よ」とエンビー。
「そういうことなんだね。」
ベースキャンプも整ったし、あらためて狩りに出発だ。
「行こうぜ!」とアゴンが言った。
「まず、奥に向かうとして、あっちにスネープがいるみたいだよ。」俺が索敵の結果を口にする。
「じゃ、それ狩りに行こう。」とアポン。
進んで行くと 木の上にレッドスネープがこっちを見ている。15mくらいはありそうだ。
こいつは火魔法で攻撃することもあるので要注意だ。
炎攻撃耐性を持っている他に鱗もそれなりに硬い。
こちらも魔法で防御力を最高にまで高めた。
俺は、出来るだけ魔法を使いたいので惜しげもなくみんなにかけた。
まず俺が、新しく出来る様になったウィンドカッターで攻撃、木ごと切り落とて、レッドスネープをアゴン、アポンの剣の間合いに入れる。
ズドーンという音と共に地上に落ちるレッドスネープ。
エンビーのアイシクルランス、俺も覚えたてのアイシクルランスで攻撃した。
レッドスネープがダメージを受けて勢いの落ちたところを、アゴンとアポンが首を切り落とした。
「向こうにシルバーウルクの群れがいるんだけど……14匹……群れとしては大きいね」
数が多いのも厄介だが、シルバーウルクは氷魔法、アイシクルランスの様な魔法を使い、氷耐性を持っている。
エンビーの氷魔法が効きにくいと、こちらとしては戦力低下になるし、エンビーを守りながら戦うことになりそうだ。
「アポン、位置は索敵でわかるよね。俺が先行して数を減らすから、
後から合流して群を壊滅しよう。タイミングを見て攻撃を仕掛けてくれ」俺が言った。
「わかった」とアポン。
「私も索敵で位置はわかるわ」とエンビー。
俺はステルスと隠密をかけ、風下からシルバーウルクの群れに近づく。
14匹の群れに先制攻撃を加えた。5匹に同時サンダーで攻撃する。
俺とは別方向から近づくアポン達の匂いに惑わされ、俺の匂いに気づいているのかいないのか、どこから攻撃されているのかわからないウルク達。
俺は、もう一度5匹にサンダーを落とした。
その時アグルとアポンが、合流できてウルク達に攻撃を仕掛ける。
俺が3度目のサンダー攻撃を仕掛けて、この群れは壊滅した。
「ちょろかったな!」とアゴン。
「うーーーん、俺はヒヤヒヤだったよ。
匂いでバレて1対14なんてことにならなくてよかった」俺へホッとして笑った。
「それでもアグルなら、なんとかしたでしょ!」アポンも笑顔で言った。
「そこまで強くないと思うよ。久々に緊張した」と俺。
「フーン」とアポン。
「前にゴブリンの群を片づけた時よりプレッシャーかかったね」
「ゴブリンより強そうだもんな」とアゴン。
「俺、この頃、魔法頼りになっちゃって、剣での強さが足りない気がするんだよね」
「俺たちの魔剣と比べると、その安い剣でじゃあなあ」アゴンが俺の剣を見た。
「アグルも、魔剣が欲しいよね」アポンも俺に剣を見ながら言った。
「うん。そういうレベルの剣は欲しいよな」と俺。
「ダンジョンに取りに行くか。後で」とアゴン。
「ここに飽きたらそれも良いね」と俺。
その時使っていた賢者の杖がレベルアップした。
ぐぐぐぐぐぐ、伸びながら剣のような形になっていく。
賢者の杖 レベル2 、持ち主と共に成長し魔力を2倍増幅し、魔力消費率を1/2にする。
俺の希望が反映されたのか、
剣のような杖…………イヤ、剣でもある杖に成長した。
「なんだなんだ、それどうしたんだ」アゴンが驚いて言った。
「それって、あの時買った安い杖だよね」とアポン。
「そう、サンジェルスさんの店で買った賢者の杖」俺は答える。
「あそこにあった杖の中で、まだ杖が持ち主を決めてなかったのはこれだけだったんだよ。
だから全然成長してなくて、ただの木の杖で、効果も何も無しだったんだ。
初めは杖に持ち主として認めてもらえなかったんだけど、強くなってきたら持ち主として認めてもらえたんだ。多分始めは魔力量が足りなかったんだと思う。認めてもらえた時、かなりの魔力を吸い取られたもの」俺はこたえた。
「そうだったのか」アゴンが頷いた。
「ボロい杖を買うからよせば良いのにと思ってたんだけど、
そういう秘密があったんだね」アポンも納得する。
「秘密ってわけじゃないけど、俺も買ってすぐに、杖に持ち主と認められなかった時はこの杖を捨てようかと思ったよ」と俺。
「なんか、いっきに剣の問題が解決しちゃったね」アポンが笑った。
「変わったもの持ってるんだねえ?」知らない声が頭の中に響いてきた。
俺たちは周りを見回した。(……誰もいない。)
「探しても見つからないでしょ?遠いところから話しかけてるからね」
「誰だ、お前は?」アゴンがでかい声で言った。
「大きな声を出しても、意味はないよ。小さな声でも聞こえるから。
僕はノモマ、悪い魔物じゃないよ。ふふふ」
「君は魔物なのかい?」とアポン。
「君たちから見れば、たぶん魔物と言われてるものだね」とノモマ。
「魔物の森にすんでいるのかい?」俺は聞いた。
「そうだよ、僕の家は魔物の森さ」とノモマはこたえた。
「姿を現せ!」アゴンが怒鳴った。
「僕は痛いのは嫌いだからね、姿を現してもいじめないかい?」とノモマ。
「わかったよ、君を攻撃したりしないよ、君が攻撃して来なければね」アポンが言った。
「そこから北のほうにどんどん森の奥に入ってきたら会えるかもね?
近くに来たらまた声をかけてあげるよ。バイバイ!」とノモマ。
ノモマの声がしなくなって、俺達の体に何も変わったことはなかった。なんらかに攻撃を受けたということは無さそうだ。
森の奥にはノモマという名前と知性を持った魔物がいるらしい……とわかった。(魔物の森のノモマ)と覚えておこう。会えることを楽しみに。
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