73 銀の流星 始動

朝目が覚める。昨日の事を思い出す。いつから俺は召使いになってしまったのだろう。

 昨日はエンビーの後をついて、いろんな店を周り、エンビーの買った物を持たされて くたくたになるまであるかされた。

 荷物なんかストレージに仕舞えばいいだろうに、持たせて歩き回りたかったらしく、これもファッションの一部なのだろう。

これも修業の一つと自分を納得させて、エンビーに付き合った。(俺って偉すぎじゃん。)女の子と付き合った事ないんじゃないのと言う言葉が胸の十字架に突き刺さり自由を奪っているのか?なぜかエンビーに操縦桿を握られている。

(いかんな、このままではいかん。今日は狩りに行こう。)

もともと狩りに行く予定だし、狩りに行けばきっと主導権はこっちに戻せるに違いない。俺がフィールドを案内するのだ。ついてこいって言う感じで。これだ、これしかない、戦場こそが俺の輝ける場所なんだ。


 部屋から出ると庭でアゴンが剣を振っていた。朝から自主練か、最近フィールドでも朝やっているな。

 俺も付き合って剣を振り出す。俺も剣を振りたい気分だったのだ。

 アポンも起きて来てこれに加わった。

「今日は狩りに出発しようか?」と俺は切り出した。

「そうだね」とアポン。

「そうだな、体が鈍っちまうからな」アゴンも言った。

「いいわね、私も狩りしてみたかったのよ」とエンビー。

「エンビー、君も狩りに参加したいのかい?」と俺。

 エンビーも部屋から出て来ていた。

「勿論じゃないの。『銀の流星』の初仕事ね。」エンビーが言った。

「なんでもいいけどよ、大丈夫なのかいSゾーンだぜ」アゴンがエンビーを睨む。

「大丈夫よ、アグルが守ってくれるもの」エンビーが笑って答える。

「ハハハ…………そう言う意味じゃないんだけどね。でもまあ、いざとなったら俺が守るよ。アゴン」と俺がそうアゴンに言うとエンビーは嬉しそうに俺を見つめた。

 (かかか…………かわいいじゃないか。)

 顔を赤くする俺を見てアゴンが頭を掻きながらいった。「まあ、いいか」

「Aゾーンから、ならしならしすすもうか」アポンが言った。


 第三中継小屋まで歩を進めた俺たち。小屋の敷地から出ていざ狩りにと言う時になって、エンビーがマッタをかけた。。

「なんだよ、ここまで来てから行くのが怖いとか言うなよな!」とアゴン。

「そんなわけないじゃない!この小屋にドアを設置しておこうと思って」エンビーが訳のわからないことを言った。

「ドアを設置する?なんだいそれは?」アポンが聞いた。

「ドアはドアよ」エンビーが呪文を唱えるとドアが現れた。

「開けると私の部屋なの、すぐ帰れていいでしょ!」とエンビー。

「いいな、それ、俺たちもそれですぐ帰れるってわけだ!」とアゴン。

「なんであなたを私の部屋に入れなきゃ行けないのよ!ヤアヨ!スケベ!」とエンビー。

「エ〜、そこをなんとかできねーのかよ」とアゴン。

「うーーーん。そうだ!ちょっと戻って、別のとこにドアつけてくるわ」

 そう言うとエンビーはドアの中に消えた。ドアも消えた。

 すぐにまたドアが現れて中からエンビーが出てきた。

「シェアハウスにドア設置してきたから これで帰れるわよ。私天才ね!」エンビーは自画自賛する。

「おー、けえれるんだな、お前天才だよ、便利便利」アゴンは喜んだ。

 俺はこの魔法俺も練習することにした。(どこでもドアだな。)

「じゃ、Sゾーンに向けて出発!」アポンが掛け声をかける。

「向こうにタイガーホスいるよ。エンビー狩ってみる?」と俺。

「良いわよ」とエンビー。

 しばらく行くと俺達はタイガーホスを発見した。

「あれね」とエンビー。

 俺は4人にシールドをかける。近づきながら、タイガーホスもこちらに気づき警戒態勢をとっていた。

 5mくらいに近づくとエンビーは、いきなり攻撃を開始した。

「アイシクルランス」と魔法を唱えた。

 氷の槍がタイガーホスを貫いた。もう一発、もう一発、3発の槍でタイガーホスは、倒れた。

「これで 良いかしら」エンビーがドヤ顔で言った。

「凄いよエンビー」俺は褒めまくりだ。

「なかなかやるじゃねーか」アグルも言った。

「凄いよエンビー」アポンもエンビーを褒める。

「どんどん行きましょう」エンビーもノリノリになった。

「次、向こうにシルバーウルクの群れ5匹ね」と俺。

 ストレージにタイガーホスを入れて次に獲物の方に出発した。

 今度は俺がサンダー5匹同時攻撃でシルバーウルクを瞬殺する。

「アグル凄ーい」とエンビー。

「そんなことないよ」俺は頭を掻いた。

「ナニ照れてんだよ!」とアゴン。

 収納して出発。「次はあっちね。グレーリザード1匹だよ」

「次は俺がやるぜ」とアゴン。

アゴンはグレーリザードを見つけると、物理攻撃耐性、身体強化、身体超強化、をかけて盾と剣で挑む。

 氷雪の魔剣の威力で凍らせて動きの落ちた所で首を刎ねた。

「どーでー」アゴンがドヤ顔で聞いてきた。

「あなたもなかなかやるじゃない」とエンビー。

「じゃ、次は僕の番ね」アポンが言った。

「あっちにグレートコング1匹」と俺。

 俺達はどんどん奥に入って行く。

 アポンも魔法で強化して炎の魔剣で戦う。

 苦戦しながらも遂には倒した。自分でヒールをかける。

「次行こう」と俺。

「アグル〜、いつもこんな感じなの?」エンビーが聞いた。

「この辺の弱い魔獣は、1体1で訓練兼ねてね、強そうだっらみんなで戦うよ」アグルは答えた。

「なんか、見てるだけってつまんないのよね〜」とエンビー。

「奥に行くほど強くなっていくから、大丈夫だと思うよ。 今日は肩慣らしだと思って、明日に期待して」俺は答えた。

「わかったわよ」とエンビー。

「じゃ、どんどん倒して奥に行こう!」と俺。

 (エンビーって相当な魔法の使い手みたいだし、余裕で倒しちゃうから、 一緒にいると狩りもピクニック気分で楽しいな。)

 俺たちはどんどん倒して奥に奥に進んでいく。

 魔獣もだんだん大きくなって、強くなっていく。

 攻撃耐性もたかくなってかなりの手数が必要になってきたので、みんなで攻撃するようになった。

 俺はみんなにトリプルシールド(シールドの三重がけ)をかけ、メンバーの防御力を強化する。

 灼熱の業火で頭部を燃やし尽くすのが最近の初手だ。炎耐性がないやつは即死だ。

 1日目でここまで奥に来れれば今回もリザードマンのいたあたりに到達できるだろう。

 そろそろ10m級の魔獣が現れ出した。1人で相手をすると5〜10分位かかるので、みんなで総攻撃をする。時短だ。

 連携攻撃の練習にもなる。

「『銀の流星』としては 順調な滑り出しって感じかな?」とアポン。

「そうだな まあまあなんじゃねーか。」アゴンも言った。

「私、魔力回復薬飲みすぎて、気持ちが悪いし、お腹タプタプだわ」とエンビー。

「俺も昔そう言う時あったな〜」俺が言った。

「アグルは、魔力回復薬飲んでないの?」エンビーが俺を見る。

「うん、魔力の総量が多いし、回復力がつよいからね」と俺。

「だいたい1日に4回全部無くなって回復してを繰り返せる感じ」俺は簡単に現状を説明した。

「私もそのくらいだけど……」エンビーが思案顔で言った。

「最近は魔力がなくなるほど使ってないな……使うようにしなくちゃいけないな……」俺も現状を鑑みて反省する。

(そうだ、効率よく賢者の石を育てるなら魔力を使って使って使い切って、

新しいスキルで魔石から魔力取り込んで、たくさんたくさん魔法を使わないと。忘れていたな。気をつけよう。)

「モデリング、ハウス」

俺は、土魔法で土造りの家を作った。

「今日は特別に野営用の小屋作ったよ」

「いいね、これから毎回これ作ってくれよ」とアゴン。

「別にいいよ」とアグル。

「お風呂入りたい!」アポンが言った。

「わかった」俺はストレージからこの前作った湯船を取り出した。

そしてウオーターとファイヤーでお湯を入れる。

「ちょっと、見えないように壁作りなさいよ」とエンビー。

「わかった、わかった」浴室もモデリングで壁を作って小屋を改造する。

家の中で風呂と睡眠を取れるという、野営とは思えないQOLを実現した。

眠る時には小屋を包みこむように結界魔法で魔獣に備えた。


『銀の流星』のなんとも贅沢な滑り出しとなった。

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