72 エンビー2

エンビーに連れられてギルドの受付にやってくると、モルネットさんが声をかけてくれた。

「あら、アグル君、Sランク昇進おめでとう」

「ありがとうございます。モルネットさん」と俺。

「こんなに短期間で、AランクからSランクに上がるなんて異例の昇格なのよ」とモルネット。

「そうなんですか」俺は聞き返す。

「10日間もかけて探索できるのも珍しいけど」モルネットは言った。

「いえいえ、大したことではないですよ」と俺。

「今日はお休みなの?」とモルネット。

「今日は、この子の冒険者登録とシェアハウスへの入居手続きをしに来たんです」俺がエンビーをチラリと見た。

エンビーが笑顔で会釈する。

モルネットが笑顔を返しながら言った。

「この子がシェアハウスに住むの?」

「そうしたいそうなんですよ」と俺。

モルネットがエンビーに確認のために聞いた。

「シェアハウスには、今男しか住んでいないけれど大丈夫」

「大丈夫です。冒険者ですから」エンビーが笑顔で答える。

「本当に大丈夫?」モルネットはもう一度確認した。

「変質者でも住んでるんですか?普通の方が住んでるのでしたら大丈夫ですが?」エンビーは顔色を変えて聞き直す。

「変質者は住んでないと思うけど」とモルネット。

「なら大丈夫、野営する時男の中に女1人ということだってあるんでしょうし」エンビーは安心したように言った。

現実的には……ない?イヤイヤ、ザックスのパーティーだってそうだ。ある。

「アグル君の彼女なの?」モルネットが俺に小声で聞いた。(エンビーにも聞こえてるけれど。)

「イエイエ!違いますよ」俺は即座に否定した。

「アグル君は、私を守ってくれると思います」エンビーが言った。

「エ!、どうしてそうなるの?」俺はあわてて言った。

エンビーは俺を睨んで、「あなた、叔母に私のこと頼まれてるでしょ」

(どこまで約束の効果が広がるのだろうか?あれは無限の効力を持つ魔法の呪文だったのか。)

「う、ううん」俺は渋々頷いた。

(シェアハウスに変な人はいないから別に何もすることはないさ、とりあえず話を合わせよう。)……と自分を納得させる。

「ふふーん」モルネットは何か納得したようで、手続きを始めた。

「登録は、Fからだけど、冒険者証が発行されるのはCからなので登録はできましたよ。

あと、部屋だけど、出来るだけアグル君のそばがいいかしら。……うん、この部屋ね、着いてきて」

モルネットは俺とエンビーに部屋の内見をさせてから聞いた。

「どうかしら?」

「ここでお願いします」とエンビー。

「よかったわ。ハウス内の案内ハアグル君にお任せしていいかしら?」モルネットが俺を見る。

「は、はい。わかりました」と俺。

「パーティーの申請とか必要ですか?」エンビーがモルネットに聞いた。

「特には必要ではないけれど、してくれるとギルドとしてはありがたいわね」

「わかりました。では、お願いします」

「メンバーは、私とアグル君で、パーティー名は、『銀の流星』なんてどうかしら?」

エンビーは俺に意見を求める。いや、無言の圧で同意を求める。

「う、うんうん、いいんじゃない………なんでも」と俺。

エンビーはモルネットに向き直りって言った。

「では、それでお願いしますします」

「それでいいの?メンバーにアゴン君とアポン君入れなくて」モルネットは聞いた。

「後で入れられないとか?一緒に狩りに行ってはいけないとかありますか?」と俺。

「別にこれまで通り一緒に狩りに行って構わないけど」

「じゃ、とりあえず、登録お願いします」俺はとりあえず話を進めればいいと思った。

「わかったわ」とモルネット。

「パーティーの代表は、レベルが上のアグル君でいいわね、

登録証は明日には作っておきます。取りに来てね」


これで手続きは終わった。

俺はシェアハウス内の案内をして、エンビーが部屋に荷物をならべるのをてつだった。

エンビーも異空間収穫ができ、荷物はそこに持って来ていた。

大きめの家具の移動をエンビーの指示で行う。

「それをここ、あれをそこと」

俺はエンビーの言うように家具を配置する。

「後は見せられないから部屋外で待ってて」とエンビー。

俺は言われた通り供用部の椅子で一休みしてエンビーを待った。この後、街を案内して欲しいとのことだった。


椅子で休んでいるとアゴンとアポンが寄ってきた。

「オイ、アグル、なかなか楽しそうだったじゃないか。もう終わったのか?」アゴンがニヤニヤしながら言った。

「一緒に来てくれるって言ったじゃないか〜、今頃来るなんて」俺は二人に抗議した。

「わりーわりー」笑いながら言うアゴン

「これから、街を案内して欲しいんだって」俺は言った。

「まだおわってなかったんだ〜」アポンが驚く。

「よかったな、所謂、デートって奴じゃねーか」とアゴン。

「イヤイヤ、そんなんじゃねーから」俺は否定した。だが見方によってはそうとも言えるのか?

「じゃ、2人の邪魔をしないようにしないとね」アポンが笑顔で言った。

「あ、そういえば、パーティーメンバーな、2人なんだけど、いいのかな、

一緒に狩りに行くことには問題ないみたいだが」と俺。

「え、俺たちのパーティーに入れてやるって話しじゃねーのか?」アゴンが不審そうな顔をする。

「違うの?」とアポン。

「俺たち、パーティー登録してなかったじゃん」と俺。

「そうか」とアゴン。

「俺たちパーティーになってなかったみたいなんだ」俺は言った。

「登録なんて関係なくパーティーだよ。ねえ、アゴン」アポンが言った。

「そうだよな〜」とアゴン。

「いつでも登録に加えられるんだって」と俺。

「なんの話をしているの?」後ろからエンビーの声が聞こえた。

振り向くとエンビーが部屋から出て来ていた。

「パーティーメンバーの話なんだけど、2人を入れてもいいよね」俺はエンビーに聞いた。

「私たちのパーティーに入りたいの?別に構わないけど」とエンビー。

「俺たち3人がもともとパーティーだったんだぜ、今更入れてやるってなんだよ」アゴンは不満そうだ。

「パーティー登録してなかったんでしょう。それはパーティーとはいえないんじゃなくて」

「パーティーと言えるだろう。一緒に狩りに行ってたんだから」とアゴン。

「どうでもいいわよ。早く手続きして来なさい」

「なんか………だな」とアゴン。

「行くわよ。アグル」エンビーはそう言うと歩き出す。

「あ、はい」俺は返事をしてエンビーを追った。

アゴンとアポンは手続きをしにモルネットさんの所に行った。

俺とエンビーの2人は街を見物に?(デートに?)行口のだった。

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