65 ソルトビルのオグレイヌとテスリー


俺たちはアラストルをあきらめ、ソルトビルに向かった。

アラストルとソルトビルは、馬車で5日。

野営のたびに、訓練に力が入る3人。

ドラゴン狩りに同行させてもらうために、少しでも強くなっておきたい。

ドラゴンと闘っても、死にたくはない。足手まといになりたくない。

さまざまな思いが俺たちを突き動かした。

その甲斐があって、俺たちは、物理攻撃耐性1/3、魔法攻撃耐性1/3、カウンターアタック1/3を身につけた。(ゴラン先生ありがとう。)


そしてソルトビルに着いた。


「オグレイヌは、飲み屋を探せば見つかるかな?」とタックドラス。

この前、一緒に飲んでいたゴランさんと同じくらいの2mのちょい悪おじさんだと思い出す。


「朝は何処の女のところにしけこんでるか分からんから、

夜飲んでる所を探すのが一番だな」とゴラン。


「あいつは、昔のあの家にまだいるのかな?」


「こないだ、オグレイヌはそう言っていたぜ。

まだお前の思い出といっと一緒にくらしてるんだと」ゴランが言った。


「よせよ、あいつには噛みつかれっぱなしだったんだ」とタックドラス。


「犬も食わないってやつだろう」とゴラン。


(タックドラスさんの元妻?元カノ?みたいな人かしら?会うのが楽しみ……。)


俺たちは宿屋を決めると、オグレイヌを探しに飲み屋街へ向かう。

ほどなく女を口説いているオグレイヌを見つけた。


「オグレイヌ!」とゴラン。

「ゴランとドラスじゃないか!」オグレイヌが喜び破顔する。


女をほっぽり出して3人は飲み始めた。俺たちも一緒に飯にする。


「実はな、お前に手伝って欲しいことがあってな」タックドラスが言った。


「わかった、わかった、いいから飲もうぜ〜」とオグレイヌ。


「侯爵に無理難題を押し付けられちまってな」とゴラン。


「わかった、わかった、まあ、飲もうぜ〜」オグレイヌはくりかえした。


「メタルトレ山の坑道でな」とタックドラス。


「わかった、わかった、グっといけグっと」とオグレイヌ。


「ドラゴンが出たんだと」ゴランと言った。


「わかった、わかった……うんん」とオグレイヌ。


「退治しろだと」タックドラスが。


「わかった……わかった?……ドラゴンか?……ドラゴンね」オグレイヌの顔色が変わる。


「手伝ってくれるよな」とゴラン。


「わかった…………3人でか?」オグレイヌが聞き返した。


「テスリーにも頼もうかと思ってるんだが?」タックドラスが気まずそうに言った。


「なんだかんだ言って手伝ってくれるだろうけどな。4人そろえばなんとかなるか」とオグレイヌが言った。


「ソルトビルのギルドには使えそうなやつっているのか?」ゴランが聞く。


「Sランクはいねーし、Aランクはそいつらとたいして変わらんだろう」オグレイヌが俺達を見て言った。


「現地までまだ鍛える時間はあるしな」とゴラン。


「よし、コイツらの練習、俺に見せてみろよ。なかなか面白そうじゃねーか」オグレイヌが言った。


「メタルトレ山まで10日はあるからな、みっちり鍛えてやってくれ」タックドラスがオグレイヌに俺たちの訓練を頼むのだった。



次の日オグレイヌを加えた俺たちは、テスリーさんの家に行った。


「俺が、テスリーにたのむから、お前は後ろに居ろよ。ドラス」ゴランが言った。


「頼むよ、ゴラン」とタックドラス。


「俺とゴランでなんとかするからよ!」とオグレイヌ。


「変に刺激するなよ、オグレイヌ」とゴラン。


「エ!面白いこと言うな〜、ゴラン、女ごころを知る俺がそんなことするわけないだろう」


「イヤ、お前はそういうところがあるぞ、触れられたくないところをグサッと刺すこと」タックドラスがいった。


「エ〜〜、そんな〜」オグレイヌが顔色を変える。


「俺に任せろ、二人とも」とゴランが言って「家の前で待ってろ。俺が行ってくる」


ゴランが、一人で家に入って行った。


しばらくしてゴランはテスリーを連れて家から出てきた。

あきれたような顔をしてテスリーは言った。


「7人パーティーでドラゴン退治というからどんな人と行くのかと思ったら、

タックドラス、久しぶりね、オグレイヌ、このゴミ虫!あとは、可愛い坊やが3人。ゴラン、これ……なんなの?冗談?」


「現状、集められた最強戦力だ」ゴランが言った。


「フーー」大きなため息をつくテスリー。


「まあ、ドラスとオグレイヌの実力は知ってるけど……」とテスリー。


「この子たちは……あら……大したものね!まだ12歳なのに、驚いたワ〜

何処で見つけてきたの?この子たち。」


どうやら、俺たちの鑑定をしたようだ。


「ゴーモリンだ」ゴランが続けた。

「このアグルは、ドラスの弟子で、後の2人はアグルの従兄弟だ」


タックドラスが(どうだい)という目でテスリーを見る。

「Aランクくらいの実力はありそうね。2人は。これなら連れて行っても自分の身くらいは守れそう」


「よろしくお願いします」3人はテスリーに挨拶した。


青みがかった銀色の瞳に銀色の髪、氷の女王の様な冷たくはっきりとした顔だちに、見事なまでの平らな胸、細身の体……(これがドラスさんの元妻?元カノ?)


「よろしくね」テスリーが俺たち3人に笑顔で言った。それはそれはキュートな笑顔だった。


ドラスとオグレイヌが胸を撫で下ろす。

どうやら同行してくれるようだ。


7人は翌々日、メタルトレ山に出発した。


「女には色々準備するものがあるのよ」だそうで、翌日でなく翌々日になったそうだ。

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