28 試験
次の日、受付前に行くと男に話しかけられた。
「君たちが荷物持ちに成りたいと言う3人かい?俺が、君たちの試験官のリザトルだ。よろしくな」
「「「お願いします」」」3人は緊張をかくせなかった。
「そうかたくなるなよ。10日間荷物を運べれば合格する簡単な試験だから。「こっちにきてくれ。荷物を渡すから」
「「「ハイ!」」」
男についていくと、輸送隊8人が荷物の準備をしている。
「君たちは、この荷物を背負ってついてきてくれ。
第一中継小屋に運ぶ今日の荷物だ。20キロンある、
体力テストだな、この程度荷物を平気で運べないとこの仕事はつとまらん」
俺たちは苦もなく背負いあげた。訓練のたまものだ。
「それでは出発するぞ。一緒に来い」
護衛3人荷物持ち8人俺たち3人と試験官兼護衛のリザトルの計15人が一列に並んで、(先頭2人は護衛、荷物持ち、真ん中に護衛1人、荷物持ち、俺たち3人、リザトルの順)第一中継小屋へのけして広くない道を進みだす。
1時間くらい歩いたところで、先頭の護衛が警告を発した。
「止まれ!かまえろ!」
俺達は盾と剣を構える。
俺は索敵をすると右前方の森の中に7つの気配を発見した。(…肉食獣の群れか?)
「進め〜」
警戒しながら前進、俺は索敵を続けている。
敵の近づいてくる様子はない。
敵の真横まで進むと前列の護衛の1人が敵の方を向いて止まり、隊列を通す。
隊列はそのまま横をすり抜ける。
そしてその護衛は隊列の最後尾に付いて後方の守りを固めながら隊列に続いた。敵が近づく様子はなかった。
隊列が安全域まで離れると声がかかった。
「構え戻せ〜」
俺達は、通常体制で前進。30分ほどして第一中継小屋に着いた。
「さっき、危なかったんですか?」俺はリザトルに聞いた。
「イヤ、この辺は安全な地域だから、まずおそわれることわないし、
魔獣の群れを見かけるのは5回に1回くらいだね。」
「7匹いたようですが、群れとしては大きい方だったんですか?」
「普通だなぁ。数的優位あるし、列を離れたら襲ってくるかもしれないけど、しんがりは、護衛がきちんとするから、みんなのペースで走るれれば、安全だからね」
「30分休憩を取ったら、荷物の交換して、素材を運ぶよ。そのつもりでね」
第一中継小屋は、食事スペースと、地図掲示板、宿泊施設、水や消耗品、武具等の売店、受付、買取り所とかがあるようだ。
30分後、荷物の交換をして今度はギルド本部に運ぶ荷を背おう。
帰りの隊列は荷物持ち7人(自分達3人を入れて)と護衛は変わらず4人。
第二中継小屋に行く荷物持ち4人がここでわかれる。
第三中継小屋には第二中継小屋に滞在している腕利きの荷物持ち1人が護衛1人と専属で運んでいる。
帰りの隊列は前2人中1人しんがりにリザトルで荷物持ちをはさみ俺たち3人は、リザトルの前だ。
1時間半で何事もなく戻って来れた。
「もう1往復するから、荷物変えて食事して1時間後出発ね」
「わかりました」
もう一度とは大変だなと思ったが、これで終わりは楽すぎるかもしれない。
アゴンもアポンも、もう1回か?と不満顔だ。
俺たちは食堂へ急いだ。
「3人ね、はい、今日はこれ」
荷物持ち用の食事は既に用意されていて、待つ事もなく食べられた。
ジャガイと肉の料理、不味いが食えないこともない。
腹だけは満たされた。
時間もさほどないので運ぶ荷物の準備をしながら休憩をする。
アゴンが、俺に聞いてきた。
「10日この調子かな?」
「たぶんな」
「10日間て、長いねー」
「食事と寝床で、10日間の労働ってなんか上手くこき使われてる感じだね」とアポン。
「試験料とか、取られないだけマシなんじゃない」
「なんだかんだ文無しでも生きていける仕組みになってるのかね」アゴンが頭を掻いた。
そんなこんなで2回目出発。
第一中継小屋まで荷物を運び、何事もなく朝のメンバーで引き返して1日が終わった。
10日間のうち、魔獣の近接は2度あったが、遭遇はなかった。
至って安全なルートのようだ。
「君たちは、10日間の試験をクリアーして、明日から正式な荷物持ちとして登録された。明日からは、受付で荷物持ちの求人を聞いて仕事をしてくれ」
リザトルが、俺達に試験の合格を告げた。明日から本当の仕事の始まりだ。
「宿泊はギルドで格安の大部屋が1番安上がりだ。金に余裕があるなら、近所の宿屋に泊まるがいい」
リザトルがアドレスをくれる。
俺たちは、金ができるまで今までどうり、大部屋住まいにすることにした。
そのあと明日の仕事について聞くために、受付に行くと、受付のモルネットさんが笑顔を見せる。
「合格おめでとうございます。初めての職探しになりますね」
「ありがとうございます。求人はありますか」アポンがモルネットに聞いた。
「1名づつの求人ならありますが、3人いっしょを希望となると今はありません。
気に留めておきますから、ありましたら声をかけますよ。ギルドの荷物持ちなら3人一緒で大部屋、1人当たり二食付きで1600銀です。どうしますか?」
「ギルドの荷物持ちで、お願いします」
「わかりました。明日からでいいですか?」
「お願いします」
「では、いつもの場所と時間に集合してください」
俺達は、それからしばらくは、ギルドの荷物持ちをすることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます