27 ゴーモリンにて



ゴーモリン、そこは魔獣の森の通称「森の入り口」と呼ばれる町。

冒険者の集まる町である。

そこには周辺地域から腕に自信のあるものが、一攫千金を目指し、あるいは武の極み、魔法の深淵を求めてやってくる。


ヒッコルト行商団の一行がここに着いたのは、もう日暮れも近くなったろだった。

たった3日の行程だったが、命懸けと言っても差し支えなかったのかもしれない。

毎度毎度行き来しているヒッコルトさんには、そんな気持ちはないかもしれないけれど。



その晩は街外れでキャンプ、次の朝ギルドに連れていってくれるという。

面倒見のいい人だ。(ヒッコルトさんありがとう。)


ゴーモリンの町は、獣よけの木の柵に覆われている中にある。

石の城壁の門番的な者はいない。

そこまで警戒していないということは、必要性もないということだ。

さすがに、ギルドの建物だけは、石でできた大きな建物だが、それ以外は木造だ。

火を吐く魔獣の襲撃にあって、全焼とかしたことないのかな。

もっともここに石を建材として運んでくるのも大変な費用がかかりそうなことを鑑みれば、ギルドの建物は必要に駆られてこうなっているのか?

最後の砦的な?


俺はこの世界の町というのを見るのは初めてだ。

ソブアラトト村と比べれば、雲泥の差だが、転生前の感覚で言えば村なんではないだろうか。せいぜいいても、人口1万人程度だろう。


ギルドを中心に発展した企業城下町と言ったところか。ギルドの周りに宿屋、武器屋、道具屋、服屋、飲み屋兼食べ物屋といった店が集まっている。


俺たちはヒッコルトさんがギルドに素材を買いに行くのに同行して、ギルド内まで行き、そこで別れの挨拶をした。


「ヒッコルトさん、無事送り届けていただいてありがとうございました。

帰る時も、よろしくお願いします」


「怪我のないように、ハイ、気をつけてください、ハイ。また会えることを、ハイ、楽しみにしていますよ。ハイ」


俺たちはヒッコルトさんと別れてギルドの受付へいく。

ギルドの掲示板に、依頼が貼ってあるかと思ってチェックすると、そういうものはなく、この近辺の地図が区画割してある。


A~Fのゾーン分けの上に色のついた丸が貼ってあり、日付が書いてある。

どうやら魔獣の出現ポイントと日付らしい。

おそらく危険な魔獣の動向を知らせているんだろう。


受付に行くまでに絡んでくる荒くれ者がいるのかと恐れていたが、そういうお約束ごとはなかったようで、人間もそれほど多くはない。


受付に行くと、受付嬢が聞いてきた。


「登録の方ですか?」


「荷物持ちの仕事をしたいと思いまして。3人で、ソブアラトト村からやってきました。手続きはこちらでよろしいですか?」


「ハイ、こちらです。ではまず10日間の見習い試験を受けてもらいます。

こちらには宿泊施設を併設してますので、10日間の宿泊地と食事は提供しておりますが、粗末なものですので、ご自分で用意してもけっこうです。どうしますか?」


「お願いします」

宿屋代、食事代の節約は、嬉しい限りだ。


「ではこちらにいらしてください。10日間は、こちらの大部屋の空いている場所で適当に寝泊まりしてください。相部屋の方とは仲良くしてください。できない人は、即不合格です。布団はそこにあります。

食事ですが、下の食堂で1日2回係のものに申し付ければ、出しますので、お食べください。

足りない時は、ご自分で、外で調達ください。以上でわからないことはありますか?」


「明日はどうすればよろしいですか?」


「明日朝、ギルドの輸送隊に同行して荷を運ぶテストを行うと思いますので、自前の装備をつけて、遅れないように受付前に集合してください。その時指示します」

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