25 旅立ちと盗賊とロレンツとジャハル




皮の防具、盾(小) 、剣、弓、リュックの中に3日ぶんの食糧を持って、ヒッコルトのところに向かうと、もう彼は準備を整えて俺たちを待っていた。


バトルホースにひかれた荷馬車が3台、それを操るのは、ヒッコルトとワイニクス、ワイシンの2人。

この2人は、護衛も兼ねているのでガッチリとした体型だ。

バトルホースも有事の時は心強い戦力になる。

また、ふつうの馬よりも大きな荷馬車を引いている。

このバトルホースを見ただけでも、盗賊は、襲う気を削がれるだろう。

バトルホースは頭が良く、離されれば、単独で盗賊どもを蹴散らし、主人を守るに違いない。


「ヒッコルトさん、よろしくお願いします」

「おはようございます、はい。では早速、ハイ、先頭の私の馬車に、お乗り下さい。ハイ」

3人は、言われたとうり先頭の馬車に乗り込んだ。

「それでは、ハイ、しゅっぱーつ」あまり大きくない掛け声と共に、馬車は動き出した。


馬車の中には2人の先客がいた。

「初めまして、ゴーモリンまでご一緒させてもらうわたしアグルと、アゴン、アポンです。よろしくお願いします」俺は話す事もこの世界では積極的にやろうと決めていた。

「ロレンツだ」

「ジャハル」

「お二人もゴーモリンへ?」

「俺はゴーモリンで冒険者をするつもりだ」「同じだな」

ロレンツは身の丈2メートルくらい、細マッチョで端正な顔だちの20歳くらいの男、ジャハルは、180センチぐらいか、ガッチリとした筋肉質でゴツイ顔のこれまた20歳くらいの男だ。


「俺たちは、荷物持ちをしに行くんです」


「ホウー」とジャハル。


「まだ小さいのに、偉いんだな。君たちは、兄弟かい」ロレンツ。


「いえ、従兄弟です」と俺。


アポンはこの間から落ち込んでいるので、静かだ。

アゴンはどちらかと言うと初対面の者には無口なほうだ。


いつもならアポンが話してくれるんだが、仕方がないので、俺が主に話す形になった。


「お二人はどちらからいらしたのですか?」


「ソルトビルだ。 俺とジャハルは、ソルトビルで、護衛の仕事をしていたんだが、ゴーモリンで一攫千金を狙おうかと思ってね。魔獣狩りで」


「お二人とも強そうですものね」


「まあね」ロレンツは良くしゃべっるが、ジャハルは無口なようだ。


その時ジャハルが剣を持ち、ロレンツに目配せした。

ロレンツは頷いた。

俺は索敵をしてみると、前方にどうやら待ち伏せるものがいるようだ。盗賊か。


「ヒッコルトさん、待ち伏せです、20くらいいるようです。」俺が言った。

ヒッコルトは、ラッパで合図をすると3台の馬車は、止まった。


「参りましたね、ハイ、引き返しましょうか。ハイ」


「チョット待ってくれ。ここは俺たちに任せてくれるか?」


「と、言いますと、ハイ?」


「ジャハル、どうだ?」


「強そうなのは感じんな」


「チョット一稼ぎしてくるから、ここで待っててくれ」


2人は馬車から降りると前方に歩き出した。

2人が盗賊と接触すると、盗賊の気配はどんどん減っていく。

滅多切りにしているようだ。


気配が半分くらいになると盗賊がチリチリに逃げ出すのがわかる。

相手にならない。冒険者とはかくも凄まじいものか。


何事もなかったかのように戻ってきたロレンツは言った。


「分前はやるから、身包みはいで、防具だの武器だの運ぶの手伝わんか?」


「はい、やります」これが初仕事になった。


「うっへ〜 血だらけじゃん」アゴン。「メチャクチャ強いね」アポン。

「あ、この死体、金持ってた」俺。


死体から、金目のものを集めて運んだ。そしてわずかばかりの金をもらった。


「いい稼ぎだったな」とロレンツ


「………………」ジャハルは何も言わない。

この世界は、弱肉強食だった。



「アグル君、キミ、索敵ができるのかい?」とロレンツが話しかけてきた。夕ご飯の時だ。…と言ってもこの世界は、1日におおよそ2回食事をとるというだけで、時間もまちまちだし、回数だって成り行きで決まる。

ただ午前と午後2回のことが多いだけだ。

晩飯というより夕飯というほうが時間的には近い感覚だ。

俺は干し肉を噛みながら答えた。

「はい、索敵できますよ」


「使えるねえ。 俺のパーティーの、とりあえずまだ2人だが、荷物持ちをやらないか?」


「3人一緒に使ってくれるなら、喜んで」


「解体はできるかい?」


「ハイ 、鳥、獣系はやってました。狩人の子なので」


「なら、よろしく頼むよ」


俺はアゴン、アポンとアイコンタクトをとってから

「わかりました。喜んで」


もう、仕事の当てができた。向こうで仕事にあぶれる心配がなくなった。

しかも、こんなに強い人たちとなら、安全度も高いだろう。

割といい人そうだし。


3人一緒にできる仕事となると、そのぶんしぼられるだろうし、不安に感じていたことでもあったので、幸先が良い。


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