24 アポンとラファー




テントを出た俺とアポンは、ハイタッチをした。


「やったな」

「そうだな」


アポンは1人モジモジしながら、小さな声で

「あのさ〜、ボクさ〜、ラファーと話をしておきたいんだよ。いいかな〜」


「ぜんぜんいいけど、そうだな〜」俺はアゴンの顔を見た。


「ここは、きちんと、話しとかないとな〜」と笑い顔のアゴン。


「しばらく、会えなくなるわけだしな〜」


「俺たちはアポンの味方だぜ。行って来いよ、まっててやるから」とアゴンが励ました。


俺たちはラファーの家のそばまで行くともう一度アゴンが言った。

「俺たちはここで待ってるから、時間は気にせず話して来いよ」


「サア、どうぞどうぞ」と俺。


アポンは、ラファーの家にそそくさと近づく。

ラファーが出てきて(こんにちは)をすると、アポンと話を始めた。

とそのうちラファーは、両手で目を押さえて泣いてるもよう。


俺たちはどうなってるのか聞き耳を立てる。


気配察知を鍛えに鍛えた俺たち狩人、目も鼻も耳も鋭い。アポンとラファーの声は丸聞こえだ。


「アポン行っちゃうの?」


「ごめんね」


「ううん、気おつけてね。ケガしないでね」


「大丈夫だよ」


「どうしても、行かなくちゃいけないの」


「うん、賢者になりたいから」(アレ、どこかで聞いたような?)


「どうして?」


「冒険者の使う魔法を見て覚えたいんだ」(俺の考えパクッるなよ。)


「私を置いて、行っちゃうのね」


「必ず戻ってくるから」


「きっとよ。私のこと忘れないでね」(よ、この色男!)


「じゃあね、あそこで待ってるから、ボク行くよ」


「待って、もう少し話していたいな」


「じゃあ、もう少しだけ」(オイオイ!)


「魔物の森は、魔獣が出るんでしょ?」


「うん」


「危ないわ、魔獣が出たらどうする?」(いい子やな〜)


「大丈夫だよ、返り討ちにしてやるから」(逃げなきゃダメでしょ〜)


「アポン強いのね」


「それほどでもないよ〜」(ナニ照れてんだよ!)


「アポンが強くても、逃げたほうがいいわ、アポンが死んじゃったら私、1人になっちゃうもの」


「大丈夫だよ」


「きっと逃げてね」(そう、逃げなきゃ。)


「わかった、そうするから心配しないで。君を1人にはしないから」(ヒューヒュー)


「きっとよ、お願いよ」


「うん………」見つめ合う2人。(お熱いことで………聞いてらんないね。)



アポンが返ってきた。


「まったく、2人とも聞いてたでしょう」


「イヤ、あんまり聞いてないよ」(ホントは聞けてたけど。)


「あんまり、てことは聞いてるじゃん」


「イヤ」


「ホントにー、しょうがないなー」


「イヤ、すまん、すまん……でもアツアツだね〜」


「モテモテだね〜アポン君〜」


「ナニ 言ってんだい。ふつーだから」


ふと、気がつくとラファーの元に駆け寄る男の子がいるではないか。

2人は楽しそうに笑いあって話し始めた。


オット

男の子が何かプレゼントのようなもの、渡したぞー!

気づくとアポンの顔が固まっていた。

ラファーは満面の笑顔、さっきまで泣いてたんじゃなかったか?




帰り道、アポンの走りは遅かった。泣くなアポン。

ラファーは美人だから言いよる男もおおいだろうさ。


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