(2章ゴーモリンと師匠) 22 旅立ち

 転生してから1年がたっていた。

誕生日を知らないし。我が家では誕生日を祝ったりしないので、

いつなったかは、わからないが11歳にはなっているはずだ。

ここには、誕生日を祝う文化はないのかもしれない。

肉がたくさん取れればお祝い、取れない時は慎まやかに、

保存技術の未熟なこの世界では、これが当たり前なのかもしれない。


変わらぬ毎日を過ごし、鍛錬を積んできた俺にアググは言った。

「そろそろ、即死ということは なかろうよ」

俺はアググより早く獲物の気配を感じ取れるようになっていたし、

走る速さも持久力もかなりあがっていた。

未だに体力強化は使えなかったが、腕力もソコソコだと思う。

もちろんアググには遠く及ばないが。


1人で散策中に、右前方に気配を感じ、走って逃げたことがある。

ダッシュして逃げ出した俺の後を、その気配が追いつくように追いかけてきた時は、血の気が引いた。

姿は見ていないのでそれが何か 未だにわからないがたぶんボアだったんじゃないかと思っている。


目の前1メートルの木の上に、突然5メートル級のグリーンスネイプを見つけた時は、食われるかと思ったが、目を見て少しずつ後退りしながら逃げてきた。襲われなくて本当によかった。


何度か血の凍る思いを経験した、


今のステータスは

   

     人族  11歳  レベル 5

   賢者の石レベル 3 MP 80

   HP 69 MP 93/13+80

魔法  ヒール ライト ファイヤー サンダー 探索

 スキル 解析 ピクチャーメモリー1/3 索敵1/3


 である。



「そろそろ真似ごとでもはじめてみるか。」アググは独り言のように言った。

集合場所で親父3人が何やら相談をした後、

「今日は、アグルの訓練に付き合ってくれ。」

子供3人に向かって言った。

「これから、テリトリーを超えて、枝ツノを狩りに行く。 装備整えるよ」


皮の防具 盾(小) 剣 弓のいでたち。

俺はそれに追加して大きなリュックサックに重石を入れて

予備の矢 予備の剣、ロープなど小道具を荷物持ち想定セットとして背負った。

20キロくらいは背負って、平気で動き続けられなければ荷物持ちは務まらない。


小一時間山の中を探索して歩き回ったが、気配はすれど、すぐ逃げられるという感じでを繰り返した。

アポンに至っては何一つ気配も感じられていないようだ。



枝ツノは鹿のような獣で、雄は頭に大きな枝のような角がある。

とても警戒心が強く、気配を悟られればすぐに逃げてしまう。

向かってくることもあるが、ボアのように真っ直ぐ当たってくることはなく、横を抜けていく習性がある。

だが、もしその角の一撃を受ければ命を落とすこともある。


俺が気配を感じたその時、アギンが静かに手を上げた。

弓を構え、ゆっくりとひく、狙いは左前方の茂み、

パッと矢を放つと、矢は茂みに吸い込まれた。

が、それより一瞬早く、獲物の気配は動いて遠ざかっていく。

矢を回収に行くと、やはり矢は外れていた。

この矢の先には、鬼コロから作った毒が塗ってある。

ただの矢が命中したとしても、それで即座に絶命させることはできない。

だから毒を塗り逃げた先まで追跡してトドメを刺すのだ。

矢が一本刺さったくらいで絶命するのは小さな獣だけだ。

当然毒を使った時は、その肉を食べることはできなくなってしまう。

だから、今回の目的は、角と皮ということだ。

肉を食べようと思えば、毒を使わずに狩らねばならない。

肉弾戦では、それだけこちらにも危険度がます。

だから狩人は、そんな危険は犯さない。肉が欲しければ罠を使うのだ。


俺は索敵をしてみた。

賢者の石がレベル3になった時に得たスキルだ。

気配を感じるより遠くまで、敵がいるのを感じられる。

左前方に逃げていくものがいる。

枝ツノだろう。


右前方にも7体の群れがいた。

俺は「右前方に7つの気配があるよ」と警告した。


「ヤバイやつかもしれん、引き返すぞ」とアギン。


俺の脳裏にハイーナの姿が浮かんだ。

俺たちは子供たちを先に、大人たちが後方の守りを固めるように走り出した。

だいぶ離れたところで「そろそろ大丈夫かな」とアググが言った。

俺は索敵を行い追ってきていない7匹の群れが、離れていくのを確認した。


「離れていってるね」


「よくわかるな!」


「索敵ができるようになったんだ。 気配を感じるより遠くまで何かいるのがわかるんだよ」


「何がいるかまでわかるか?」


「そこまでは、わからない。 いるのがわかるだけ」


「それでもすごいな、俺より遠くまでわかってるな」


「かなり使えるな。」


「そろそろ荷物持ち、いっても良いぞ」


「ありがとう。ヒッコルトに連れて行ってもらえるか?たのんでみる」


アゴンが羨ましそうに「冒険者目指すのか?」と聞く。


「賢者になるには、冒険者の使う魔法を見るのが、いいと思うんだ」


「俺も勇者になりたいな。一緒に行ってもいいかな?」


「俺はいいけど、というより心強いけど。アギンおじさんはどう思うの?」


「1人だとあぶねーけど、アグルと一緒なら大丈夫かな?早めに察知して逃げればいいからな」


「アポンはどうする?」アゴンが聞いた。


「ぼく……わかんないよ」


「アレがいるからな」アゴンが俺の方を見る。


「そうだな、アレがいるからな」俺はラファーのことを言っているのがわかっているのでニヤリとした。


「ナンだよ、俺だって行きたいよ〜でも〜」なぜか、モジモジ。


「なら、行ってこい。一緒でないと出せないからな。」アペンが言った。

俺とアゴンは目をあわせながらニヤニヤした。(アペンおじさんわかってないんじゃない。)


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