17 アポンの恋とソブアラトト村のラファー

ハイーナを解体して、その牙と毛皮を6匹ぶん、ボアの毛皮、牙もけっこうたまっているので、そろそろ行商人が村に来ればいいのにと思っていると井戸端会議でその情報がもたらされた。


さっそく荷づくりして6人で村に向かう。


空は晴天で雲一つない清々しい日和。


行商人のテントもいくらか客が来ている。

天気がいいと人は外に出るものだ。


もっともこの辺で家に篭もるものもいないだろうが。


大人たちが持ってきた物を売る手続きをしている間、俺たちはテントの商品を見て回っていた。


「オイ、あれみろよ」アゴンが俺に肘で合図押してくる。


見ればアポンがつったって、1人の女の子を目で追っているではないか。


「あれって、アレじゃね?」「アレだね」俺も同意する。


アポンはその子に一目惚れしたに違いない。


俺たちは、アポンがつったったまま、その子を目で追う姿をしばらく観察していた。


「フフフーン」俺とアゴンはアポンに寄り添い


「アーポーン………どうしたのかな〜」


「なな!なんでもないよ」


「アレ〜顔が赤くないかい〜」


「なーにいってるの、そんなこと!ないって」声が小さくなっていく。


アポンは下を向いてモジモジしだしてるじゃないか。


わかり易いやつだな。


「あの子、何処の子かな? この村の子には違いないよね」


背たけはアポンと同じくらい痩せ形で目鼻だちの整ったおとなしそうな子だ。


こちらの3人に気づいているのかいないのか?

アポンの視線に気付いたのか気づかないのか?

いっけん気づかないように見えるけるども気づかないふりというのはあるあるなので……


「アポン、声かけてみれば」


「やだよ、うるさいな」


勇者アゴンがツカツカと少女に寄って行ってなにやらその子と話し出した。


こちらを指して何か言うと、彼女はこちらを向き軽く会釈をした。


アポンの顔が真っ赤になっている。


アゴンは戻ってくると「この村の真ん中より少し先に住んでるらしいぜ」


「余計なことは、いってないだろうね!」アポンが怒って言った。


「言ってない、言ってない。大丈夫だよアポン。俺もそんなにヤボじゃないよお〜 俺たちはここから歩いて30分くらいあっちに行ったとこに住んでると言っただけだよ。軽い自己紹介さ〜」

にらむアポン 


「あ、名前聞いてきてやったぜ、ラファーて言うんだと」


「ラファーか〜」トロンとするアポン。


アポンがアゴンをまた睨む。

「最初、ラファー少しアゴンのこと怖そうにしてたよね、脅かしたら可哀想でしょ」


(コイツ早くも保護者になってるじゃないか)………とアグルは思った。


ラファーは父親らしき人とテントを出る。その時ラファーはこちらに軽く会釈をしていった。


大人たちも用を済ませ「帰るぞー」と俺たちに声をかけた。

また名人の矢を買い足した様だ。

帰りの道中ポッとするアポンを見ながら俺とアゴンは顔を見合わせるのだった。


次の日アポンが言い出した。


「ボク、身体を鍛えたいと思うんだ。とくに脚力。だからさあ、村まで往復走ってこようかな〜、一緒に来ない〜」 


 顔を見合わせる俺とアゴン。


「アレだよな」


「アレだね」


「まあ〜 応援しなってのもなんだな」


「1人で行くってのもアレなんだろうね〜」


「付き合うか?」


「そうしよう、俺も体力つけるのやぶさかではないしね」


「分かった、いくよ」話はまとまった。


俺たちはラファーのもとへ走り出した。

村の真ん中より少し先まで走ってそこで一休み。

目当てのラファーは見当たらない。そのまま走って帰ってきた。


「やーいい運動になったね。また明日も走ろうよ」


俺は体力つけたいので「いいよ」と答える。

アゴンも同意した。

そしてこれが日課になるのだった。


おかげで10日ほど経つと俺の体力は増加していた。

HPが17 MPが6/6+20

はじめてMPが増えたのは、走っていたのとは関係なく魔力を使う経験を積んだためだと解析した。


ラファーも2回ほど見かけたので、何処に住んでいるかもおおよそわかったが、アポンは遠くから見ているのだけで満足のようだった。

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