13 炎の魔術師デイアビュート

最近 井戸端会議に近所のおばさんが混じっているのをよくみかける。

井戸を見に来てそのまま長話をしていくパターンができつつあるのか。


俺はあの後サンダーの魔法も練習している。

筋力アップを目指し重い弓を弾く練習もしている。


MPは、最後に使い切ってから寝るようにして朝には5/5+20になっている。

ボアの石も新しい魔力の残ってる石から魔力を取り込めるみたいで3日に1くらいはMPが増える。


最初にとったボアの石はもう魔力がないような気がする。

何となくだがそう思える。

MPのあるやつとの違いみたいなのがある様な感じがする。

魔力草を見つけると食べている。やはり10くらい魔力の補充になる様だ。


村に自称「炎の魔術師」という賢者が村に立ち寄っているそうで、明日人が集まって充分な金が集まればその魔術を見せてもいいということになっているとお母さん達が聞いてきた。


「ゴーモリンの町に行く途中に立ち寄った」とその人は言っているらしい。


ゴーモリンの街はここから北西の方にある森の入り口と呼ばれる町で、アラトトス山の向こうの魔物の森で狩をするための拠点で有名な町だ。


そこに行くということは魔物狩りに行くということか?

魔物狩りということは冒険者、それなりに腕に自信がないとできない仕事だ。


この世界では実力がないものは獣を取って暮らしている。自分達の様に。


「俺の炎は調子が良ければ、2メーダ(メートル)はいける」と話しているらしい。

メアリ婆の魔法は指先に火が出るくらい、たぶんそれでも出るだけ凄い。

出せない賢者が多いはず。



「見たいかい?」「見たい」みんな即答だ。

ということで、みんな連れ立って炎の魔術師をみに村の方まで歩きだす。


人が集まっているのがそれに違いない。

集まってると言っても小さな村なのでたいした人数ではないが……


近くに行くと、見慣れぬ大男が腰掛けてその足元には金の入った帽子がおかれている。どうやら見学料はここに入れろということらしい。


俺たち一向が到着すると男は立ち上がり「俺の魔法を見ていくならこの中に一人500銀入れてくれ」とアギンおじさんに言った。

アギンを一族の長と見たのだろう。


アギンも大きい方だと思うが、魔術師はアギンより一回り大きい。

特に上半身がガッチリと筋肉質で胸板の厚みは相当なものだ。

余分なぜい肉はついていない。

魔法使いのイメージより重戦士と言った方がしっくりくる。


俺たち一向は11人だから、アギンは指折りかぞえて値切り出した。

「5500銀もかかるじゃないか、まけてくれよ」


「俺の魔術は、安くはないぜ、見て驚け。」


「5500は痛いな」

男たち三人が顔を見合わせていると魔術師の方が折れた。


「しょうがね〜な、団体割り引きにしてやるよ、4000でどうだ。」


「こども割引もつけてくれ」


「じゃ、3000入れろ、これ以上負けられん、そう何発も打てるわけじゃないんだからな。」


「わかった。」金を入れると俺たちはその辺で見る様に指さされたあたりに陣取った。

大男は人差し指をペロリと舐めると風の向きを調べる様に立てた。


「ここから、コッチにブワーと吹くから、そこもっと下がって、下がって」

観客のれつをととのえると、


「待たせたが、人もそこそこ集まったところで この炎の魔術師 デイアビュートの魔術を見せてやるぜ。

俺の炎がスゲーと思ったらおひねりくれてもいいんだぜ。

よろしく頼むあー」


「それじゃ、着付けの一杯。」と酒らしいものを口に含んだ。


そして左の人差し指を立てて口のそばに持っていくと


「ぼわーーーーー」炎を吐いた。

確かに2メーダ弱とどいたと思う。


観客の顔は一様にこわばっていた。俺以外は。

俺はいま起こったことがどういう仕組みか知っていた。大道芸で見かけるやつだと。

指先に魔法で火種を出し、アルコールを吹いて炎を吹いた様に見せるアレだ。


ただ肺活量がすごいのだろう。

火炎攻撃として使えるほど長く大きく火をはいていると言ってもいいという違いはあるが。


初めてこの炎を見たみんなは腰を抜かす勢いだ。

その様子を眺めながら、デイアビュートは満足そうな笑いを浮かべて腰掛けの方に戻っていった。

彼には騙しているとかという気持ちは無いのだろう。

これは鍛えた肺活量と魔法のミックス技なのだ。


例えば魔物のファイヤブレスも、炎魔法と可燃性の分泌物の合わせ技なのかもしれない。

それはそれは強力な恐るべき魔法なのだ。


これなら俺もできるようになれるんじゃないか?

でも相当熱いのを我慢しないとだな。

あまりやりたくはないな。これはできなくてもいいや。納得するのだった。

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