11 初めての魔法

狩りから帰ってくるとアブルが突進してきた


「にいちゃん、あそぼ〜〜」


おっと!俺はアブルの突進を躱し、転ばないようにアブルを抱きかかえた。


「オット、アブル、危ないだろ。転ぶと痛いぞ〜」


「大丈夫だよ、兄ちゃんに、ドーンと行くから、ドーン」

訳のわからんことを言うやつだ。


母親達は井戸端会議中である。

アブルにまとわりつかれている俺に気がつくと、「アグル、アブルの相手は頼んだよ」とお気楽な声をかけてきた。


アブルの相手はいつもの事だけど、さてどうするか?

畑のジャガイを掘りながら土遊びでもさせるか?


「ジャガイ掘って遊ばせていいかい?」


「そうだね、そろそろ試し堀りしてみるかい。とりあえず3つ4つ掘っていいよ。」

母からの許可を取り付けてジャガイを掘って遊ぶことに決定した。


母達は畑の水やりも、井戸ができたのでめちゃくちゃ楽になったはずだ。

なんと言っても水を運ぶ距離がちがう。

今度から畑を広げることもできるだろう。


俺はスコップと収穫用の袋を持ってアブルを呼んだ。


「アブル、行くよ、畑で遊ぼ〜」


「わ〜〜い、畑、畑、ドーン、ドーン」

アベルは飛び跳ねながら俺の周りをグルグル回る。


ジャガイの畑はすぐそこだ。ジャガイの葉の少し外側にシャベルを差し込ませ、ジャガイの実の下から傷つけないように土ごと掘り起こす。

かなり力のいる作業だ。


掘り起こされた土の間からジャガイの実が現れた。


「ジャガイ探せば〜」


「わーい」

アブルは喜んで手で掘りながら土の中からジャガイを探し出した。

そして葉ごと引っ張りながらうれしそうにさわぐ。

「いっぱい、いっぱい。」


取れたあとの土の中も手で掘り探すとジャガイが出てきたりする。


「あった〜」意外なところからジャガイの実が出てきたりもする。


「次行くよ〜ほうれ!」

俺が次のジャガイの葉をほっくり返すとまたアブルが其処を探す。

4ヶ所のジャガイを掘り返し収穫した後、そこの土をほっくり返して土遊びができるように柔らかくしてやるとアブルは土遊びを始めた。

みみずも出てくる。


「ニョロニョロだ〜」アブルにみみずのこの世界での名前を教えられるとは情けない。


一人遊びを始めたアブルの横で「ファイヤー」「ライト」「ヒール」

俺は魔法の練習を始めた。


「にいちゃん、ウンコー」


土遊びのところから少し間をとった畑の土を掘って穴を作り簡易トイレにする。


「ここでしな」


ジャガイの葉でアブルの尻を拭いてその葉も穴に埋める。


紙持ってないからこれでいいかな?


「にいちゃん、オシッコ」


「そこでシナ。」


ようたしがすむと土遊び、手のかからん良い子じゃないか。


「ファイヤー」「ヒール」俺は魔法の練習。


土遊びに飽きたアブルは、近くの花の方に行った。


何やらそーと花に包んで捕まえたようで、花を持ってこっちにきた。


「兄ちゃん、ハチッコ捕まえた〜」花を見せるアブル。


花びらの中に虫の姿が透けて見える。コイツ、ハチッコ捕まえてる。

なんてやつ、子供のすることは予想の斜め上をいくもんだな。


「かわいそうだから、逃しなさい」俺は偉そうに言う。


「わかっった〜」

アブルが、そうっと花を開くとハチッコが飛んで逃げていった。

アブルが刺されないでよかったーと胸を撫でおろす。


暫くするとアブルは、お股を押さえながらモゾモぞ寄ってきた。

「にいちゃん、オチンチン痛い〜」


「どれどれ」

確かに少し赤く腫れ気味のような?

ニョロニョロさわった手で、オチンチンさわったせいかしら?

こういう時はやっぱり気休めにアレだなと思う俺。


「痛いの痛いの飛んでゆけ!ヒール」


気休めのおまじないをしてやると、その時俺の手が何か出したような感じがした。気のせいかなと思ったのだが……


「治った〜」アブルはそう言うとまた遊びに行こうとする。


え!治っただって?


「チョット、よく見せてみろアブル」


俺は確認のためアブルのオチンチンを調べ直す。

なんだか治っているような?赤みが取れているような?


「遊びに行ってよし」

俺はアブルのお尻を叩いて送り出す。


解析ステータス!


24/5+20 魔力が消費されている。


ヒールが発動したのか?………だよね、魔力を消費したんだから。


「ヒール」「ヒール」解析ステータス………22/5+20


やった!魔法ができた。


効果は小さいが気のせいくらいの痛みは治せるようになったんだ。


俺はとても小さな、そしてとても大きな一歩を踏み出したのだった。

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