5 メアリ婆の魔法

「いくぞー、アグル!」いつものようにアググの声。俺はアググについて行った。


今日もボウズだったのでアポンの家で、アペンさんとアポンと一緒にアギンさんたちを待っていると、アゴンが助けを呼びに来た。


「おーい、てつだっくれー」


もしや昨日のがフラグか!!魔獣現るか!!


「デカイの来た〜」

デカイ魔獣か!


「運ぶのてつだってくれー」

運ぶのてつだう?

アレ………


「仕留めたのか」とアググ。


「胸に竹槍ぶっ刺して血がどくどく出てるんだけどまだ生きてた。今頃死んでると思う」アゴンは答える。


「よーし!武器いらんな!槍持たんでいいぞー、アグルもアポンもついてこい」


みんなでアゴンについていくと、アギンおじさんが大きなボアの前に座っていた。


「締めるか、待つか?考えてたところだ〜、ナイフを折りたくないしな」


ボアは膝を折り、虫の息のようだがまだ確実に生きている。


「そうそうナイフは折れんだろう。こいつらに締めるとこ見せてやれよ」とアググ。


「そうだな、待つのも飽きたしな。いいかお前ら!背骨と背骨の間にナイフをぶち込むんだ。あの一番でっぱってるあたりは、ちょうど骨と骨の継ぎ目だから、こうだ!」


アギンは、動きの鈍いボアに飛びまたがると脊椎の間にナイフを打ち込みボアは絶命した。


「おー」みんなは手をたたいて、「おみごとー」ともてはやす。


「いやこのナイフ抜くのが、力いるのよ〜。ヨイショ。あ!よかった、取れた。折れなくてよかった!」


「うんじゃあ、河原で解体するか〜、これ運ぶの大変だなー」


6人で協力して河原まで運び解体を始める。


内臓を綺麗に取り出し、捨てようとするので、心臓は食べないのか聞いてみた。


転生前にハツと言う肉は心臓で、コリコリして美味いのを知っていたからだ。


腸、特に大腸の方は傷つけると汚物まみれになって他の肉も不味くなってしまうので、まとめて捨てているが、心臓は、食うものがない時には綺麗に取り出して、食うことも有るという。


冷蔵技術のないこの世界では、痛む前に食わなくてはならないので、あえて心臓まで食わないことが多いらしい。


「俺、食ってみたいから心臓を川で洗って持ってきていい」と聞いた。


味を知りたいのもあったが、魔石がついていないかが気になったのが1番の理由だ。


「変なやつだな。いいぞ、よーく血を洗い流せよ。焼けた血の塊は、不味いからな」


俺は心臓を切り取ると川でキレイに洗い流した、もちろん中の血まで。


そうしながら心臓に石がついているのを見つけた。


一センチくらいの黒っぽい石だ。


これが魔石だなと思いキレイに洗ってアギンさんに聞いてみた。


「これって魔石かな?」


「魔法の使えないのは、魔石はないからただの石だとおもうぞ。

魔力があるといい色らしいから、赤っぽかったり青っぽかったり色々な、

よくは知らんが、仮に魔石でも売れそうにないな!その石」


「もらっといていいかな?」


「そんなんが欲しけりゃやるよ」


俺はボアから出た石をゲットした。


解体を終えてみんなで今日の獲物を家まで運び腹一杯食う、食いだめ、昨日取って来たレタースサニも今日もまた食べる。


肉と野菜、ジンガーで味をつけた肉はいつもの味付けよりとても美味い。


メアリ婆に感謝感謝。

「ばあちゃん、ジンガー味とても好きだわ、俺」


「そうかい、よかったよかった。アグル、昨日は見せれなかったけど今見せてやるよ」


メアリ婆は、右手を出すと人差し指の先を見せた。


「燃えろ燃えろ熱く燃えろーファイヤー」 


『ポ』婆の指先に一センチほどの火がともり、すぐ消えた。


「スゴイ、もう一回、もっと長くつけられないの?」


「いいかい、もう一回行くよー」


「燃えろ燃えろ熱く燃えろーファイヤー」


今度はさっきより長く燃え続けている。


「ふー、魔力が尽きたから今日は、このくらいだよ」


長く火をつけているだけ魔力を消費するらしい。


「今度また違う魔法を見せてあげるからね。ばあちゃんスゴイだろ」


「スゴイスゴイ!」俺は初めてみる魔法に感動していた。


「俺もできるようになりたい。どうすればいいの?」


「練習すれば、そのうちできるさ、賢者ならね」


「どうするの?どう練習するの?」


「こう指を立てて指先に火がつくことをイメージするんだ。

そしてさっきの呪文を唱えて、ファイヤ〜の時に魔力をひり出すんよ」


「指先から屁を放り出すように気張るのかい?」


「マア、そんな感じかねえ、とにかく何度も練習すればそのうちね!

しつこくしつこくしつこーく練習すればそのうちできるようになるさ」


「婆ちゃんって、そうとうしつこかったんだね」


「そうだよ、ばあちゃんは、村一番しつこかったんだから」


周りのみんながどっと笑いこけていた。


「チゲ〜ねー」アギンが言った。


その日から俺は一人になると魔法の練習をくりかえすようになった。


「ファイヤー」


「ファイヤー」


ステータスも毎日数回気がつくとチェックした。


かわらない。


かわらない。


「ファイヤー」  


ボアの石は宝物として小袋に入れて胸に吊るした。


魔石ならいいな。


「ファイヤー」解析ステータス………変わらない。


魔法が使えてないんだから、魔力が減らないのは当たり前だった。


この方法、魔力が減らないので何回でも練習ができる。

これが初めの一歩だった。




次の日、ボアはかかっていなかったので、また婆ちゃんを連れてリンゴンとりと散策をした。


その時ばあちゃんはライトの魔法を見せてくれた。


「ひかれひかれあかるくひかれ、ライト!」指先が少し光る、昼間でもそれはわかった。


昨日ナイフをもらったので、スネイプも初めて狩った。

回復草、目を良くするというブルンべの実、

もう少し後に美味しい実をつけるナッシン、モモン、ガッキー、グレープンなどの木も教わった。

食べてはいけない赤い実をつけてる草の毒イーチ、笑いシーメイというキノコなどなど、婆ちゃんを連れていくと知識が増えた。


婆ちゃんもうれしそうだし婆ちゃん孝行になっていると思う。

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