019 解決

「姫様!」

「姫!」


 城へ戻ると、吸血鬼のアイリスとヴェニスが待っていた。

 俺はレイヤ姫を抱えている。


 ここへ戻る間、ずっと、


『……ちゅき』

『……カッコイイ』

『……きゅん』


 と、呟いていた。

 こんなキャラだったか?


 ちなみに目は宝石のように赤く、綺麗な瞳だ。


 レイヤ姫は俺の手から離れて、アイリスとヴェニスの元へ駆け寄る。

 六封凶はもちろん、ほかの吸血鬼たちも集結していた。


 だが俺の後ろに、蜥蜴族リザードマンがいるのを見つけて、叫び声をあげる。


「なんでそいつらが!」

「殺せ!」


 だが俺は吸血鬼を制止する。

 左手に持っていた黒装束の男を投げ捨てると、そのままごろごろころがって、六封凶の中心で目を覚ました。


「ひっ、ひっ、ひっ!?」

「こいつが黒幕だ。殺すなよ。全て聞きだせ」

「「「「はっ」」」」


 怯えた黒装束のフードがはだけ、そこから現れたのは、人間・・の男だった。


「黒幕とはどういうことですか?」

「すぐわかりますよ、レイヤ姫」



 それから数時間後、ライフが戻って来る。


 満面の笑み笑顔。だが返り血が凄まじい。


「……殺してないよな?」

「はい! 今は・・無傷ですよ」

「……何をしたんだ?」

「え、ええと、まずは手足を切り落とし――」

「いや、いい」

「はいっ!」


 聞かなければよかった。


 だがしかし、男の素性と今回の事件が全て明るみになった。


 ほとんど俺の予想通りだ。


 原作で蜥蜴族リザードマンは理性のある種族だった。

 吸血鬼族ヴァンピールも同様、そして強い。


 彼らが争うメリットはどこにもない。

 

 なのにレイヤ姫は消えた。


 点と点が重なって、疑いは確信に変わった。


 始まりはこうだ。


 黒装束の男は、近隣小国のランドルの王族が抱えている暗殺者だった。


 手順としては、まず吸血鬼を数人殺し、血文字で魔王に従えとを残す。

 同時にレイヤ姫を誘拐。


 次に蜥蜴族リザードマンを殺し、同じように吸血鬼族ヴァンピールがしたと血文字を残す。

 

 アイリスとヴェニスは俺が以前からレイヤ姫を狙っていたことを知っている。

 さらに領地拡大をしていたので、それを簡単に信じたはずだ。


 蜥蜴族リザードマン側からすれば、吸血鬼族ヴァンピールを急いで叩かないととなる。


 そうやって魔物同士を仲間割れさせるのが、この黒装束が描いたストーリーだった。

 

 理由は、魔物たちが持つ宝だ。


 理性がある種族の魔物たちは価値のあるものを持っている。

 それが武器なのかは定かではないが、どさくさに紛れて奪う予定だったらしい。


 手を汚すのは最小限、その間に火事場泥棒をしようとしていた。


 レイヤ姫は決して弱くない。なので、弱点である昼を狙った。


 だが俺に矛先を向けたのが間違いだった。


 原作でランドル国が腐っていると知っていた。

 だからこそ俺はすぐに気づいた。


 俺は二種族に全てを話した。


 蜥蜴族リザードマンの軍勢が半分だったのは、俺たちが関与しているかもしれない、なので、半分を里に残していた。


「本当に申し訳ありませんでした。このレイヤ姫が吸血鬼代表し、謝罪致します」

「頭をあげてくれ。俺が領地を広げていたことも原因ではある」

「……ちゅき」

「え?」

「何でもありません。この謝罪は改めてさせていただけますでしょうか」

「ああ」


 そして、次に蜥蜴族リザードマンの長が俺の前に膝をついた。

 三メートルほどの大きさで、ちょっと怖い。


「申し訳ありませぬ。今回の件は、我らが簡単に騙されてしまったのが問題です」

「仕方ない。そもそも弱肉強食の世界だしな」

「今回の被害を最小限に食い止めていただけたこと、感謝いたします」


 とりあえず無事に全てが終わった。


 いや――まだか。


 黒装束の国がどうするのかが残っていたな。


 と思っていたら。


「レイヤ姫、お互いに手を組まないか?」

「歓迎でございます。私たちを利用した罪を償わせましょう。ですが対象は黒幕のみ、被害は最小限にしましょう。それでよければ」

「御意」


 二人はすぐに手を組んだ。なるほど、魔物は一致団結も早いのか。


「――ならうちからも人を貸そう。血の気が多い奴が余ってるからな」


「魔王様、このアリエルめが! 戦います!」

「ペール! ペールが戦う! 悪い人間なら殺していいんだよね? 殺す!」

「魔王様、わ、わたしライフが人間を生かしながら苦しめます。悪い奴ならいいんですよね?」

「魔王様、ビブリアにお任せください。善悪の区別は誰よりもつきます」


 その瞬間、六封凶の連中が嬉しそうに声をあげた。

 悪い奴=殺していい=殺したい! みたいな思考になっている。


 まあ、それはいいんだが。


「……全員でいってこい。だが、あくまでも俺たちは手助けだ。それを忘れるなよ」

「「「「はっ!!!」」」」


 

 その夜、小国とはいえ、一晩で全てが終わった。


 一般市民には一切危害は加えなかったが、この件を直接命令した私腹を肥やした奴らは全員死んだ。


 これにて一件落着、だが――。


「私たち吸血鬼族ヴァンピールは、デルス魔王様に忠誠を誓います。夜の戦闘は、私たちにお任せを」

「我ら蜥蜴族リザードマン、命を懸ける覚悟がございます。剣となり、盾となり、壁となります。なんなりと」


 ついでに・・・・屈強な軍隊が配下になった。


「町から、急いで街にしないとな」

「……ちゅき」


 後なんか、レイヤ姫の目がハートにみえてきた。

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