第2話 おじいちゃんのこと
魚のおじいちゃんは、魚がまだ小さい頃に亡くなりました。
おじいちゃんは、若い頃から悪い病気にかかっていたのです。最後もその病気のせいで、天国に行ってしまいました。
魚のお母さんが小学生だったころ、おじいちゃんは、会社に働きに行く日と、布団に寝ている日がありました。寝ている日は、真っ暗な部屋で、ずっと布団の中に入って微動だにしないのです。そして、時々起きて来た時は、ひどく顔色が悪く、とてもしんどそうでした。
お父さんは、2年働いて半年寝て、転職してまた働くという事を繰り返していて、おばあちゃんもお母さんも、おじいちゃんが明日会社に行くかどうか?それが家族の大きな問題でした。「うつ病」という病気で「人間関係がうまくいかない」と、おばあちゃんは言っていました。
お父さんは悪い病気のせいで、時々豹変し、怖い形相になるので、まだ小さかったお母さんは、いつもおじいちゃんに怯えていました。家に飼っている猫に鳴かないよう話し、家の中で静かに過ごさないと、おじいちゃんが怒るから、家の中はいつも暗く、お母さんも毎日不安でいっぱいでした。
ある日、おばあちゃんは、お母さんたち娘2人を連れて家を出ていく事にしました。
引っ越しした先は、お風呂が無い文化住宅の2階、家賃2万3千円の物件でした。
お母さんたちはそこで、7年暮らし、貧乏な生活を送りました。
でも、2年が経った頃、おじいちゃんが、訪ねてきたのです。おじいちゃんは、住み込みで働いて、生計を立て直し、お給料を持って会いに来ました。今までの事を詫びて、もう一度、家族と暮らしたいと言いました。ですが、娘2人が反対し、おじいちゃんは、それから20年近く、別居のまま、週1回通う形で家族としてやり直すことになりました。
その後も、おじいちゃんは、時々調子を崩し、少し寝こむこともありましたが、生活のリズムが整えられていたためか、その都度持ち直し、定年まで働くことができました。お母さんもおじいちゃんと、一緒に出掛けたり、外食したり、宝石や洋服を買ってもらったり、親子としての時間を持つことができたのです。
最後は、病気で亡くなったけれど、おじいちゃんは、家族の為に精一杯生きて、一途な思いを貫いた人でした。両親が離婚したけれどやり直して家族が再建できたことは、素晴らしいことだと思います。
魚の冒険 @sakananobouken
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