魚の冒険
@sakananobouken
第1話 プロローグ
今から25年前の事。お母さんに待望の赤ちゃんができました。小さな小さな男の子。お母さんは、その男の子に魚という名前をつけました。魚は、すくすくと大きくなり、屈託のない笑顔で、「お母さんが大好き」と話せるようになりました。お母さんにとって、魚は宝物でしたが、魚の前のお父さんは、悪い病気にかかってしまい、お母さんや魚に暴力を振るうようになってしまい、お母さんは、魚を守って二人で生きていく事にしました。魚が4歳になった誕生日に、前のお父さんは家を出てしまいました。
お母さんのお母さん、魚のおばあちゃんが、お父さんの代わりに家に来て、3人で暮らすようになりました。そして、お母さんに新しい出会いがあり、魚のお父さんになってくれる人が現れたのです。新しいお父さんは、魚を我が子のようにかわいがってくれました。毎日、一緒にお風呂に入ってくれて遊んでくれて、魚に笑顔が戻りました。
そのうち、お母さんとと新しいお父さんは、一軒家を買いました。そこで、魚と3人で暮らすようになりました。そこに、1匹の小さな犬を迎えました。3人と1匹の楽しい暮らしが始まりました。
しかし、お母さんは前のお父さんと同じ悪い病気にかかっていたので、時々イライラしたり、眠れなくなったり、魚に八つ当たりする日もありました。
お母さんも、何故、自分自身の精神が落ち着かないのか、わかりませんでした。
心療内科に行って、睡眠薬をもらって眠れるようになっても、時々自分の身に起こる
他者に乗っ取られるような感覚、二重人格のような自分に、手を焼きながらも仕事に家事に忙しい毎日を送りました。
お母さんのお父さん、魚のおじいちゃんもまた、この同じ病気に長らくかかっていて、魚が小さい頃に亡くなっていました。この悪い病気は、おじいちゃん、お母さん、前のお父さんを含めてそれぞれの人生に平穏を許さず、まるでそれは、一家にかけられた呪いのようでありました。
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