ポクポクストリートチャンク

エリー.ファー

ポクポクストリートチャンク

 おいら、チャンク。

 この街のポクポクストリートで、チャンクをやってるんだ。

 チャンクって、何かって。

 さぁ、なんだろうね。

 でも、きっと大切なもののはずなんだ。

 だって、このポクポクストリートは窃盗、強姦、放火、殺人は当たり前だからね。

 おいらがチャンクを名乗ってポクポクストリートの平和を守るんだ。

 冷静に考えれば、ポクポクストリートが平和だった瞬間なんてないから、守る、というか、取り返す、というか、作り出す、というのが一番正しいんだけど、そういう細かい所を気にしたってしょうがない。

 だって、そうでしょう。

 おいらは、何。

 おいらは、誰。

 おいらは、どうあるべき。

 そう。

 チャンク。

 ポクポクストリートのチャンク。

 えっ。

 何が。

 チャンプじゃないかって。

 何を言ってるのかよく分からないな。

 チャンクだよ、チャンク。

 チャンプなわけがないだろう。

 あっ、そうだ。思い出した。チャンクっていうのは、一番ってことで、王者って意味なんだよ。

 なんだよ、チャンプって、そんな言葉が一番とか王者を表しているわけがないだろう。だって、破裂音じゃないか。どっちかと言えば、腑抜けた音だよ。

 チャンクの方がカッコいいよ。

 ほら、ボクシングのチャンク。プロレスのチャンク。レスリングのチャンク。

 やっぱりカッコいいよ。

 おいらはチャンクなんだ。

 絶対にチャンクなんだ。

 お前らみたいな地元を捨てて、都会の大学に行ったやつとは違って、おいらはこのポクポクストリートを守ってきたんだ。皆が、こんなところじゃ仕事にもありつけない、とか言って逃げた時も、おいらはちゃんと戦ったんだ。

 だから、もう右腕だってないし、左足だってないし、右足の膝も曲がらないし、耳はよく聞こえなくなっちゃったんだ。

 叩かれて、殴られて、蹴られて、刺されて、縛られて、嬲られて。

 でも、戦ったんだ。

 だから、ポクポクストリートを失くすなんて絶対にダメだ。

 ここは、僕が生まれて、僕が生きてきた場所なんだ。

 思い出が詰まってるんだ。

 あそこのお肉屋さんは、確かに嫁いできたお嫁さんとの喧嘩が絶えないけど、小火騒ぎも起きたけどちゃんと開店してる。

 あそこのお花屋さんは、よくない草を栽培して警察の人と喧嘩をしてたけど最後は警察官を追っ払ってポクポクストリートを守ったんだ。

 あっちのコンビニは、元々和菓子屋だったけど跡継ぎがいないからって泣く泣く潰した上に借金まみれだけど毎日笑顔で接客してくれるんだ。

 ポクポクストリートは今日も笑顔で溢れてる。

 そして。

 おいらがいる。

 ポクポクストリートのチャンクと言えば、おいらのことさ。

 おいらは、チャンクっ。

 強いんだぞっ。

 いっつもみんなを助けてるぅ。

 どんなお悩みもすぐに解決っ。

 チャンクは凄いぞっ、凄いんだいっ。

 雨漏りだっ、お任せあれっ。

 あれあれゴミが落ちてるっ、おいらが拾うよっ。

 シャッターを開けてくれないかい、もちろんさっ。

 どんなことでもたちまち解決。

 チャンクが解決。

 チャンクは街が大好きさっ。

 街もチャンクが大好きさっ。

 最高っ、うきうきっ、大丈夫っ。

 皆でポクポクストリートを盛り上げていくんだっ。

 えいっ、えいっ、おおっ。






 うわああああああああああ。

 あああああぁぁぁっ。

 あっ、あっ、あっ、あああああああああああああ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ポクポクストリートチャンク エリー.ファー @eri-far-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ