第46話 僕たちがもらいます
「四天王って……?」
「まー、簡潔に言うと悪いオバケ側の管理者ポジションだね」
四天王の話題になったとたんに、管理者たちの表情が曇る。ラエル2も目線だけフェアの方に向け、静かに話の続きを待つ。
「なぁんでそんな話になったんだぁ? いつ敵が来てもおかしくねぇとはいえ」
「ぴょに! ぴょにおん」
「……ポンカ様の悪い予感ってことか」
みんなに不安げな声で訴えるポンカ様。ポンカ様ほどの実力者ならば、敵の気配も分かるに違いない。そう思えるほどに、強い。
「そう。さっきからポンカ様が不安そうな顔ばっかり。だから、警戒しておいてってこと。今夜はジブンも受付で待機することにするよ」
馬鹿正直に入り口からやって来たオバケを最初にこらしめるのはフェアということか。ポンカ様と同じく炎や光の魔法を使えるから、目くらましには十分すぎる。
「なるほど。それじゃあ俺はオバケたちが休む部屋のあたりを見回りしておく。この世界に来たばかりのオバケが襲われるのはごめんだからな」
「オレは外で獲物探しでもすることにするぜ。悪いオバケの血は絶品だからなぁ」
「ぴょおん!」
てなわけで、ドラゴンはオバケたちの部屋を、舌なめずりするベアボウとポンカ様は外を見張っていることになった。このビルは管理者たちだけのものではない。この世界に慣れない新人オバケもいるのだ。全てのオバケを守り抜くのはなかなかに骨が折れる。
「……僕はサザナミ、だっけ? とお隣だし、同じフロアのオバケを助けてやろうかね。死ぬかも、だけど……」
「はい。出来る限り力になれるように努力します」
僕とラエル2も部屋周りを見張る。今回ばかりはラエル2の実力を頼ってもいいだろう。実力は。四天王のオバケが来てパニックになるって? そんなの知らない。
「よしと。……それじゃあ、くれぐれも気を付けて。無理だけはしないでほしい。特にサザナミクン!」
フェアは語尾を強めて僕の腕をチクチク叩く。
「はい、もちろんそれは承知の助です!」
「キミは大して強くないのに旅のメンバーになっちゃってるんだから! 無理したらダメだぞ!」
「……それはそうなんですけど」
フェアさん、だんだん僕に対する当たりが遠慮なくなっている気が……。
「死ぬほど痛ぇ傷くらったらオレを呼べ! みんなオレの飯だからよ!」
「な、なるほど?」
緊張感はありつつも、平常運転のベアボウは何気に安心材料だ。間違ったことを言っているわけでもないし、信頼できる。
「ぴょん、ぴょにぃ」
みんなの団結を嬉しく思ったのか、ポンカ様はぴょこぴょこ飛び跳ね、おもむろに入り口へと歩いて行った。
「うぉ、ポンカ様! オレを置いていくとはなかなかの度胸だなぁ?!」
それに続いてベアボウも外に出る。
「俺たちも位置に着くとするか」
「そうですね」
「……僕が対処できないくらい強かったらどうしよう……はは……。無理ホント……死にそう……死んでるけど……」
三人でそれぞれの見張りの場所へと向かう。受付に戻ったフェアは、今になって嘆きだすラエル2をジト目で見送った。仲間とはいえ、実力を自覚せずにぐちぐち言い出すのは困りものである。
ここからはお風呂あがりのほかほか気分じゃお話にならない。四天王。ニセコナミ、そしてコナミとも関わりがあるかもしれないオバケだ。
そして何より強い。
僕の目標はいつだって変わらない。足手まといにならない事、そして、死なない事だ。
~???~
「本当にやらなきゃいけないのかな……。いくら四天王でも管理者クラスだと苦戦しちゃうと思うんだけど……」
管理者が警戒を始めるビルのはるか上空で、黒い翼を広げ旋回するオバケがいる。
「うう、やっぱり怖いぃー……。無理難題すぎる……」
「……?! ぴょに」
そのオバケを発見し、攻撃態勢を整えるオバケもいる。とあるオバケが飛んでいたのは空気がとてつもなく薄くなるほど高い場所。しかし見つかった。
管理者の長、ポンカの前では。
「へぇ……。もう見つけたの……。そっちが殺る気なら仕方ないね」
それに気づいたオバケも、戦闘準備に移る。
「……管理者最高戦力が初っ端くたばっちゃあ駄目でしょう。……ねぇ? 『ポンカ様』?」
オバケが翼を何度かはためかせると、その場の空気が凍りつくよう。明らかにオバケの雰囲気が変わった。肺が締め付けられる威圧感。ポンカはオバケをにらみつける。
「いいですね。サザナミの命は僕たちがもらいます」
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