第40話 カァカァカァ
さっきまで僕たちを照らしていた光はもう沈みかけ、ほんのりと光る月が顔を出し始めた。
ライ林から戻ってきた管理者一行がいるここヤシブも、あたたかい街灯が目を覚ます。
最初に来た時と相変わらず大きい街だ。レンガが敷き詰められた道の脇には所狭しと色々な外見の家が立ち並ぶ。ちょっと場所を変えると商店街があったり、遊園地があったり。
ここではきっと、死ぬまでできなかったことができるんだろう。そう、成れなかった自分になれるのだ。
「俺たちのビルを飛び出してはきたが、しばらくはそこを宿にした方が良さそうだな」
「下手に遠出して野宿すんのはごめんだからなぁ。外だといつ悪い奴らが襲ってくるか分かんねぇし」
なんとなく管理者たちのビルを目指して、のらりくらりと歩く。最初こそドラゴンの持論にショックを受けていたフェアだが、歩いているうちに落ち着いてきたようで。
「そうだぞ。悪いオバケだけじゃなくて、君たちも夜になったらジブンに襲ってくるかもしれないし」
管理者とも笑顔を交えて話すくらいには復活していた。
「襲ってくるってぇ? 何言ってんだこいつ。とうとう気がおかしくなったか?」
「黙っておけベアボウ、あまり余計なことを言わない方がいい」
ドラゴンはフェアの言っていることを何となく察したようで、話が発展するのを乱暴に阻止した。うん。僕だってニュアンスくらいは分かる。
ふと遠くに目を移すと、真っ暗な空と灯りの狭間に大きな烏……のオバケが羽ばたいているのが見えた。ゴミ捨て場で見るようなものじゃない。人と同じくらいの大きさだ。
それを見て現世を思いだし、ボケっとしてしまうくらいには疲れ果てていた。
「ぴょにに」
「……んぁ」
そんな僕を心配したのか、横からポンカ様が腕をぺちぺち叩いてくる。
「ぴょにー?」
「だ、大丈夫です。ちょっといろいろありすぎて、疲れちゃって」
「ぴょ」
分かる分かる、と(思っているのかは不明だが)首を縦に振ってくれるだけで何となく嬉しくなる。ああ、多分僕とても結構かなり疲れているんだな。
とりあえず、寝たい。
「うーん、お腹すいたなー。今夜はミルワームでも食べちゃいましょうかポンカ様!」
「ぴょに?! ぴょにー!!」
「お前らマジで頭おかしいだろ」
「論外」
これからも悪いオバケと戦うことになるんだろうけど、こういう何気ない会話が続いて欲しいと思う。くだらないことで笑って、喧嘩して。もちろんオクリさんの弟と僕の妹コナミを探すのが目的なのは変わりない。
この先のことを考えると、そう思ってしまうんだ。
――カアァアアアアアァ ガアアァアアアッァアアアア――
闇に紛れて、烏の声がヤシブ中に響いた。
~次回、四天王編開始~
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