第39話 四天王、集合。
~???~
「本腰を入れようか」
やはり亜空間はよく声が響く。
「このまま奴らの好きなようにはさせたくないしね」
天も地もないただの暗い空間を歩く。わたしの能力のはずなのに、どうしてかまだ慣れない。
この亜空間は「四天王」を呼ぶためにつくったもの。あのイタチ……コナミはまた別の亜空間にいる。
「そう、ですか……。管理者ってすごく強いらしいし、ちょっと不安だな……」
「まあ、そうだね。強いのは本当。だから今手を打っている」
今話したのは、
……だけ。実際はひ弱な烏。戦いのときまでは。
「絶対に戦わないとダメ、なんですか……?」
「そうだね。何のために君たちはここにいるのか忘れたの?」
「……また、あっちの世界に戻るため、です」
ハナタはすぐにわたしに怯える。
そう。わたしについてきているオバケはみーんな、「生き返りたい」と思っている。そこに付け込む。「わたしに味方してくれれば、人間の命をあげる」と。
すると面白いくらいに食いついてくる。きっとそんなことあり得ないと思っていたんだろうね。少しでも希望が見えると頼りたくなるのは必然か。
でも、申し訳なくなるけど、わたしはあんたたちを生き返らせる気はさらさらないよ。
わたしが生き返らせたいのはコナミ、そしてわたし自身。
二つの命が奪えるまで、希望を持ち続けてほしいものだね。
「……シャイトたち、どうスル?」
無機質な声。
ハナタのすぐ隣に現れたのは、シャイトというロボットのオバケ。縦に長い楕円形の瞳が怪しく光る丸い頭からは、ツインテールじみた二本の突起が伸びる。
さらに頭の下にある小さな胴体は丸みを帯びていて、白いマントがそれを包み込む。
最後に、全体には折れ曲がったこれまた白い直線がペイントされている。
シャイトの色が灰色なせいで、真っ暗な亜空間では若干見にくいね。
「そうだね。……まあ、戦うことにはなるだろうね」
「それはソウ。だけど、いつ、どこデ?」
「みんなが集まったら話そう」
そう言ったっきり、シャイトはピクリとも動かずにその場で立ち尽くした。ロボットだから不自然ではないけど、不気味なのは否めない。
「あんの管理者たちとあっしら四天王がガチバトルってかぁ。なかなか熱くなってきたんじゃあないの?」
「えぇ……?! どこが熱いんだよこんな争い……。僕たちが傷つくだけじゃ……」
「ハナタ、黙ってなぁ。ようやく生き返れる機会ができたってもんよ」
「……そう、だけど……」
ハチの見た目して音もなくやってきたのはミャチメン。色々と態度が軽くて掴みどころのない男だ。まあ、ハチだけれど。
「あまり期待はしない方がいいよ。それに、勝てるものだと思い込むのもやめた方がいい」
どうせあんたたちは一生この世界にいるのだから。
ミャチメンはわたしの心の内を察したのか……いや、ただわたしの発言を不満に思っただけだろう。自慢の羽をブンブンとはばたかせた。
「珍しいねぃ、あんたさん程のオバケがそこまで用心するなんて」
「……わたしが前に戦った時よりも手ごわそうだからね」
前。この世界に来た類まれなる人間、ドラゴンを殺すために戦ったとき。管理者はフェアと、ベアボウ、そしてポンカの三人だった。ベアボウとやらが言っていた「ドラゴン合戦」というやつか。
正直、相手にもならないと思っていた。もちろん、管理者たちが弱すぎて。
でも、わたしの予想をあいつらは裏切った。いや、あいつら、というよりも、「ポンカが」、と言った方が正しい。
ポンカはアルビノで日光に弱いせいか、滅多に姿を現さなかった。おそらくわたしと戦う直前まで屋内でぬくぬく過ごしていたのだろう。だから本調子ではなかったのか、能力は使ってこなかった。
使ってこなかったのに、わたしたちは負けたのだ。
「ポンカの能力は厄介だ。何をされても死ねないオバケを、封印することで実質殺してくる」
「……ほんとにやるんですか……? 僕もう耐えられないんですけど……」
いつもびくびくしているハナタだが、死んでしまうことに恐れをなすのは無理もない。わたしだって怖いもの。
「でもやるんでしょう?」
「……そうだね」
ハナタにとどめを刺すように余裕たっぷりで現れたのは、黒い長髪が腰あたりまで伸び、一房を三つ編みにしている鬼のオバケ。ほとんど人間のような見た目だが、頭には二本の赤い角が生えている。
「いくら管理者が強いと言ったって、綺麗な血しぶきをあげられることには変わりないんだから」
名前はクロテル。膝より上の極端に丈の短い深紅の着物に、黒いシロツメクサの模様が美しい。耳に光るのは四つ葉のイヤリングだ。
「とりあえず、最低限の四天王は揃ったね」
ひ弱な烏人間のハナタ。
「僕は戦いたくないんだけどなぁ……」
ツインテールロボットのシャイト。
「もう覚悟はしていル」
よく分からないハチのミャチメン。
「あっしも久しぶりに頑張ろうかねぃ」
「人間の
この四天王は管理者とも渡り合える実力ではあるだろう。どれも戦いに長けた者ばかりだ。
「さて、じゃあ話そうか」
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