ライ林編
第27話 こっちの戦力
その後、ミャルメンは礼儀正しく別れを告げ、レンガ道を走って行った。
「おいそこの二人!」
ミャルメンを見送り終わった瞬間、フェアはベアボウとドラゴンの取っ組み合いの仲裁に入る。
「いつまでくだらないことしてるんだー。ジブンたちはもうライ林に行くんだぞー」
「俺は悪くない。この頭にすぐ血がのぼる熊が」
「そらぁお前のせいだろうが!!」
……もう見慣れた。見慣れすぎた。
フェアは武力で止めにかかるらしい。二人の中に突っ込んで行き、怪我なんかお構いなしに炎を吹き散らかす。
何度見てもフェアの炎は輝かしい。魅せる魔法といったところだろうか。敵だとしても美しさに見とれてしまうかもしれない。
でもね、ここ街中なんですよ。うん。今はあんまりオバケがいないから助かってるけど、ね!
とりあえず取っ組み合いはフェアに任せて(申し訳なく思ってますよフェアさん!)、気になっていたポンカ様の方に行ってみる。
「ポンカ様ー」
「ぴょ?」
うつむいていたポンカ様は僕に気づくと、パッと顔をあげた。
「僕が言えることでもないんですけど……不安な事とかあったら、遠慮しなくてもいいと思うんです」
「!」
大きいピンク色の目が見開かれた。やはりこの僕、結構勘が当たるのかもしれない。思い違いじゃなくてよかった。
「ぴょにに……」
ポンカ様がこんな風になったのはいつからだ? スパゲッティが美味しくなかった? いやそんなことでへこむポンカ様じゃないしな。
ライ林の話をしだしたときか? そこにいるオバケにトラウマでもあるのかも。でもな、ポンカ様が恐れるオバケがそこらにいるとは思えないんだよな。
「ライ林に強すぎるオバケがいる、とかですか?」
「ぴょにぴょに」
ふい、とそっけなく視線をそらされてしまった。さすがにポンカ様をなめすぎか。一応プライドはそれなりにあるらしい。
「な、なんかすみません」
「ぴょにに!」
分かればいいのだ、と言わんばかりに葉っぱの傘を揺らした。
いよいよ分からないんだが。
……そのほかにあったことといえば?
「いや……まさかな」
心当たりがないわけではない。だけど、信じがたいし、信じたくない。ポンカ様と馬が合わないだけかもしれないし。そうだと思っておきたい。
「ぴょにおん」
ポンカ様は僕の心の内を察したのか、にこ、と笑ってフェアの方に走って行った。やはりポンカ様は僕と住んでいる次元が違いそうだ。僕の考えている事なんかお見通しらしい。
「あ、ほらー、ポンカ様も止めに来たぞー! とっととライ林行くんだからー」
「ぴょにー!」
「げえ?! ポンカ様にギッタンギッタンにされるのはごめんだぜ?!」
「ほら見ろ、すぐにやめておけばよかったのに」
ポンカ様は何度かベアボウをぺちぺち蹴ると、背中をずず、と力づくで押し始めた。
「わ、わーかったからよ、もう蹴んのはやめてくれよな?」
「ぴょーに」
ベアボウとドラゴンの顔はほんのりススで汚れている。……あ、さっきの炎のせいか。なるほどそれは仕方がない。自業自得とも言うけど。
とにかく今はライ林の悪いオバケを退治すること。それに尽きる。あまりミャルメンを待たせるのも酷だし、ちゃっちゃか行ってしまうとしよう。
まとまりは皆無に等しいけど、みんな実力は本物だから。
???
うん。うまくライ林に仕向けたね。
二人の命を奪うためには無駄なオバケをどうにかしないといけない。
でも、無駄と言えるほど弱くはない。
……こっちも、戦力を整えておくとするかな。
「コナミ。……」
コナミを戦いに出したらどう感化されるか分からない。命を奪う直前に
「シュルルン、シュルル……」
相変わらずコナミは落ち着きがない。お兄ちゃんを探しているんだろうけど、出れるわけがない。わたしが逃がすわけがないから。それはコナミも分かっているはずなのに。
……まあいいか。いつかは諦める。
「ナオ」にでも話を通しておこう。
あのオバケなら、管理者たちを苦しめることもできるだろうしね。
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