(6)

「おれたちはお前さんよりも前に、この世界に転生しているからさ。もう1ヶ月、いやそれ以上いるかもしれない」


わたしは息をのんだ。1ヶ月も謎の世界にいるなんて!


「もう気づいているだろうが、この城にいる全員が日本からやってきたんだ。星空の下でカミサマから本を貰って扉をくぐり、目が覚めたら【他人の姿】と【役目】を与えられてこの城にいたのさ」


なるほど! だからお城の人たちの態度や言葉づかいに違和感があったんだね。


「この本はいわばお芝居の【台本】だからな。城の人間をよく見てみな、いつでも自分の役目を確認できるように、本を携帯しているやつもいるよ」


「なるほどなあ。それにしても、悪役令嬢は重要そうなキャラクターなのに、わたしだけが遅れてこの世界に参加したなんてね」


カミサマもおっちょこちょいなんだ。なんて冗談めかして笑ったら、狩人は困ったように眉をしかめた。


「実は昨日まで別の悪役令嬢がいたんだよ。外見は今のお前さんとまったく同じだが、演じている中身が別人の。確か20代だって本人が言ってたか。結婚式を挙げる予定だったんだとよ、めでたいねェ。……それが、あんなことになるなんて」


「え?」


「誰かに殺されたよ。昨日の夜、中庭でナイフを突き立てられた遺体が見つかったんだ」


「え? え?」


「どうしていいかわからないおれたちは、城の裏庭に彼女の遺体を埋めた」


「ちょっとあのッ」


「それが、今日になったら死んだはずの女が元気に歩いているときたもんだ! いやァ、たまげたねえ。……つまりお前さんは、この城に2番目に来た悪役令嬢ってことさ」


「はあー!?」

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