(5)

「「――めでたし、めでたし」」


わたしと狩人の声が揃った。


「瀬田ましろ――つまりわたしの演じる悪役令嬢が、この物語を引っ掻き回す存在なんだ。うわーわたしって悪いニンゲン! でも、誰も死ななくてよかったですね」


「……まあ本の中ではそうだなァ」


なぜか狩人は歯切れの悪い返事をする。


疑問に思いつつも、わたしは本を読み進めてメインとなる部分に目を通す。


悪役令嬢の台詞にはご丁寧にも黄色いマーカーが引かれているけれど、ニャルがわざわざ引いたのかな? そう考えるとほほえましい。


それでわかったことだけど、わたしの出番は午後3時に王子とお茶会をするシーンと、午後7時からのパーティーのシーンがメインみたい。


「本の1ページ目に『あなたの役目を果たしなさい』ってあったけど、どういう意味かわかりますか?」


「それが一番重要な部分だろう。お前さんは悪役令嬢らしい振る舞いを。おれは手下の狩人らしく振る舞わないといかん。そうしなきゃ元の世界に帰れないのさ」


「この【世界】はなんなんですか?」


「【カミサマの創った箱庭】じゃないかとみんなは言っている」


「わたしたちはなんのためにこの世界で【物語を演じる】んですか?」


「【カミサマを喜ばせるためだろう】とみんなは言っている」


「どうして狩人さんはそんなに詳しいの?」


「それはなァ」


そこで狩人は言葉を区切った。すーはーと一度深く呼吸をしたあとに、努めてやさしい声色で言葉を紡ぐ。

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