(3)

なんかさっきの王子にも、声が違うって言われた気がするなあ。


含みのある発言が気になりつつも、男の向かいの席に座る。


テーブルにはわたしが持っているものと同じ本が置いてあった。ただし色が違う。持ち主である男の髪と同じ桃色の本だ。


「この真っ白なのがわたしの本。星空の下でカミサマから渡されたんです」


「もう読んだかい?」


ううんと首を横に振ると、男は自分の本を開いて見せてくれた。


【狩人――蓮沼蓮次】


「はすぬまれんじ? これがあなたのお名前で、役目は狩人なんですか?」


「ああそうだ。台本にはこう書いてある。『狩人は悪役令嬢の手下であり、伯爵令嬢を殺すように命令される』とな」


「え?」


「つまりご令嬢様、お前さんがおれにライバルを殺すように命令するのさ」


「えー!? お断りします!」


「ははっ、それはおれのセリフだ。まあ実際には殺さないから安心しなよ。お前さんの本にも書いてあるはずだから読んでごらん」


そう言われて自分の本を開くと、【物語のあらすじ】と書かれたページを読む。

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