(2)

「お城は洋風で金や花で飾られているのに、な~んか庶民的な雰囲気なんだよね」


初めて来た場所なのに妙に居心地が良いのはなんでだろう? そして、わたしが通ると「あっ」とみんなが振り向くのはどうしてだろう?


「わたしが悪役令嬢だから嫌われている……ってわけじゃないよね」


うーん、突然殴られたり暴言を吐かれたりしたらどうしよう?


その時だ。気にも留めずに通り過ぎようとした部屋の中から、ずいぶん渋い声で「よう悪役令嬢さん、お目覚めかい?」と声をかけられた。


「うぇっ!? どなたですか?」


驚いて変な声が出ちゃった。わたしの目覚めた部屋よりも狭くてシンプルな部屋。中央には木製のテーブルと椅子があって、そこに腰かける男がいる。


声を聞いて、てっきり高齢の男性だと思ったら、そこにいたのは意外にもパパと同じ30代くらいの人だった。それよりも、だ。


「髪なっが!」


男の髪は桃色で(それもだいぶ驚いたけど)うんと長かった。後ろで一つ結びにされた髪は地面につくほどの長さがあってヘビみたいだ。どう見ても邪魔すぎる!


「長いよなァ、おれもそう思うんだが切っても元に戻っちまう。ここはファンタジーの世界だからな。おれはそういうキャラクターなんだろう」


「ファンタジー? ここがどこか知っているんですか?」


「今日のご令嬢様はいつもと声が違うな……ああ、なるほどそういうことかい。まあ座んなよ」

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