(7)
「スマホでも広告を見かけたなあ。『悪役令嬢がヒロインにイジワルして、王子様を奪おうとするも失敗に終わる』んだっけ? お約束の展開だから読んでなくても知ってるもん」
部屋を見回すと、火のついていない暖炉の上に装飾がされた置時計があって、午前10時を示している。
「とりあえず、この本を持って外の様子を見に行こう」
本の中身も気になるけれど、次に誰がやってくるかわからない部屋でのんびり読んでなどいられない。
今までは何が起こっても、まあ夢だからねと余裕ぶっていられた。それが、「実は現実だったんです」だなんて言われたら、いくら神経が図太いと言われるわたしだって笑えないのだ。
カミサマのニャルはなんでこんな世界にわたしを導いたんだろう? ともかく、これはたぶんとても大事なものだからと両手でグッと本を抱え込む。そして、部屋の外に出ようとして気がついた。
「そういえばネグリジェのままだった。着替えたほうがいいかな?」
その時だ。突然数人の女性たちがどやどやと勢いよく入ってくる。
「ああ、お嬢様お目覚めで!」
「わたしたちは使用人です。王子様からお嬢様が目覚められたと聞いてやってきました!」
「寝巻のままではいけませんから、早速衣装を着替えましょう!」
その勢いに圧倒される。
「……わお」
この夢……じゃない現実は、驚くことばかりだ。
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