(5)

「……なんでもない。目が覚めたお前が混乱しているのではないかと様子を見に来たが、案外平気そうだな。図太いやつだ」


「まあ、おかげさまで」


イケメンくんはさっきのわたしみたいに、きょろきょろとあたりを見回す。そして、隣室にあるわたしが寝ていた豪華な天蓋のベッドに向かい、何かを手にしてまた戻ってきた。


「枕の横にあった。この本は大事にしろ」


そういって手渡してくる物を見て、わたしは「あっ!」と声が出る


「ニャルからもらった本! お部屋に夢中で気づかなかった」


「ニャル? まさかカミサマの名前か? 猫みたいで意外な名前だな」


それよりも、あのうさんくさい男がカミサマのほうが驚き。この夢ではそういう扱いになっているんだ。


「まあいい。それよりも、この本にお前の【役目】が書いてあるから、それに従え」


「役目?」


そういえばまだ読んでなかった。本を開くと、1ページ目には次のように書いてある。


『あなたの役目を果たしなさい』


何これ? そして、2ページ目にはさらに次のように書いていた。


【悪役令嬢――瀬田ましろ】


わたしの名前だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る