(3)

部屋は高い場所にあって見晴らしがいい。


気持ちのいい風が吹く中で下に目をやれば、手入れのされた花の咲き乱れる美しい庭園がある。その向こう側には、高い塀が長く敷地をかこっているの。塀の先には木々の緑が広がっていて、さらにその先には大きな街が見える。


そして気づく。


「ここお城だ! そりゃあ見晴らしがいいにきまってるよ!」


白い壁に青い屋根、まさに絵本で見た西洋のお城にわたしはいるのだ。一度は行ってみたいと憧れていたけれど、その願いが叶っちゃったなあ。


「それにしても、この夢からどうやって目覚めればいいんだろう? マンガでは、高いところから飛び降りたら目が覚めるんだけど……」


いつか読んだギャグマンガに、そういう演出があったのを思い出す。高いところから飛び降りて地面に激突するー! ……と思ったら、それは夢の中のお話で、目が覚めると自宅の布団の上だったってオチ。


バルコニーの手すりから下をのぞくと、さすがにちょっと……いや、だいぶ怖い。


「さすがにここから飛び降りるのはなあ」


「やめておけ、死ぬだけだ」


「う~ん、夢だから死ぬことはないんじゃない? ってわっ!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る