第56話 俺襲撃事件2
【俺襲撃事件2】
「え?」
街を散歩していたときのことだ。
人通りがなくなったと思ったら、俺の脳内に突如警報が鳴り響いた。
すぐさま起動する気配察知スキル。
「集団で囲まれた!」
俺は数名の襲撃者に囲まれたことを察知した。
「おわっ!」
突如、奴らは攻性魔法をぶっ放してきた。
と思うと翻って逃げていく。
直後、鳴り響くアンチ魔素フィールド警報。
「させるか!」
魔法攻撃は結界魔導具及び俺の魔法耐性の高さでびくともしない。
俺は、奴らのうちの一人を追いかけた。
俺の気配は切ってある。
数ヶ月前に見たような光景だ。
前回は高級住宅街に逃げ込んでいった。
今回は貧民地区である。
「(おや、下水道に入っていくのか?臭くてかなわんな)」
王国の街で貧民地区まで下水道の完備している場所は他にない。
ラ・シエル街が非常に古くから繁栄していることの証だ。
「(うげっ、奴らのアジト、本当にこんな場所にあるのか?)」
下水道は街全体に張り巡らされているが、機能しているとは言い難い。
ところどころゴミが堆積しており、汚物で淀んだ場所が多い。
下水道は高さ2~3m,幅3mほどのかまぼこ型の水路だ。
両脇が歩けるようになっている。
奴はグニャグニャと迷路のような場所を迷うことなく進んでいく。
暗いのに、よく見えるもんだ。
ああ、俺は魔素フィールドスキルのおかげで、夜目が利く。
すると、比較的キレイな場所に出た。
臭いもあまりしない。
その奥に扉がある。
その前で男は何やら聞き慣れない言葉を話す。
暗号であろう。
「グッ」
俺は奴の首筋を叩いて気絶させた。
そして、慎重に扉の中に入る。
「首尾は上々か?」
中の男がそう問いかけてくる。
奴は前世アメリカの差別主義者のような
白装束で頭部全体を覆う三角白頭巾を被っている。
「グワッ!」
俺は無言で奴のところに瞬時移動すると、パンチを繰り出した。
ノックアウトさせて、縄で固く縛った。
◇
「ううう」
「おい、目が覚めたか」
「うう!」
「あのな、この部屋は捜索させてもらった。自爆装置は破壊した。おまえの魔導具も取り上げた」
「うう!」
「今から猿ぐつわを外す。いろいろ聞きたいことがあるからな」
俺が奴にかませてある猿ぐつわをはずすと、
「ウガッ!」
突如、口から泡を吹き出して目を向いて倒れた。
周囲には甘酸っぱい臭いが。
「しまった、こいつ毒でも飲みやがったな!」
推測するに、歯にカプセルでも埋めてあったのだろう。
ひどい呼吸障害をおこし、慌てて回復薬をかけたが、
俺の用意した回復薬は毒にはあまり効かない。
1分も経たずに三角頭巾野郎は絶命した。
「くそっ、徹底してやんな!」
俺はあとをつけてきた襲撃者のもとにかけより、
猿ぐつわを厳重にカマして、毒を噛めないようにした。
「(どうしたもんか)」
奴も厳重に縄で縛ってある。
だが、不用意に覚醒させられない。
「!」
すると、再び俺の脳内に警報が。
誰か近づいてくる!
俺がゆっくりと扉に近づき、外をうががおうとした瞬間だ。
「ズガーン!」
突如、爆発を起こし、俺は部屋に埋もれてしまった。
「クソッタレ!」
幸運にも俺には被害はなかった。
自分に結界をかけてあったからだ。
縄で縛った襲撃者は。
崩れたレンガに埋もれている。
おそらく爆破の強さから助からないだろう。
では、爆破を決行したものはどこにいるのか。
うわっ。
とても伝えられない。
どうやら、自爆したようだ。
なんで、こいつらは自爆が好きなんだ。
俺は崩れたレンガをどかしつつ、なんとか部屋から這い出た。
◇
俺は家に戻ると顛末を父ちゃん・母ちゃんに伝えた。
「例の狂信者どもか?」
「おそらく。白装束で頭部全体を覆う三角白頭巾を被っていた」
「その恰好な。冒険者ギルドのジャックから話をされたことがあるぞ」
「ほお」
「王国で狂信者とされる集団。筆頭に挙げられるのが、『神皇の子供たち』」
「教会系?」
「と推測されている。ここ1年ほどで急速に名前が知られるようになった」
「秘密組織か」
「名前と格好以外は全く不明の組織だ」
「秘密組織なのに、名前と格好はわかっているんだ」
「元々、教会の自衛部門だったんだ。その性格上、闇を受け持つことも多いようで、昔から不気味がられていた」
一部の教会は、以前から評判が悪い。
ヤクザ顔負けのようなことをしていると言われている。
「そいつらが闇の活動をしているという証拠とかがあるのか?」
「証拠はほぼないと言ってよい。いくつかの状況証拠と推測だけだ」
「すぐに自爆するしな」
「それが奴らの行動をわからなくさせる原因の一つということだな。危なすぎて、誰も正体をさぐりたくないんだ」
「ああ、わかる。今回でも俺じゃなかったら即死してたはずだ」
「教会か。やっかいだな」
「教会がなんで出てくるんだ?」
「生徒会選挙の闇について話し合ったことがあるよな」
「ああ」
「正面にいるのは守旧派で、主に貴族だ」
「うん」
「だがな、その背後にいるのが教会なんだ」
「!」
「守旧派の本当の親玉は教会で、王族も貴族も教会の下僕に過ぎない」
「本当なのか?」
「これは意外と王国では知られていない。知る人ぞ知るってやつだ」
「そうなのか」
「教会はこのところ荒っぽい真似が目立ち始めている。今回もおまえは結界スキルのおかげで助かった。だが、他の人たちにはダンジョンの外に出たらほぼ無力だ」
「いちおう、俺たちの関係者には攻性魔導具を所持してもらっているが」
「うむ、結界魔導具も必要だな。できれば、体の表面を覆うような」
「以前、ロレーヌが教会の結界内で保護されて登校してた。あれは強力な結界だが、半径3mには登録された人以外は弾き飛ばされる。あんなだと日常生活に差し障りがあるもんな」
「ああ。オレたち家族4人、お前の友人、オレの仲間たち、彼らに結界魔導具を配備させよう」
「魔石はじゃんじゃん使ってもらって」
「私達には魔石はうなるほどあるものね」
「じゃあ、相談しにガリエルんとこに行くぞ!」
◇
ガリエルさんに相談し、
オンオフ可能の基本的に常時稼働型の結界魔導具を作ってもらった。
普段使いでは体の表面を軽く覆う結界、
いざとなれば数m範囲の結界を展開する。
省エネ型でゴブリン魔石で数日動く。
ちなみに、以前ロレーヌを守っていた結界は、
ホブゴブリンの魔石で数時間しかもたなかった。
できた魔導具は順次、俺たちの関係者に渡していった。
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