第46話 夏休みは農業関連で大忙し

【夏休みは農業関連で大忙し】


 俺たちはほぼ毎日ダンジョンに向かう。

 でも、1日中潜っているわけじゃない。

 数時間ほど集中して魔物を討伐している。


 レベルを上げるのが目的じゃない。

 実力をつけるのが目的なのだ。

 だから、一戦一戦非常に疲れる。

 数時間が限度なのだ。


「ふうー。夏にこのジュースは最高だな」


「ほんと。味もオレンジ、グレープ、アップルとあるし」


「あと、ライチ、グレープフルーツ、マンゴー味を準備中」


 俺とマノンの会話だ。

 流石に魔石ドリンクの話は関係者以外に聞かせられない。

 ロレーヌたちはこの件では部外者になるからだ。



 昼食を食べドリンクを飲んだ後は、バジルさんと打ち合わせの毎日だ。

 バジルさんは父ちゃんの旧友で、元冒険者、今は大規模農家。

 魔石肥料・飼料を試してもらっていた。


 それが5月頃だった。

 ちょうど、夏収穫の作物のベスト施肥シーズンだったことから、

 連日の作業で忙しかったのだが、

 ここ最近は秋収穫作物の最後の施肥タイミングであり、

 来年収穫する越冬種の発芽シーズンの最初の追肥でもある。


 

 話を聞くと、肥料は作物によって

 施肥のタイミングや回数などが違うという。


 小麦だと、種まく前に1回。

 発芽したあとに3回。

 それがベストだという。


 そのタイミングをはずすと効果がなかったり、

 マイナスの効果を生むことさえあるらしい。


 ただ、王国でバジルさんほど豊富に肥料をまく農家は数少ない。

 だから、バジル農産物は元々評判も高く、生産量も多い。


 そのバジルさんいわく、

 魔石肥料にはタイミングを外してもそれなりの効果がある。

 収穫直前でも施肥すると味が少し良くなる。


 もちろん、収穫が増えることはないし、

 実が大きくなるわけでもないが、

 他の肥料だと無駄だったり、実を駄目にしたりする。


 もちろん、ベストなタイミングで肥料を与えると、

 今までの数倍の効果をもたらしてくれる。



 バジルさんは、もう魔石肥料に夢中だ。

 さすがに全農地に魔石肥料をまくことはないが、

 すでに半分の農地には魔石肥料を撒いている。


 これで効果が確実なものと分かれば、

 全量、魔石肥料に切り替えると言っている。


 それと、バジルさんは農業仲間に積極的に宣伝してくれている。

 もちろん、仲間は反守旧派というか、

 政治的・宗教的に色のついていない人を選んでいる。


 口コミもそういう人を選ぶように、指導もしてくれる。

 魔法契約書を使っているので、安心ではある。


 で、新たに魔石肥料・飼料を試す人が増えてきた。

 大好評で増産が追いつかない。

 かなりのウェイティングができている。


 

 口コミはギルマスのジャックからも届いている。

 ジャックは髪の毛が生えてきてからは、より積極的に協力してくれる。


 ハゲ仲間もジャックの口利きで少しずつ治してもらっている。

 ジャックは仲間からは髪いや神と崇められているそうだ。


 もちろん、ジャックの仲間優先だ。

 つまり、元冒険者が中心となる。

 みんな夫婦円満になる。



 それから、ガリエルさん製造の農機具魔導具。

 原動機の試作機ができつつある。


 バジルさんが大喜びで使い倒している。

 それを見たバジルさんの仲間からも矢のような催促がある。


 いや、肥料を含め、仲間以外からの問い合わせや注文が

 殺到しつつあるが、こっちはすべて断っている。


 魔石肥料、飼料、防除薬の販売は農家契約単位でしている。

 スポット的な売り方はしていない。

 生産体制の問題から需要が不安定なのを嫌うためだ。

 というのはただの言い訳で、

 生産が間に合わないのと、本当は客を選別しているのだ。



 不具合はどんどん改良されていく。

 ガリエルさんもバジルさんも、大忙しだ。

 でもニコニコで働いている。


 ガリエルさんは工場を倍に広げるようだ。

 さらに、ドワーフ仲間に下請けに出して、生産規模の拡大に励んでいる。

 


 契約は父ちゃんがやっている。

 冒険者ショップの経営者なのか農業関連営業マンなのか判然としない。



【農産物】


 さて、俺的にはマヨネーズが欲しい。

 俺は無茶なマヨラーじゃないが、前世にあった調味料がいくつか欲しい。

 その中でてっとり早く手に入れられそうなのが、マヨネーズだ。


 作るのなら、最高級マヨネーズを作りたい。

 実は、俺は前世で調理学校に通ったこともある料理好きだ。


 高校のときに天涯孤独の身となり、それからは10年以上自炊していた。

 凝り性なこともあり、料理の腕は結構なもんだと自己判定している。



 マヨネーズは植物性オイル、卵、酢が主要な素材だ。

 でも、それだけではさっぱりしすぎる。

 追加で砂糖、辛子、塩、胡椒、柑橘類などを入れる。


 化学調味料を少量入れると味に切れが出るのだが、この世界にはない。


 植物性オイルでマヨネーズに合うのは、極力、味の素直なもの。

 ごま油やオリーブ油といった味に主張のあるものは、

 マヨネーズにすると味がかなりきつくなる。


 今回はひまわり油にする。

 ただ、ひまわりは連作障害や病気障害を起こす。

 だから、マメ科の大豆、アブラナ科の菜種の生産も計画している。


 ブレンドしてサラダオイルにしてもいいかもしれない。

 味が安定するからだ。


 酢はリンゴ酢。ぶどう酢でもいい。

 これもすっきりとした味であること。

 酸味がまろやかであることが条件だ。

 果実酢らしいほのかなフルーティさもグッド。


 そこに卵。

 卵黄だけでもいいのだが、全卵でも構わないと思う。

 好みの問題だ。

 卵黄だけだと味がかなり濃厚になる。

 全卵だとさっぱりしている。


 魔石飼料による鶏卵は誠に素晴らしい。

 こんもりとした卵黄、味が濃く、しかも臭みがない。

 素晴らしい出来の卵となる。


 これに砂糖、辛子、塩、胡椒、柑橘類を入れて、

 目標はQ○マヨネーズだ。

 個人的には前世のどのマヨネーズをも上回る。


 この世界の人は一旦このマヨネーズを味わうと、

 マヨネーズペロペロが止まらなくなる。

 俺も一緒にペロペロしている。



 あと、腐敗防止用のバイオ魔導具を作った。

 もとは黒魔法のバイオだ。

 ものを腐らせる魔法である。

 ガリエルさんと共同で式を変形させてアンチ・バイオ魔法を完成させた。


 なぜか、聖属性か無属性持ちが扱うことができる。

 これで、日持ちがよくなった。

 夏でも日陰においておけば、一ヶ月ぐらいは大丈夫そうだ。


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