第45話 私はアスタシア

【私はアスタシア】


 私はアスタシア。

 山奥の農家の出。


 隣の家まで歩いて1時間ぐらいかかる程度の田舎。

 そんなだから、私は野山を駆け回っていたわ。

 家の敷地内だったけど。


 遊び相手は友達。

 家で働いている人の子供ばかりだった。

 一人遊びも多かった。



 小さい頃から美形だとは言われていた。

 近隣に知られた子だったと思う。


 でも、その御蔭で大変だった。

 つきまとわれるぐらいならまだいい方。


 結婚の申込みが殺到するのよ。

 まだ10歳ぐらいでも。


 それも、50歳越えてる人とかから。

 私のおじいちゃんと同じぐらいの年齢で私に結婚を申し込んでくるの。


 もう、びっくりよ。

 鼻や耳から毛をはやしたようなおじさんが私をいやらしい目で見てくる。

 おぞましくてブルったわ。


 でも、それを誰もおかしく思わない。

 田舎はそういうもんなんだって。


「(やばい)」


 子供心にも危険を感じたわ。


 だから、私は村を離れる決心をした。

 それからは必死に勉強したわよ。

 田舎だから教育環境を整えるのは大変だったけど、

 中学では図書室にいろいろ揃っているし、先生方も応援してくれた。

 本当に皆さんには感謝してる。



 お陰で、私は王国一番とされるアカデミーに合格した。

 それも首席で!


 頑張ればどこかのお役所に行けるかもしれない。

 そしたら、普通に恋愛して、普通に結婚して、

 普通に家族を作っていく。


 よかった。

 昔からの願いがかないそう。



 と思ったんだけど、私の入ったクラス。

 A組。

 貴族とかのご子息様ばかり。

 田舎者の私はびっくり。


 やっていけるか、心配だった。

 でも、お友達はすぐにできた。


 ライリーっていう男の子と、

 ロレーヌっていうきれいな女の子。


 ホッとした。

 ロレーヌは私と同じ庶民出身。

 ライリーは貴族の家の子なんだけど、新貴族っていうの?

 お祖父様が冒険者っていう家系で、ちょっと他の人達と違うらしい。


 二人共私と同じような疎外感を感じていて、

 それもあってすぐに仲良くなった。



 転機になったのは、ジョエルとの出会い。

 ロレーヌがダンジョンレベルをあっという間に上げたのを見て、

 私とライリーも彼を紹介してもらった。


 私達は入学試験の結果は良かったのだけど、

 ダンジョンレベルはA組の中では最低クラス。

 ダンジョンレベルは入試に関係なかったからね。


 ジョエルは背はあまり高くなく、小太りな少年だった。

 小太りでもぶよぶよした感じはなく、

 筋肉が詰まってるような体型だった。


 おかしかったのは、彼の第一声。


「あ、相まみえることができまして、ま、ま、誠に光栄至極にございます。や、僕(やつがれ)はジョ、ジョ、ジョエルと、も、もうします」


 なんだか古風な言葉を混ぜて挨拶をしてきた。

 真面目なのか冗談なのかわからない。


 さっそく周りから突っ込まれていたけど。

 私が普通にして。っていったら、


「そう?じゃあ、アスタシア。これでいいかな。俺のこともジョエルで結構」


 ですって。

 なんていうか、気持ちのすごく安定している人だった。


 この後いろいろ驚くんだけど、まずは彼の家族。

 ご両親がイケメン&美人。

 特にお母さんは超美人。

 キレイかわいい系の人。


 ロレーヌ曰く、この街の大人ならたいてい知ってる有名人らしい。

 むかし、冒険者で名を上げたのだけど、

 アイドル的な人気があったという。


 それから、マノンちゃん。

 彼の妹は超絶可愛かった。

 あった瞬間に抱きしめたくなるほど。



 で、レベリングをお願いしてダンジョンにいったのだけど。

 あっという間にレベルが上がっていった。


 これがパワーレベリングというやつか。

 田舎でも似たようなことをしたことがあるけど、レベルが違う。


 9階とかでのレベリングなんか、

 ロレーヌとマノンちゃんの後ろで周囲の警戒をしているだけ。

 それだけでどんどんレベルが上がっていく。



 すると、私に驚くべきことが起こった。

 私の属性は水。

 ところが、私に2つ目の属性が現れた。

 白魔法。


 普通、複数の属性が現れるのは良くないとされる。

 お互いの属性が邪魔し合ったりするからだ。

 

 でも、お互いに補完し合う属性もある。

 それが水属性と白属性。

 あわせ技で聖魔法が発現した。


「アスタシアお姉ちゃんの聖魔法のほうが私より強力」


 マノンちゃんも属性は聖だ。

 しかし、マノンちゃんはどちらかというと聖剣スキルが得意。

 聖魔法はさほど得意ではないようだ。


 それと、私のは水と白のあわせ技で聖魔法になったことで、

 通常よりも魔法が強力になるということらしい。



 私は結局9階でレベル13ぐらいまであげてから、

 10階制覇。

 そこもジョエルたちが攻撃に参加してくれて、

 ほぼワンパン撃破。


 ジョエルは現在レベル19だっていう。

 私達と極端に違うわけじゃない。


 でも、体感するレベル差はそんなもんじゃない。

 だって、彼の動く姿を捉えられない。

 なにか体が霞んだ、と思ったら敵が倒されている。


 マジックみたいだ。

 彼によると、拳で殴っているらしい。

 たかだがレベル差が5ぐらいしかないのに、

 そんなことってある?


 これは私だけの感想じゃない。

 ロレーヌやライリーも同じだ。


 マノンちゃんいわく、

「お兄ちゃんの強さはレベル30に近い」

 らしい。

 どうして?と聞いても、そういうもんだ、と言われた。


 

 レベリングは11階で再開された。

 レベルは15まで引き上げられた。


 そうやってダンジョンでレベルを上げている間に、

 ダンジョンの外では立て続けに事件が起きた。


 まず、ロレーヌが狙われた。

 次に、ジョエル。

 そして、私。


「強化レベルをあげるぞ」


 ということで、11階のレベリングは終了し、

 いっきに15階まで行くことになった。


 15階を目指すのは、討伐証明書をもらって

 ここの転移魔法陣を利用できるようにするためだ。

 これで16階でのレベリングに挑める。


 目的は本当の実力を上げるため。

 8階から14階までは特殊な魔物が多く、

 また、パワーレベリングでレベルを上げてきたこともあって、

 実戦力に欠ける面がある。


 その実戦力を鍛えるために16階以降で鍛えるというわけだ。

 16階からはしばらくオーソドックスな敵が続く。

 基本的な敵の倒し方を続けて行けばいいので、

 しっかりと実力を高められるとのことだ。


 鍛錬は激しさを増した。

 安全マージンを十分取っているとはいえ、

 怪我も多いし、ヒヤリとする場面は続出する。


 そんな状態をバックアップするのが、回復薬。

 ものすごくよく効く。

 最近噂の回復薬じゃないか、と思えるぐらいよく効く。


 そんなこともあり、

 私達ははっきりと実感できるほど力を蓄えていった。


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