第42話  クラス対抗戦2~夏休み前のいろいろなこと

【クラス対抗戦2】


 E組は俺のチームが出場。

 エマ、ジャンヌと俺だ。

 あっさりとE組の代表となり、本番だ。


「ドベクラス!」

「低能!」

「迷宮学園の恥!」

「補欠!」

「デブチビ!」


 おいおい。

 D組から下品な言葉が飛んでくる。


 D組代表はモルガンじゃない。

 奴はあれ以来、引きこもりになったらしい。


 まあ、誰だろうとすることは変わらない。

 出だしでD組の3人を急襲。

 ノックアウトさせた。

 その後は余裕をもって疑似魔物を討伐。

 

 D組の奴ら、唖然として俺たちを見ている。

 ざまあ。


 続いて、C組も撃破。


 で、B組とはいい勝負。

 俺も様子を見ながら手を抜いていたこともあるのだが。


 すごく嫌味に聞こえると思うけど、俺は力の抜き方に苦労していた。

 決して奢っているからではない。

 俺は未だに微妙な力加減が難しいのである。

 力加減を間違えると、惨劇になってしまう。

 

 なんとか、B組には勝ったけどね。


 ただ、A組戦では、あの美男美女の3人チームが出てきた。

 俺たちは彼らに勝てなかった。


 別に俺たちが勝ちを譲ったわけじゃない。

 俺が適度に力をセーブすると、

 ちょうどB組に勝てる程度であったのだ。


 D組の鼻をへし折るという当初の目的は達成したし、

 彼らの面目もたったということで、よかったんじゃないか。


 実際、D組からはあざけりの言葉が一切なくなった。

 なんとも恨めしい目で睨みつけてくるんだけど。


 そういえば、モルガン、D組だったな。

 奴はD組というか学年でもトップクラスじゃないか?

 少なくともダンジョンレベルにおいては。

 そのモルガンでもあの程度だ。


 まあ、ダンジョンの外だったら、

 D組全員が俺を襲いに来ても返り討ちにできるだろう。


 もっとも、お互いが反目し合う意味がわからんのだが。

 仲良し小好しのつもりはないが、平穏無事にやっていけないものかね。

 たかだが学園の狭い空間でなぜ酷く張り合おうとするのか。



【携帯簡易魔法陣】


 さて、検討を重ねていた転移魔法陣。

 極力、余分な機能を削り取り、ミニマムな性能の式を作り上げた。

 できることはAB地点の往復のみ。

 それも一人ずつだ。


 これで、1回に使用する魔石はD上位クラス、

 つまり購買価格1万s程度にまで抑えることができた。


 もうこれが精一杯だ。

 だが、1回1万s程度なら問題ないだろう。

 自分で取ってきた魔石ならば、タダだ。


 普段使いできるわけじゃないが、

 多少の緊急要件でも使うことができるし、

 それこそ遠距離ならばこっちのほうがトータルで

 断然お得だろう。


 ミニマムな性能の魔法陣を作り上げたので、

 今後の高性能化はオプションで対応できる。

 魔石の量さえ確保できれば、どれだけ高性能になっても問題ない。



【好調なドリンク販売】


 冒険者ギルドに渡しているのは、

 フルーツ・ジュース(オレンジ、グレープ、アップル)

 そして、それらのナイト・ジュース版だ。


 当初こそ、それぞれ1日10錠剤で始めたのだけど、

 すぐに人気が出た。


 追加注文につぐ追加注文で手が回らない。

 


 で、いよいよ、エリクサー(仮)を作ることになった。

 魔石回復薬の完全版である。

 最初に製品をジャックにためしてもらう。


 ジャックは冒険者ギルドのギルマスらしく?ハゲの大男だ。

 ところが翌週、納品がてらジャックに挨拶に行ったら、

 毛が生えていた!



 以下は、ジャックの話。


 家の書斎の上に錠剤を置いておいたら、

 女房がジュースと間違えて、水に溶かして一口飲んだらしい。


 そこでジュースじゃないことに気づいたんだが、

 すごぶる体調がよくなったという。


 で、ふと鏡を覗き込んでみたんだ。


 するとなんと!

 白髪がツヤツヤとした黒髪になっていたんだ。

 ああ、彼女は元々黒目・黒髪の持ち主だ。

 まだ40代なのに、若白髪になってたんだな。


 よく見ると目の周りのシワもかなり薄くなっている。

 喜んだのなんの。


 家に帰ってきてオレも驚いた。

 そりゃ、朝は白髪交じりだったのに、

 ツヤツヤ黒黒とした髪の毛になっている。

 目尻のシワもとれて、実に若々しい。


 じゃあ、とばかりにオレも一口のんで、

 ついでに頭にもふりかけてみた。


 すると、翌日目が覚めたらご覧のとおりさ。


 オレは恥ずかしくてキャップをかぶって職場に向かったんだが、

 ついに意を決してキャップをとった。


 もうギルド中が大騒ぎ。


 すぐに周辺に知れ渡って、ご同類が飛んできてな。

 根掘り葉掘り聞かれるんで、おれも往生したよ。

 

 でな、オレも困ったんだが、

 毛生え薬はダンジョンで拾ったということにした。

 20階よりも深い層にはこの薬が落ちている。

 早いもの勝ちだってな。


 それからは、ダンジョンブームが到来してるぞ。

 まあ、ほとんどの人たちには無縁だがな。


 20階よりも下だから。

 奴らが目指す階層は。

 そこまでたどり着けるやつなんて少数だ。


 ダンジョン外も盛り上がっている。

 買い取り額が1億sを突破してるって話だぞ。

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る