第39話 奴らは狂信者?1

【奴らは狂信者?1】


 俺はあまりに得体のしれない奴の行動に寒気ボロが出ていた。

 こりゃ、今後も何しでかしてくるかわからんぞ。

 俺は父ちゃんたちに相談することにした。


「なに?狙われた?」


 父ちゃんと母ちゃんに経緯を話す。


「いや、そんなんオレでも理解できんわ」


 そうだろ。

 ここが異世界だからじゃない。

 奴らの気が狂ってやがるんだ。



「ふーむ。こりゃ、魔物どころじゃねーな。ロレーヌが襲われたことでできるかぎりの対策を、とは考えていたが、とりあえずは学園から出ないことで安全は担保できると思っていた。でも、ジョエルが学園内で襲われた上に、質が違う。ちょっと、真剣に対策を考えるぞ」


「アレクさん、まずは足元よね」


「うむ、まずは防衛手段だな。考える限りの防具は必要だな」


「ダンジョン外用の結界魔導具と防御魔導具はほしいわね」


「ああ、人数分のな。魔石は最近のレベリングで山のように積み上がってる」


 違法ではあるが、スキルのマジックバッグに魔石を入れると、

 ノーチェックでダンジョンの外に出られる。


「父ちゃん、足りなかったら出すから」


「おお、頼むわ」


「あと、家の結界。これも魔導具はおいてあるが」


「もっと強力なのにする?」


「だな。ロレーヌんとこぐらいの特製のを購入しよう」


 彼女の家には、教会特製の結界が張り巡らされている。

 ※後日、教会特製結界は取り払われ、

  そのかわりに俺んちの結界魔導具が貸し出された。


「あとな。狙われそうなのは誰だ?俺たちとロレーヌ以外で」


「A組のアスタシア、ライリーの二人。それからE組クラス委員長のジルは危なそうだ」


「よし、まとめて面倒みるか。明日、ロレーヌと一緒に彼らを家に連れてこい。魔導具を買いに行くぞ」


「あと、連絡魔導具も持つか」


 連絡魔導具は各家庭においてある通信魔導具の姉妹品だ。


 前世のメール専門送受信機みたいなものである。

 最近の新製品で、買おうか迷っていたのだ。

 何しろ、かなり高価だ。


「流石に奴らも今日明日は動くまい。だが、用心のために明日一番に彼らも警戒するようにいっておけよ」

 

「わかった」


「アレクさん、あと、ジャックさんに相談してみる?」


「ああ、冒険者ギルドのギルマスか。多少なりとも、背景を推理できるかもしれない」


 ◇


「ええ、ひょっとしてアレクさんとクリステルさんですか?」


「おお、そうだけど」


「うわあ、お会いできて光栄です!私の両親がファンなんです。アレクさんたちの息子さんがアカデミーに入学したって話してましたけど、ジョエルさんのことだったんですね!」


 そう興奮しているのはジルだ。

 父ちゃんと母ちゃんは昔B級冒険者だったんだけど、

 この街でアイドル的な人気を博していたってのは聞いたことがある。


 今30代から40代前半ぐらいまでの人、

 つまりアカデミーに来ている人の親御さんの世代なら、

 父ちゃんたちの現役時代を知っている人が大勢いるはずだ。



「そうかあ、まあ昔の話さ。でな、君たちにはジョエルから話があったと思うが」


「ええ、すっごく驚いています」


「ロレーヌに続いて、ジョエルが連続して襲撃されている。どうも、生徒会選挙がらみの話らしい」


「話が突飛すぎて、ついていけないんですが」


「俺たちだってそうさ。だが、現実に襲われている。だからちょっと突っ込んだ話をする。まずは、申し訳ないんだが魔法契約書にサインしてくれないか。その位、重要な話なんだ」



「サイン、ありがとう。もう隠すこともないから言っておくが、ジョエルは常識はずれに強い。おそらく、アカデミーの学生の中では一番強い」


「え、ダンジョンのなかですか、外の話ですか」


「両方だ。ダンジョンの中は俺やクリスと同等。外は俺たちよりも圧倒的に強い」


「本当ですか?」


「嘘じゃない。ロレーヌ襲撃事件でも奴らからロレーヌを守ったのはジョエルだ。ジョエル襲撃でも2度躱すことができた。しかし、奴らの行動は常軌を逸している」


「2度?」


「一度はダンジョンの中で。一度は昨夜だ」


「あまり話を詳しく聞いていないんですが」


「一度目はともかく、昨夜のはジョエルが学園内で襲撃されて返り討ち、尋問してから釈放したんだ。後をついていくためにな」


「おお」


「案の定、奴はボスらしき家に入っていった。ジョエルにはな、強いステルススキルがある。奴と一緒に屋敷に潜入して、ボスの部屋の外まで入っていった」


「ええ、凄すぎる」


「で、奴らはいろいろ話し始めた。ジョエルは扉をこじ開けて急襲。奴らを拘束して尋問しようとした。ところが、ジョエルの隙をついて、自爆しやがった」


「今朝の通信魔導具ニュースで住宅街の爆破事件を報道してました。まさか、そのことですか?」


「そうだ。ちょっと、常軌を逸していないか?」


「ああ、話についていけません」


「俺たちもだ。理解できない。自爆までする必要があるのか?奴らの組織は狂ってるとしか思えないんだ」


「狂ってる、まさに」


「だから、俺たちは自衛を強化することにした。で、他に襲われそうな人がいるか聞いたら、君たちの名前があがった」


「私、ジョエルさんに親から聞いた話を伝えたことがあるんですけど」


「ジルさんだったな。君の話はすごく参考になったよ。今朝、冒険者ギルドのギルマスに相談してみたんだが、君の話の延長線上の話をしてくれたよ」


「僕の親父はいわゆる新貴族、祖父が冒険者で功績をあげて貴族に叙爵したんですが」


「リシャール男爵だよな。伝説的な冒険者だ」


「祖父や父から自由派と守旧派の争い、それから生徒会選挙にまつわる闇は聞いています」


「うむ。それなら話が早い。君たち、防御体制が万全ならばいいんだが、そうじゃなければ今から武具を買いにいくが。費用は心配するな」


「いや、そういうわけには」


「遠慮してる場合じゃない。神経質に見えるかもしれないが、奴らはやばすぎる。今夜にでも襲ってくるかもしれんのだ」


「そうよ。学園の寮にいても安全じゃないわ。ジョエルが襲われたのは学園内だもの」


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