第38話 俺襲撃事件
【俺襲撃事件】
ロレーヌ襲撃事件のおきた翌週。
俺が放課後のランニングをしに、本館の裏を走っているときだ。
「うわっ」
いきなり、弓が飛んできた。
「(くそっ、はずしたか)」
はずしたんじゃねーよ。
気配を察して避けたんだよ。
俺の五感はダンジョン外でも超人並みになりつつある。
それと、先週の襲撃事件で警戒がマックスになっていたのだ。
俺は瞬時に弓の発射地点を割り当て、
ステルスをかけつつ、接近した。
「あれ、急に消えやがった。どこいっグワッ!」
俺は射手に腹アッパーを食らわした。
むろん、相手はまるで防御していない。
まともにパンチを食らわすと、腹部破裂間違いなしだ。
俺はそ~っとパンチした。
だが、それでも相当な威力になったようだ。
「グワー!」
敵は地面をのたうち回っている。
俺は奴の腹部を蹴り上げた。
「おい、痛がってるふりをするな」
「グググ、ふりじゃねえ……」
奴はきたないものを地面に撒き散らして転げ回る。
「もう一発食らうか?楽に死ねるぞ?」
「助けてくれ」
「くれ?」
「も、申し訳ありませんでした。助けてください!」
俺はさらに腹を蹴りまくった。
そーっとだが。
「グワワワ!」
ああ、腹部が破裂したみたいだ。
力、抜いているんだがな。
「さて、おまえの腹はパンクした。このままだと、腹膜炎を起こして七転八倒した末に腹が腐ってどんな治療も受け付けなくなる。そのままあの世行きだな」
「グググ~、助けてくれ!」
ああ、痛くて気絶もできなさそうだ。
「俺の問に答えたら、助けてやる」
奴は必死で頷く。
「お前はだれだ」
「ググ、名はない」
ボガッ!
「格好つけんな」
「うう、シラスだ」
「ま、名前なんてどうでもいいか」
「グググ(なら聞くなー)」
「どこかの組織か?」
「ううう、それは言えない」
ボガッ!
「ほ、本当だ」
ボガッ!
「ググッ、頼む、止めてくれ!」
「まあ、いいか。じゃあ、なんで俺を狙った」
「うう、そんなこと、わかるわけないだろ」
「想像ぐらいつくだろ?言わないとこのまま捨て置くぞ」
「頼む、俺は末端なんだ、殺る理由なんか知るわけ無いだろ」
これ以上ひっぱると本当に殺人をおかしそうだ。
俺は、奴に回復薬をかけてやった。
「おおお、腹部の痛みが嘘のように!」
「なあ、どっちにしろ、おまえは終わりなんじゃないのか?」
「……」
「だいたい、小説なら奥歯の毒カプセルを噛み砕くよな」
「……」
「そこまでじゃないか。まあ、いい。今日はここまでにしておいてやる」
「助けてくれるのか」
「そう言ってる」
「礼はいわんぞ……」
賊は立ち去った。
まあ、後をついていくんですけどね。
俺は再びステルススキルを発動。
奴は俺をまこうとしているのか、複雑なルートを選択。
だけど、俺のほうが何枚も上手だ。
ステルスも気配遮断も気配察知も。
奴はアカデミーの敷地を出て、街の普通の住宅街に向かった。
そして、ある邸宅に吸い込まれていった。
◇
「すみません、失敗しました」
「ふむ、お前は組織でもかなりの手練れ。それでも失敗したのか」
「奴の強さは尋常じゃありません。まるで、人工魔素フィールド環境にいるかのような強さです」
「それほどか…誰だ!グフ!」
俺は、奴らの部屋までついていき、
部屋の外で奴らの会話を聞いていた。
俺の五感はえらく敏感だからな。
部屋の外からでもばっちり聞こえている。
で、手っ取り早く締め上げようと、
ステルスを解いて鍵のかかっている扉を蹴り破った。
そして、襲撃者をワンパンで脳震盪をおこさせ、
指示者らしきものの腹部を蹴り上げた。
「グググ!」
「さっきな、そこに転がっている奴に同じ苦しみを与えてやったよ。腹が破裂してな。死ぬより痛がってたよ。お前も同じ苦しみを味わらせてやろう」
俺も芝居たっぷりに語ってやった。
だが、この余裕しゃくしゃくの態度がいけなかった。
慣れないことはするもんじゃない。
その隙に奴は必死に立ち上がり、机の裏のボタンを押した。
俺は瞬間的に危機を感じ取って、部屋の外に飛び出した。
「ボガン!」
なんと、部屋が爆発したのだ。
俺も爆発のあおりを受けて壁に叩きつけられた。
ただ、身体強化のおかげで多少の痛みを感じた程度で済んだ。
では、めちゃくちゃになった部屋の中の二人は。
ボロ雑巾のようになっていた。
「はあ?そこまでやるか?」
俺もこの世界にきてダンジョン攻略のせいか、
随分とダークで無慈悲な性格になってきた。
しかし、この漫画のような結末についていけない。
自分の命をかけるようなことか?
俺は頭が混乱しまくっていた。
奴らは狂信者の集まりなのか?
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