第30話 さらにビッグな古代書案件2
【さらにビッグな古代書案件2】
「この歴史的快挙だが」
「うむ。発表はできんな」
「すごすぎて、混乱しか見えない」
「それに、オレたちは立場的に守旧派に属したくない。かといって、自由派もちょっと違う」
「独立独歩の立場だからな。色のついた組織には手渡しできん」
「オレたちだけの秘密を通すしかないな」
「それとな、一回一回の消費する魔石が半端ない」
「C級の魔石5個必要というからな。買うと50万sはする」
「うーむ、緊急案件用の魔法だな。日常的には使えんな」
「あくまでマル秘だが、それでも画期的には違いない」
俺なら、魔石は作り放題だが、そのことを言うわけにはいかない。
「ちょっと俺も研究しますんで、少し時間を頂けませんか」
「どうする?」
「魔法陣の式をもっと簡易化できないかと思って」
「可能か?」
「わからんですけど、この式はちょっといろいろな枝葉の機能が付きすぎているんですよ。それを削ぎ落とすだけですから、そんなに難しくないと思います」
「おお」
「だからいったろ、こいつはアカデミー首席卒業の大大天才、俺の素晴らしい息子だって」
いや、補欠合格だし、まだ1年だし。
「それとですね、付録的に解説してあったんですが、マジックバッグも載ってました」
「マジックバッグ?」
「ダンジョンで言うインベントリですよ」
「収納無制限ってやつ?」
「ええ、でも残念ですが、濃い魔素が漂っていないと十分に機能を発揮できないみたいで」
「ダンジョン環境下でしか使えないということか」
「外でも一応は使えます。薄い魔素が漂っていますから。でも、ズボンのポケットの少し大きい程度ですかね、収容量」
「ないよりマシってことか」
「秘密のものを隠すならうってつけですよ。落とすこともないし」
「そうか、それなりに便利だな」
「人工魔素フィールドなら現実でも収納無制限で使えますが」
「そんなの起動したら、怒られちゃうよ。ダンジョンじゃインベントリがあるしな」
「えっと、これは魔導具じゃなくて、スキル的に使えるようなんで、ダンジョンで魔法が使えるような人なら起動できるみたいです。一応ご報告しておきます」
「そうか。一応、スキル化しておくか」
「使えないわけじゃないからな」
マジックバッグは俺のためにあるようなスキルだ。
俺は常時魔素フィールドが起動しているからな。
現実の世界でどれだけ使うあてがあるのかはわからない。
人前では絶対に使えないし。
ただ、便利であることは間違いない。
人には見つからないし、落とすこともないのも使える。
俺もスキル化しておく。
それにしても、俺の頭脳、ますます冴えわたってきたぞ。
身体強化スキルもとんでもないレベルになってきたが、
それに比例するかそれ以上にオツムのできが良い。
視覚に入ったものなんて、写真をとるように記憶に残る。
映像記憶スキルだろう。
これは前世地球でもそれほど珍しいスキルじゃない。
一説によると、
子供の10人に一人はこのスキルを持っているらしい。
これを大人になってまで持ち続けている例は少ないというが、
いないわけじゃない。
3万人に一人程度はいるという。
俺も高校の同級生にそういうタイプの人間がいた。
ピアノの譜面を見るとあっという間に覚えてしまうという。
そいつは結局音大に行った。
俺はこの世界に来て、彼の能力を味わうことになった。
確かに素晴らしい。
しかも、すぐに思い出す。
膨大な量の記憶が脳に収納されているんだが、
記憶容量も馬鹿でかいようだ。
だから、学園の授業がまるでスマホで撮影しているように
記憶に残る。
黒板の隅にある落書きはもちろん、
先生の冗談とか学生のおしゃべりとかいった
音声情報なんかも記憶に残る。
そういうつまらない情報は記憶の奥にしまっておける。
だから、辛い記憶も知らずに思い出すということはない。
もっとも、ますます授業がつまらなくなっている。
元々前世の中学生レベル、下手すると小学生レベルの授業なのだ。
この世界の人ってそんなに馬鹿なのか?
そうは思えないのだが。
きっと頭脳レベルは前世地球と変わらないと思う。
しかし、学問がまるで発達していない。
いや、古代書を見ると昔はかなり発達していたようだ。
しかし、文明レベルが衰退しているんだろうか。
西欧でも、ローマ全盛期に比べると
文明が衰退していき、暗黒の中世などと言われる時代があった。
ローマン・コンクリートなど、
今だに再現できない技術もあるぐらいだ。
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