第29話 さらにビッグな古代書案件
【さらにビッグな古代書案件】
「アレク、いるか?」
「アンリか。いらっしゃい」
薬師のアンリがインテリ風の男を連れて
父ちゃんたちの店にやってきた。
「まず紹介しとくわ。こいつ、俺の薬師仲間でエクトルだ。エクトル、こちらがアレクだ」
「「よろしく」」
「エクトルは薬師っていうか、若いんだが研究大好き男でな。魔石回復薬も農業関連のもこいつに副作用とかを見てもらったんだ。ああ、もちろん、関係する人は全員魔法契約書を交わしてある」
「ふむ」
「で、これらの製品を古代書を解読することで手に入れた、って話をしたら、是非ともお願いしたい件があるっていうんだ」
「ええ、これなんですよ」
「えらく分厚い本だな」
「その本はある魔法に関係してるんですよ」
「なるほど。ちょっと待て。防音スキルを張るから」
「……よろしいようですね。これ、タイトルが転移魔法陣ってなってます」
「なんだと」
「この本な、仲間内では伝説的っていうか、幻の古代書でな。研究者が何人も解読に挑んできたんだが、まるで歯が立たない。俺の仲間は優秀なのが多いんだが」
「ほう。ちょうど、息子が学園から帰ってきてる。おーい、ジョエル。ちょっと来い」
俺は呼び出されて挨拶の後、本の説明をされた。
「はあ、たしかに『転移魔法陣概説書』って書いてありますね」
「おお、中も読んでくれないか」
「いいですよ……パラパラと見ましたけど、転移魔法陣の作り方が載ってます」
「やっぱり、そうか!君に是非ともお願いがあるんだが」
「いいですよ。俺も大変興味があります。というか、是非やらせてほしいですね。ちょっと手強そうなんで2週間ほどもらえますか」
「2週間?たったのそれだけでいいのか?」
「ええ、この手の古代書、慣れてきてるんで」
「わかった。とにかく、重要性がわかると思うから、この場にいた人たちは魔法契約書を作成して口止めしよう」
この世界の人たちは大事な話をすると、
すぐに魔法契約書を作成して口止めを行う。
他人を信用していないとも言えるが、
信用していても、どこから漏れるかわからないからだ。
◇
さて、依頼された転移魔法陣。
実は1週間ほどで解読が終わった。
だが、魔法陣を俺は作成できない。
ガリエルさんに頼むしかない。
とにかく、アンリさんの研究所に向かう。
「アンリ、いるか?」
「おお、アレクとジョエルか。もうできたんか?」
「ああ。息子は大天才だからな」
「おお、ちょっとエクトル呼んでくるから待っていてくれ」
「ほおおおー!解読できたって?」
顔を真赤にしながら、エクトルさんが駆け込んできた。
はあはあ息を荒くしている。
「できたんですけど、俺、魔法陣がかけないんですよ」
「ガリエルんとこにダッシュだ!」
◇
「おや、農機具ならいま絶賛開発中だぜ」
「いやいや、もっとすんごいものを持ってきた!」
「うは、この兄ちゃん、顔真っ赤だな」
「ガリエル、お前も聞いて驚くな」
父ちゃんは厳重に防音スキルをかけて説明した。
「なんだと、転移魔法陣だと。古代書で解読しただと」
「へへ。どうだ」
「よし、ちょっとまってろ。全部の仕事ストップだ。全職人で一晩で書きあげる。明日この時間に、また来い」
◇
「ガリエル、できたか?」
「できたぞ。しかし、これかなりの魔石を使うな」
「そう思って、俺が用意してきました。C級の魔物の魔石サイズが必要だって書いてありましたから」
といいつつ、俺はゴロゴロと魔石を取り出す。
「おお、これだけあれば完成を確かめられるな」
「ああ、店にストックしてあるのを持ってきた」
「いいのか?」
本当は俺がスキルで生成した魔石なんだけど。
買えば一つ10万sぐらいする。
「ああ。これぐらいなら問題ない。で、実験してみたのか?」
「我慢できなくてな。俺が最初に試した」
「なんと剛毅な。で?」
「問題なく、転移したぞ。あっこからあそこまで」
ガリエルさんは2つの転移魔法陣を指差す。
「よし、じゃあ、一つは一番近い場所、アンリの研究所に持ち込むか。ガリエル、ちょっと待ってろ。あっちから転移してみるから」
俺たちは携帯型の魔法陣、直径2m以上ありそうな
金属の板をアンリの研究所に持ち込んだ。
「じゃあ、やるか?」
「是非とも、僕にやらせてください」
エクトルさんが手を揚げる。
「じゃあ、エクトル、行きます」
エクトルさんが魔法陣に立つ。
すると、魔法陣から白い発光が輝き、
エクトルさんが消えた。
そして、すぐあとに転移魔法陣が再び光輝き、
エクトルさんとガリエルさんが現れた。
「大成功じゃないか」
「よし、まずは乾杯といこう」
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