第18話 家族レベリング4

【家族レベリング4】


 なお、俺は週末の家族ダンジョン攻略を続けている。

 5月初めにはレベルが10になっていた。


 6階で足踏みをしていたのだが、

 流石にこれ以上レベルが上がらなくなってきた。


「マノン、7階行くぞ」


「えー」


「戦闘は父ちゃん母ちゃんにまかせて、すぐに8階行けばいいじゃん」


「8階・9階は幽霊とか出てくるのよ」


「幽霊も魔物も一緒だろが」


「全然、違う!」


「だいたいさ、マノンの聖属性と不浄系って相性がいいじゃん」


「そうよ、マノンちゃん。レベルがあがればゴーストとか一発で消滅よ」


「えー、ホント?」


「私の聖属性持ちのお友達なんて、魔法一発で8階・9階の敵を全滅できるのよ」


「そうなの?ちょっと勇気出た」


「よし、じゃあ7階でレベリングして、マノンのアンチ不浄系のスキルが生まれたら、8階へ行ってみようか」



 7階は当初こそ父ちゃん・母ちゃんに戦闘をまかせていたが、

 レベルが一つ上がることでマノンも参戦してきた。


 7階の魔物は昆虫系だがサイズがデカくなる。

 体長が2mを超すものばかりで、特に防御力が高い。

 魔物としては、キラーアント、ポイズンモス、ビッグスパイダー

 といったところ。

 

 そして、二人共レベルが9になったところで、

 マノンにアンチ不浄系のスキルが生まれた。



「ターンアンデッドってスキルが発現した」


「マノンちゃん、それがアンチ不浄系のスキルよ。聖なる力で不浄なるもの・不死者を土へと還すっていう攻撃」


「へー、幽霊とかすぐに消滅する?」


「ええ、一瞬で。レベルがあがると範囲攻撃も可能になるわ」


「そうだぞ、マノン。8・9階はお前がエースだ」


「はー、お父さんより?」


「そうだ。特にゴースト系は特殊な討伐が必要でな。俺たちはもっぱら回復薬を投げつけて退治するんだ」


「そんなのもったいないじゃん」


「そうさ。8・9階はたいてい速攻ですり抜けるな」


「本当はお母さんも幽霊好きじゃないから、10階に直行してたわ。火魔法の効くのもいるんだけど」


「へー、私優勝ね?」


「そうよー、マノンちゃん頼みよ」


「よっしゃ、まっかせなさい!」


 で、8階に上がってみた。

 8階は深い霧に覆われている。

 この階はシャドーという魔物が出る。


 よくわからないが、影の一族らしい。

 影の一族と言われてもよくわからんのだが。


 真っ暗な人型の魔物だが、

 光属性と聖属性が弱点だ。


「シャドーは後ろに気をつけてね。ふっと背後をとって対象者を眠りにつかせるのよ」


「眠りについちゃったら?」


「そのまま。起きるのを待つだけ」


「ある意味、無害?」


「そうね。光に弱いから、魔導灯を当てれば逃げていくんだけど、やっつけることはできないわね」


「で、マノンちゃんの出番よ。気配を感じたら、そこに向かってターンアンデッドを発動するわけ」


「ピンポイントじゃなくてもいいから、おおまかにやればいいぞ」


「わかった」



 その言葉とおり、マノンは魔法を連発していくことになる。

 気配も父ちゃんや母ちゃんレベルだとすぐにわかるようで、

 指示された地点へターンアンデッドを発動するだけ。


 シャドーとおぼしき影がチラッと見えるとそのまま浄化された。


「うわ、すっごく簡単」


「やっぱり、この階は聖属性最強ね」


「いいぞ、マノン。このまま出口に向かうぞ」


 シャドーは俺とマノンにとってはいい経験ち稼ぎになった。

 討伐しにくい魔物のせいか、経験値が高いのだ。


 9階への階段までに二人共レベル10になった。



 そして、9階。

 ここでも、マノンの独擅場となった。

 

 9階は8階同様深い霧で覆われている。

 その霧の中からいきなりスケルトン、ゾンビといった、

 典型的な不浄系の魔物が出現する。


 この深い霧がかえってマノンにはよかったようだ。

 シャドー同様、相手をはっきり視認する前に、

 俺たちのレーダーに相手が検知される。


 そこに向かってターンアンデッドを唱えるだけだ。


「なんだか、拍子抜けね」


「姿を表す前に魔物が消えちゃうからね」


「マノンのお陰だぞ。普段だと、やっかいな敵なんだ。いきなり霧の中から現れるし、防御力が高く、毒攻撃もあったりするんだ」


「そうよ。気持ち悪いし、できる限り早くこの階を抜けるのが私達の鉄則だったわ」


「あとは、マノンの魔力だけだな。疲れてきたらいえよ。魔力回復薬はたんまり持ってるし、なんなら10階に行こうか」


「うん、まだ大丈夫。なんだか、思ってたのと違うから力が抜けてるだけ」


 マノンの活躍もあり、9階を結構探索することとなった。

 

 一応、地図もあり父ちゃん・母ちゃんは半径数百m程度の

 気配探知能力がある。


 だから、濃い霧の中でも迷うことはない。



「みんな、ちょっと待て。この先に建物があるみたいだぞ」


「小屋かしら?」


「ゆっくり近づこうか」


 だんだんと小屋らしき建物が姿を表してきた。

 父ちゃんが慎重に扉の取っ手に手をかける。


「ギギギ」「ウワッ!」


 突然、何かが現れてきた!

 そして、棒のようなものを振りかざし、

 父ちゃんに殴りかかってきた。

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