いじめの大元?

第16話 屋外活動に向けて

【屋外活動に向けて】


 週末の日曜日はレベリングの日となった。

 家族4人でピクニックがてらダンジョン挑戦である。


 父ちゃんたちが5階のボスをやっつけたことで、

 そのパーティの一員とみなされる俺とマノンも

 5階討伐証がもらえることとなった。


 冒険者ギルド的にはDクラス冒険者認定されるレベルだ。


 討伐証のメリットは、ダンジョン1階入り口近くにある

 転移魔法陣で一気に5階まで転移できることだ。


 これで、低レベルの魔物と相対する必要がなくなるし、

 無駄な移動が省ける。


「4・5階の臭いを避けられるのも大きいわよ」


 マノンに限らず、大抵の人が、

 特に5階の臭いには顔をしかめる

 5階の転移魔法陣はボスのいる場所の近くで、

 ボスをやっつければそのまま6階への階段が現れる。


 レベルは俺が7、マノンが6。

 5階のホブゴブリンには容易に対処できるようになった。

 ただ、ボスのゴブリンロードは厄介だ。

 頑張れば突破できるかもしれないが、

 極力安全を確保したい。


 だから、父ちゃん・母ちゃんのヘルプを受けて

 ボスの討伐をしている。



 6階は、一気に森林となり、

 ゴブリン一族が集団で現れる。

 

 統率者もホブゴブリン、ゴブリンキング、ゴブリンロード

 となる。

 ゴブリンメイジといった魔法を使うゴブリンも現れ、

 より戦略的な動きが重要になる。


 だから、俺たちは6階がレベリングの舞台となっている。

 実践的な訓練にちょうどいいからだ。


 それに、


「だって、7階って虫の魔物なんでしょ?ムカデのでかい奴とか会いたくない」


「8階からは幽霊が出るんでしょ。ムリムリ!」


 と、マノンが抵抗を見せている。

 虫はともかく、ゴースト系は俺も引き気味だ。


 ただ、6階ではレベル9で頭打ちになるそうだ。

 いずれは7階に挑戦しなくちゃいけない。


「あー、考えるの拒否する」


 まあ、マノンはああ言ってるが、結構恐れ知らずだからな。


 ◇


 学園の方も少しずつ進展がある。

 相変わらず机上の勉強は簡単すぎて面白くないんだが、

 戦闘訓練はそこそこ面白い。


 ただ、戦闘レベルに関してはクラス内でも差が大きい。

 はっきりとはわからないが、

 俺はダンジョンレベルに関してはE組では最上位だと思う。

 

 俺以外ではクラス委員のジルがダンジョンレベル5だ。

 まあ、自己申告なんだが。


 他の人達でも最低レベル3には達していると思うが、

 レベル3は全く初心者レベルといっていい。

 おそらく、ダンジョンの2階でとったレベルなので、

 ダンジョンでは戦闘力はないに等しい。


 そんなダンジョンレベルでよくアカデミーに受かったな、

 と言われそうだが、

 アカデミーの合格基準はダンジョン外のステータス。

 これが各自の基礎体力となるわけだ。


 これが低いといくらダンジョンでレベルを上げても

 実際のステータスが低いままということになりかねない。


 例えば、身体強化スキル。


 レベル1だと、『基礎ステータス』の3割増しになる。

 基礎ステータスというのがポイントで、

 身体強化スキルレベル1が発現したからといって、

 みんなが同じ数字になるわけではない。

 ダンジョン外のステータス、

 つまり基礎ステータスに比例して強くなる。

 

 レベル1のほうがレベル2よりも強い、

 ということも十分ありうるわけだ。


 だから、入学試験は基礎ステータスを重視する。

 それと、魔法の使用は頭の良さと関係している。

 特に言語論理能力と数学能力、特に空間能力が

 求められるとされる。


 身体強化スキルがあがれば頭も良くなるが、

 ここでも基礎ステータスの良さが重要となる。


 それと、迷宮学園は最終的にはダンジョン管理者になることを

 目的としている。

 要するに、お役人養成学校なのだ。

 頭の良さは重要だ。



「エマとジャンヌ。連携してみようか?」


 俺の班は、エマ・ジャンヌ・俺という、

 わがままボディチームだ。

 しかも陰気キャラ。


 いや、俺は鬱状態を脱したので、陰キャじゃないはず。

 まあ、元々地味なんだが。


 でもエマとジャンヌは口を開かない。

 嫌われている?とも思ったのだが、そうでもないようだ。


 昔の俺みたいに、

 学園のレベルの高さに引き気味なのかな?



 俺たちは戦闘訓練の時間に、個別訓練室で訓練を行う。


 ここは、許可のもと簡易人工魔素フィールドが生成される。

 単なるダンジョン・バーチャル環境になる。

 疑似ダンジョン環境下で訓練が行えるのだ。


 模擬魔物も出現する。

 様々な魔物の偽物が登録されており、

 レベルにあった魔物を任意に呼び出せる。

 シミュレーションができるのだ。


「いいかい、俺はタンク役をするから。二人は遠距離攻撃係やってくれよ」


「…うん…」


 大丈夫か、こいつら。


 エマは水魔法、ジャンヌは風魔法が発現している。

 ちなみに、複数の魔法が発現することはまずない。

 一人につき一属性。


 複数属性持ちがいないわけではないが、

 極めて少数で、しかもデメリットが大きいという。

 お互いに干渉しあうらしいのだ。


 特に反対属性持ちとなると、

 魔法を発動できなかったり、暴発したりするらしい。

 そうなると、ダンジョン活動は非常に難しくなる。


 エマもジャンヌもレベル3だから、

 そろそろ3階に挑戦するころだ。


 だが、3階は最初の関門、角兎が待っている。

 こいつの素早さに対処できないと、

 大怪我か最悪お亡くなりが待っている。


「エマとジャンヌ。3階の経験ある?」


「…ある…怖い…」


 いや、あんたらのほうが怖いんだけど。

 まずは、疑似コボルトから戦闘を重ねる。


 コボルトは大丈夫だ。

 しかし、疑似角兎で躓いた。


「…顔が怖い…」


 ああ、マノンみたいなこと言ってる。

 マノンは元気いっぱいで可愛いけどな。


 これは、ダンジョンに連れて行って、

 俺が引率してレベルあげるしかないか?


「なあ、提案なんだけど。ダンジョン行ってみないか?実は俺のダンジョンレベルは7なんだ」


「…7?…すごい…」


「3階の敵ぐらい、簡単にやっつけられるから、君たちも大丈夫だと思うんだけど」


「…レベル…あげられる?…」


「ああ。いわゆるパワーレベリングってやつだ」


「…行きたい…」


 良かった。

 意欲はあるようだ。

 彼女たち、なんで迷宮学園に来たのか、

 不安に思っていたところだ。


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