第15話 家族でレベリング3

【家族でレベリング3】


「よし、どうだ。4階にチャレンジするか?」


「えー、私中3だから3階までだよ?」


「いいって。保護者がついてるんだし。あの決まりは弱者保護だからな。貴族とかは全然守っちゃいないぞ」


「というかマノンちゃん。ゴブリンの顔を見たことある?」


「図鑑でしか見たことない」


「もうね、すっごいブサイクなのよ」


「えー、そんなに?」


「そうよ。お母さん、初めてゴブリン見たとき、あんまりブサイクなので火魔法を撃ち続けたら、魔力が切れたぐらいなんだから」


「ああ、キャーキャー言って俺も攻撃されたぞ」


「アレクさん、あのときはごめんね」


「あの時さ、お前を付け狙っている奴らにも攻撃がいったんだよな。それでみんな撃退しちゃったんだよ」


「えー、そんなお茶目なことあったの?」


「ていうか、半分は狙ってたんだけど。だって、本当に煩わしかったから、火魔法で消しちゃおうかなって」


 母親と言いながら、少し怖かったりする。


 というか、ブサメンの俺にブサイクという言葉は

 ちょっとキツイぜ。

 魔物と母さん狙いの馬鹿者どもには、少し同情する。



「4階来たぞ」


「ドキドキ」


「マノン、どうだ」


「少し臭いわ」


「これがゴブリンの臭いだ。奴ら、醜いだけじゃなくて、臭いからな」


「最悪な奴らね」


「そうよ、マノンちゃん。抹消すべき敵なのよ」


「ああ、ムカムカしてきたから、遠慮なく攻撃できそう」


「よし、じゃあオレが先頭にいくわ。探索距離が数百mあるからな。レーダー代わりだが、攻撃はお前らがするんだぞ」


「マノン、ゴブリンは動作は素早くないが、若干耐久力がある。だから、一撃でやっつけようと思うな。連撃で倒すつもりで」


「了解!」


「よし、前方50mほどの地点にゴブリン単体」


「じゃあ、気配を遮断してゆっくり近づこうか」


「了解!てか、私の探知にもひっかかってきた」


「マノンの索敵距離は通常よりも高性能だな」


「30m程度に近づいたぞ。マノン、見えるか?」


「ああ、あのボーと佇んでるやつね。オッケー、攻撃準備」


「マノンのタイミングでやれよ」


「ウッシャ、ホーリーアロー連射3撃!」


 角兎との攻防でマノンの命中率が格段に向上している。

 3撃ともゴブリンに命中し、ゴブリンは霧散した。


「でかした、マノン。ホーリーアロー、なかなかの威力だな。一撃でも通用しそうだが、しばらくは連撃を忘れずに」


「もっとも、魔法を放ったらすぐに次の手を用意するのも大切よね」


「おー」



「次は右に折れた先に3匹。さてどうする?」


「最悪の事態は敵に囲まれること。まずは先制攻撃で2匹撃破。すぐに残りの1匹が突っ込んでくるから慌てず対処」


「うむ。4匹以上いたら?」


「二人パーティだと撤退も視野に。攻撃する必要があれば、各個撃破。弱いヘイトで1匹ずつ群れから剥がして攻撃したい」


「失敗した時のことを考えて、撤退路は常に頭においておけよ」


「あと、絶えずバック攻撃に注意ね」


「了解!撤退判断は俺がするぞ。いいな、マノン」


「おー!」


 などと、俺たちは父ちゃん中心に講義を受けつつ、

 討伐を続けていく。



 教科書のような攻撃を繰り返しつつ、

 ゴブリン程度は一人でも対処できる目処が立っていた。


 ダンジョンレベルが俺6、マノンが5になった頃、


「じゃあ5階を覗いてみるか?気持ちに余裕があるんなら」


「俺は全然大丈夫」


「私も。ていうか、この階、臭くて嫌」


「マノンちゃん、残念だけど5階はもっと臭いのよ」


「えー」


「まあ、5階はオレとクリスでやってみるわ。新しい武具の具合をみたいからな」



 俺たちは5階に到達した。

 やはり、洞窟のままだ。

 洞窟はこの階で終わりだというけど、今までで一番臭い。

 食べ物が腐ったようなすえた臭いだ。


「うげー」


「ほんと、この階は何年経っても慣れないわ。6階になると森林になるから、あんまり臭いはなくなるんだけど」


「じゃあ、6階に行こうよー」


「まあまあ。5階はね、ボスがいるのよ。やっつけないと6階にあがれないわ」


「強いの?」


「マノンちゃんはもう少し修行する必要があるわね」


「うう」


「まあ、そろそろ夕暮れ時だ。さっと倒して帰ろう」


「5階にはね、転移魔法陣があるから、あっという間に地上に戻れるのよ」


 俺たちには強敵であろうホブゴブリンなどといった、

 ゴブリンの上位種も父ちゃん・母ちゃんの敵ではなく、

 出会った瞬間にどんどんと霧散していった。


 一度、俺たちだけで闘ってみたが、

 確かに現状ではいい勝負になる。


 もう少しレベルを上げて、余裕を持って討伐したい。

 ダンジョンはゲームっぽいが、

 命のやりとりはゲームじゃない。


 やられたら、それでおしまいだ。

 復活しない。

 だから、極力安全マージンを取る必要がある。

 

 しかし、安全策だけでもいけない。

 レベルの低い敵をやっつけても、経験値にならないのだ。


 ほんの少し弱い敵をやっつけつつ、

 ダンジョンを攻略していく。

 その見極めが肝心だ。



 それにしてもだ。

 今世の俺の目標は学園に合格することだった。

 それ以上の目的はもっていなかった。

 しかも、前世の俺の記憶が突然蘇ったわけで。


 いじめっ子を退治してしまうと、気が抜けてしまった。

 早々に五月病なんだろうか。


 学園に関しては戸惑っている部分が多いのだが、

 こうして家族で美味しい飯を食べたりダンジョン行ったりは、

 実に楽しい。


 学園というか、前世の俺の部分がこの世界に色々と馴染んでいない。

 家族との交流がちょうどいいバッファになっている。


 

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